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不妊治療と先天性インプリンティング遺伝子異常(3)

続き。
中学生の頃を思い出して、メンデルの法則を復習してみましょう。
例は血液型。
A型のお父さんとB型のお母さんからAB型の子供が生まれた場合を考えます。
ABOの血液型を決定する遺伝子は9番染色体上にあります。

ご存じの通り、染色体は2本ずつ1組ありますね。
1本は父親から、もう一本は母親からもらっています。
このAB型の子供のの9番染色体上のABO血液型を決定する遺伝子はこうなっている筈です。



青は父親からもらった9番染色体上に乗る遺伝子で、A型になる遺伝子
赤は母親からもらった9番染色体上に乗る遺伝子で、B型になる遺伝子
なので、子供はAB型になるのですね。

こんな感じで2本とも「活性化」しているわけです。

所が、一部、
「お父さんからもらった遺伝子だけ活性化しているけど、お母さんからもらった遺伝子は活性化していない(=不活化)」
とか、逆に
「お母さんからもらった遺伝子だけ活性化しているけど、お父さんからもらった遺伝子は活性化していない」
とかいう遺伝子がいくつかあることがわかってきたんですね。
こういう変わった発現をする遺伝子をまとめて「インプリント遺伝子」と呼びます。
で、こういった遺伝子の存在で、昨日の「前核移植」の実験の説明がつけられています。
図にしてみました。

遺伝子αは、「お父さんからもらった遺伝子:活性化 お母さんからもらった遺伝子:不活化」
遺伝子βは、「お母さんからもらった遺伝子:活性化 お父さんからもらった遺伝子:不活化」

としました。
図の四角は「遺伝子が読まれないように邪魔をしている機構」です。
(これがあとでキーになってきます)

図の左が正常、つまり父親から1本、母親から1本染色体をもらったパターンです。
遺伝子αもβも、ちょうどいい量活性化できますね。



所が、昨日の話の前核移植で、2つの前核とも精子由来になったとするとどうなるでしょうか?
それが右上の状態ですね。
遺伝子αは倍活性化されている反面、遺伝子βは全く発現しないことになってしまいます。

同様に2つの前核とも卵子由来になってしまったらどうでしょうか?
右下の状態ですね。
逆に、遺伝子βが倍活性化している反面、αは全く発現しない状態になってしまうわけです。

これが、昨日お話しした前核移植のからくりで、「精子のみの2前核」あるいは「卵子のみの2前核」では赤ちゃんにならないメカニズムなわけです。

こうした「インプリント遺伝子」、現在80ちょっと知られているそうです。
そのうち、「精子由来のものが発現していて、卵子由来のものが不活化しているもの」、つまり、父親の遺伝子が活性化しているもの(ここの例でいうと、遺伝子αのパターン)方が圧倒的に多数です。
逆のパターン、つまり「卵子由来のものが発現していて、精子由来のものが不活化しているもの」、つまり母親の遺伝子が活性化しているもの(ここでいうと遺伝子βのパターン)は今のところ4つなのだそうです。

また後日説明しますが、この数の差も重要です。
実は、遺伝子を不活化する(ここでいうと、図の四角を付けるという作業)が大変なのです。
この作業が多いのは、すなわち卵子ということになりますよね。
なので、卵子の方が何倍も遺伝子を不活化する仕事量が多いわけです。

「インプリント遺伝子」何となくおわかりいただけましたでしょうか?
何か科学チックで難しすぎますかね?
では、引き続き、エピジェネティックの話を続けます。お待ちください。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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