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ヘリコバクター・ピロリが不妊原因になりうるとする説がある(2)

続きです。
今日は、女性側の感染が影響するのでは?という論文のご紹介です。
こんな論文があります。
内容はこんな感じです。
  • まず、67人の原因不明不妊女性の血液中と頸管粘液中の抗ピロリ菌抗体価を調べたところ、血液中の抗体価が高ければ頸管粘液中の抗体価も高くなることが判明した。
  • 次いで、抗ピロリ菌抗体陽性女性15人と陰性女性15人に各々頸管粘液を提供してもらった。
  • 各々の頸管粘液に対しドナー精子を用い、「精管粘液-精子適合試験」を行ったところ、抗ピロリ菌抗体陰性の頸管粘液では精子侵入障害が認められなかったが、抗ピロリ菌抗体陽性の頸管粘液では、精子侵入障害を認めた。
  • この結果、抗ピロリ菌抗体は頸管粘液中にも分泌されており、抗ピロリ菌抗体陽性頸管粘液では精子侵入障害となることが示唆された。
と記されています。

ちょっと話が見えにくいかもしれませんね。解説を加えておきます。
この論文で用いられている頸管粘液検査は、別名「Miller-Kurzrokテスト」と呼ばれています。
理論がややこしいのですが、よくできた検査です。
  • まず、検査したい女性の、排卵期の頸管粘液を拝借します。
  • で、この頸管粘液をスライドガラス2枚にたらします。
  • で、それに接するように精液をたらします。一枚にはご主人さんの精液、もう一枚には妊孕能が確認されたコントロール男性の精液です。
  • これにカバーガラスをかけて観察します。
  • 何もなければ、精子はどんどん頸管粘液内に入っていく(侵入していく)わけです。
  • で、ご主人さんの精子とコントロール精子の入り方のパターンを見るわけですね。
  • 両方ともどんどん入っていったら、「問題なし」。
  • ドナー精子はどんどん入っていくのに、ご主人さんの精子は入っていかなければご主人さんの精子の因子(通常、男性側の免疫因子を考えるわけです)。
  • 両方の精子とも入っていけなければ、頸管粘液の因子(通常、女性側の免疫因子を考えます)。

ちなみにこれ、ちゃんとWHOのガイドラインに載っている検査法です。

で、この論文の結果に戻ると、抗ピロリ菌抗体陽性女性の頸管粘液はまるで抗精子抗体陽性のように振る舞った、ということですね。


今では常識となったピロリ菌ですが、僕が学生の頃は、「胃炎」は「攻撃因子 v.s. 防御因子のシーソーが傾いた状態」なんて習いました。
それもそんなに昔の話じゃないですよ(笑)。
それに(僕は全然専門ではないので良く知りませんが、)今では、ITPという血液の病気(血小板が減ってしまう)の治療にも「ヘリコバクター・ピロリの除菌」が行われるそうです。
つまり、ピロリ菌の影響は、「胃・十二指腸」にとどまらないということです。

一方「ピロリ菌と不妊」は、まだまだ全然マイナーな考え方でしょうが、なかなか面白い発想です。
「ピロリ菌と精子が似てる」
という発想から来たこの理論、今後の展開が楽しみです。

そんなわけで、真実かどうかは将来の判定にゆだねられているわけですが、こんな話も知っておいて損はないのかも知れないと思い紹介させていただきました。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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