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不妊治療と先天性インプリンティング遺伝子異常(4)

ということで復習すると、両親からもらった遺伝子のうち、特定の親由来のもののみが活性化し、他方の親由来のものは不活化されている遺伝子をまとめてインプリント遺伝子と呼ぶのでした。

では、ここで、父親由来の遺伝子(図の青)が活性化して、母親由来の遺伝子(図の赤)は不活化しているインプリント遺伝子αを想定してみましょう。



こんな感じですね。
父親由来の青は「読んで!」、母親由来の赤は「読まないで!」となっているわけです。
でも、母親由来の遺伝子は無くなってしまうわけではないんですね。
遺伝子としては「ある」、だけど、「読まないで!」となっている。
この「私は読まないで」というのを、生体はどのようにやっているかというと、主に「メチル化」という方法を使っているとされています。



高校の化学で「メチル基」というのを習いましたよね。-CH3ですね。
これを遺伝子にくっ付けると、「ここから先は読むな!」という印になるそうなのです。

「遺伝子(ゲノム)」を変化させるのではなく、遺伝子の「外」にメチル基という印をつけて遺伝子を制御する方法なので「エピ(外)ゲノム(遺伝子)」、形容詞にするとエピジェネティック(epi-genetic)と呼ばれています。

【インプリント遺伝子のリプログラミング】
みなさ~~~ん!ついてこれてますか~~~?(笑)
さて、バックグラウンドの最後行きます!(まだバックグラウンド!!)

えっと、今度は仮に僕が精子を作るシーンを想定します。
その際、インプリント遺伝子はどう動くのか?ということです。

例えば、今話に出てきている「インプリント遺伝子α」をこのまま精子にしてしまうとどうなるか?



これ、まずい事態なのおわかりいただけます?
そう、精子を作るシーンでは、今度は僕が父親にならなければならないわけです。
なので、インプリント遺伝子αは活性化してから子供に渡さなければならないわけですね。

よって、僕の母親が僕にメチル基を付けて渡してくれた赤い遺伝子αを、僕が子供に渡すときは、メチル基を外してから渡さないといけないわけです!
つまりこう。



これで、僕は父親として活性化させるべきインプリント遺伝子をきちんと活性化して子供に渡すことが出来ました。

この逆、即ち、父親として不活化させるべきインプリント遺伝子をきちんと不活化して渡すのは、さらにひと手間かかります。
母方活性父方不活性のインプリント遺伝子βは、このようにして子供に渡すことになります。



そうなんです。不活化させるべきインプリント遺伝子はいきなりメチル化するのではなく、一回メチル基を外して、再度付け直すそうなんですね。

女性側の卵子でももちろん同じことが行われています。

この、インプリント遺伝子を、親として、正確に子供に渡す仕事は「リプログラミング(re-proglaming)」と呼ばれています。

大丈夫でしょうか?大混乱してきましたか?
そんなわけで、親からもらったインプリント遺伝子のスイッチをきちんとon/offにして子供に渡すのには、こんな一苦労があるのです。

しかも、昨日お話しした通り、卵子の方が不活化するべきインプリント遺伝子が圧倒的に多いので、卵子のお仕事は大変です。
しかも、精子のリプログラミングは射出される時にはもうすっかり終わっていると考えられていますが、卵子の方はギリギリまで時間をかけてこのお仕事を行っているとされています。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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