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皆様が戻したその卵、染色体が正常である確率は何%か?(1)

体外受精の治療を受けておられる方はご存じの通り、移植する胚は、その「形」を見て「良い」とされるものから順に戻すのが普通だと思います。
初期胚(通常3日目が多いですかね)だと、細胞の数(割球と言います)、その大きさの違い、フラグメントの程度など(Veeck分類)、胚盤胞だと5AAとか3BCとか(Gardner分類)が広く用いられていますよね。
で、もちろん皆さん、この分類に一喜一憂するわけです。
「5AA」なんて戻すと、もう最高の気分、でもこれで結果が出ないとガッカリ。
果ては「着床障害かも?」なんて感じでしょうか?

そんな感じで皆様に重用されている「胚の形態評価」ですが、その実際の「実力」はどの程度なのでしょうか?
例えば、40歳の女性から「5AA」の胚盤胞が出来たとして、この胚の染色体が正常である確率はどの位だと思いますか?
42歳の方が凍結胚盤胞3個出来たとして、この中に1つでも染色体が正常である胚が含まれる確率は何%だと思いますか?

今日より当分の間、この辺の内容を詰めていきたいと思います。
この辺の「からくり」がわかると、皆さんがいかにこの「胚の形態評価」に振り回されているかが理解でき、また、精神衛生上もよろしいかと思いますし、何より、ご自身の治療戦略を立てる上でのカギとなるポイントが沢山眠っています。

今日はそのバックグラウンド。
で、どういうことかというと、日本では(倫理的問題があり)行われていませんが、世界的には体外受精により出来た胚を、先に染色体を調べて、正常であることを確認してから胚移植をする(逆にいうと染色体異常胚を移植しない)、という方法が広く用いられています。
これをPGS(着床前受精卵遺伝子スクリーニング:Preimplantation Genetic Screening)と言います。

小難しい話なのですが、ちょっと前まではこれをFISHという方法を使って行っていましたが、この方法は検査の感度が今一でした。
で、最近行われるようになったのがarray CGHという方法で、これにより検査感度が劇的に改善し、欧米ではこの方法を用いたPGSが盛んに行われているようです。(今ではこの方法も次第に古くなりつつあり、次世代の方法も開発されているようです。)
で、世界的には、
「ARTの次の突破口はPGS-ETなのでは?」
とまで言われるようになっております。

世界の現状はそんな感じなので、それは即ち、普通の体外受精のスケジュールでの、各々の胚の染色体がわかるようになってきているというわけです。
で、従来の「見てくれの評価」と、実際の染色体の状況が関連付けられるようになってきていて、このデーターが直近続々と報告されてきている、というわけです。

この内容が実に衝撃的で、僕も毎回驚かされます。

先日少し触れましたが、日本で近未来PGSが行われるようになるか、というと、不透明な状況です。
でも、この海外からの報告の結果は、情報としては宝の山で、非常に見方を変えさせられます。
皆さんも、現実を知ることで、治療経過を冷静に見つめられたり、あるいは治療方針を立てていくのに非常に有効になる可能性があると思います。

そんなわけで、この後何回か時間を使い、現在行われている体外受精の様々なステップが、実際に染色体が「見える」ようになって、どんな感じなのか?(だったのか?)を見ていきたいと思います。

紹介していく論文はの2本を予定しています。

では、内容は明日以降、時間を見ながら書いていきますので、お付き合いください。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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