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排卵誘発としてのレトロゾール(フェマーラ)のエビデンス(5)

続き。
今日はこの論文の最後まで行く予定です。

【Luteal Phase Aromatase Inhibitors:黄体期での使用】
  • レトロゾールを卵子提供プログラムの刺激周期の黄体期に使用した2つの報告がある。
  • ともにエストラジオール低下に成功した。

【Letrozole for fertility preservation in cancer patients:担癌患者の妊孕能温存】
  • レトロゾールは担癌患者が抗癌剤治療を受ける前に、受精卵なり卵子を凍結保存する際の排卵誘発に用いられている。
  • レトロゾールを使用する利点は、エストロゲン暴露を低下させ、トリガーがGnRHアナログで可能である点にある。
  • まとめると、担癌患者の化学療法前の妊孕能温存のためのレトロゾールの使用に関するいくつかのエビデンスはあるが、今のところ弱い。

【Letrozole and congenital anomary risk:レトロゾールと先天奇形】
  • レトロゾールの排卵誘発剤としての使用に待ったがかかったのは、2005年のアメリカ生殖医学会での口演発表により、心奇形、四肢奇形が増えるとの報告がなされたためである。
  • この発表は、レトロゾール使用群とコントロール群で年齢がマッチしていなかった(レトロゾール使用群の方が年齢が高い)という重大な欠点があり、この発表は結局査読のある雑誌で論文として発表はなされなかった。
  • しかしながら、この口演を受けて、フェマーラの製薬会社であるノバルティス社は、フェマーラを閉経前女性に使用することを「禁忌」とした。
  • これにより、世界中で、フェマーラが排卵誘発剤として使用中止となった。
  • Togas Tulandi先生たちは、カナダでの多施設研究で、クロミフェンなりレトロゾールで生まれた911人の新生児を検討した。
  • 514人がレトロゾールで、397人がクロミフェンで生まれている。
  • 全先天奇形+染色体異常はレトロゾール群で2.4%(14/514)、クロミフェン群で4.8%(19/397)だった。
  • 大きな先天奇形率はレトロゾール群1.2% v.s. クロミフェン群3%であった。
  • 心奇形はレトロゾール群0.2% v.s. クロミフェン群1.8%で、クロミフェン群の方が有意に多かった。
  • この結果から、彼らはレトロゾールで生まれた子供の先天異常率は、クロミフェンの場合と差はないと結論している。
  • さらには、心奇形は逆に少ないのではないか?とすら結論している。
  • 今のところ、最終結論には至っていないが、現存するデーターでは、クロミフェンと比較し、遜色なかろうと考えられている。
  • 安全性については、確かに今後、より詳細に検討されねばならないが、レトロゾールはその検討を正式に受けるに値する。


ということでした。
最初の「黄体期の使用」というのは、つまりOHSS予防ということですね。
OHSSハイリスクでETキャンセルならエストロゲン下げられるよ、という意味ですね。

次の「癌患者」の話では、よく言われるのが「乳癌」です。
・「乳癌」の化学療法前に卵子凍結なり胚凍結をしておきましょう。
・でも、排卵誘発すると、エストロゲン上昇し、エストロゲン依存性腫瘍である乳癌に悪影響になるんじゃないの?
じゃあ、エストロゲンが上がらない「アロマターゼ阻害剤」で誘発しましょうよ
という話なわけです。
非常に理にかなった考え方ですが、流石にまだその考えが科学的にも正しいのかの検証ができていない(追いついていない)というわけです。
でも、多分、もうこれは普通に行われていると思います。

で、最後の「奇形」の話です。
(1)で触れました通り、2005年のアメリカ生殖医学会(ASRM)の発表により、大騒ぎになりました。
この発表を受けて、製薬会社からは「禁忌」、国としても「禁忌」とするところもあり、(ちょっと正確ではないのですが、多分)2008年位の日本の生殖医学会の会場でも結構な議論になってました。

で、現在のこの2005年のASRMの発表の評価は、この論文にも書いてある通りで、かなり眉唾という論評をよく目にします。が、じゃあ、安全性が宣言されているレベルか?というとまだそこまでは行っていないと思います。

ちなみに、ノバルティス社の添付文書上は、今も「禁忌」です。えっと、この、1ページ目の左下の方の2の、特に(2)の当たりですかね。
そんなわけで現在でもバリバリの「off-label(適応外使用)」なので、皆さん同意書書かされるわけです。

でも、この論文でも少し触れられていますが、実は「クロミフェンの方がよっぽど怪しい」という意見も結構根強いです。
まあ、じゃあ、この辺はまた別の機会に触れることにしましょう。

そんなわけで、とりあえずこの論文の解読はおしまい。
もうあと何回かレトロゾールの論文紹介していきたいと思います。
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Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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