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女性性機能障害を考察してみる(6)

オーガズム障害の定義は
正常な『興奮期(excitement phase)』に引き続いて起こるべきオーガズム期が遅れるか起きない状態が繰り返されること」
となります。

『興奮期(excitement phase)』について解説しておきます。
性的反応(性交に限らず、オナニーでも)を4つのフェーズに分類する方式で、
excitement → plateau → orgasm → resolution
の各フェーズがあるとするものです。
確かにうまく分類されていますよね。

オーガズムについて触れておきます。
その手の漫画だのビデオだのでは、出演する女性は必ず最後にオーガズムに達するわけですが、現実とは多少離れているようです。
ある調査によると、そのように性交渉(腟内刺激)のみでオーガズムに達することのできる女性は2~3割だそうで、7割方の女性はクリトリスへの刺激がないとオーガズムに達することはできないそうです。
なので、
「クリトリスではイケるけど、腟内挿入ではイケない」
というパターンは
異常ではないとされています。正常

で、「正常な『興奮期(excitement phase)』に引き続いて起こるべき・・・」なわけであって、厳密には「正常な『興奮期』」が無い場合も定義から外れるわけです。

で、オーガズム障害はさらに「原発性(primary)」「続発性(secondary)」に分類します。

【原発性オーガズム障害】
生まれてこの方オーガズムに達したことが無い場合です。
通常、性欲は普通にあります。
原因としてはよくわからないことが多いそうですが、トラウマ/虐待などが関与していることもあるそうです。
何らかのトラウマ/虐待経験が関与している場合はまずカウンセリングが行われることが多いようです(効果があるかどうかは別)。
流れとしては、きちんとした性教育をして、正しいオナニーの方法を学び、実践していただくことになるわけです。
で、正しいオナニーをしても、それでもイケない、という場合を、特に「原因不明原発性オーガズム障害(unexplained primary orgasmic disorder)」と呼びます。
この場合、エビデンスのある治療法は今日現在無いと思います。

ある論文によると、原因不明原発性オーガズム障害は次のように説明されています。(fertil Steril 100(4): 905-915; 2013)
Unexplained cases may have congenital origins which some consider to be analogues to anosmia or color blindness.
「anosmia」は無嗅覚症、「color blindness」は色覚異常で、congenitalは「先天性」という意味です。つまり、先天性にオーガズムという感覚を感じない状態ということを示唆しています。

【続発性オーガズム障害】
一方、続発性、すなわち、以前はイケていたのに、最近イケなくなったパターンは、前述のごとく、
「HSDD(性欲低下)」→「Female Orgasmic disorder(オーガズム障害)」→「HSDD(性欲低下)」→・・・・・・
の悪循環のループに入っている、と考えます。
なので基本は、Sexual Arousal Disorder(性的興奮障害)への対応と同様、
HSDD(性欲低下)の改善+オーガズム障害への対応
2本立てになります。
HSDD(性欲低下)への対応については、Sexual Arousal Disorder(性的興奮障害)の所の話と同じです。

オーガズム障害への直接対応は、マスターベーションの実践をはじめとした行動療法になるそうです。
Sexual Arousal Disorder(性的興奮障害)の所でご紹介した「Eros」も有効とのことです。

また、センセート・フォーカス(Sensate Focus)療法というのがあるので、ご紹介しておきます。
5段階の公式があり(心理療法系はこの「公式」というのをよく使いますね)。

1.お互いの性器以外の身体を交互に愛撫し合い、相手には配慮せず、利己的に全神経を与えられた感覚や官能に集中し、タッチングを受ける事を楽しむ。触られた方の好みを相手に伝える。
2.性器へのタッチングを加えたもの。しかしオーガズムには至らない程度。
3.女性上位で何度か短時間挿入する。自己刺激またはパートナーからの手や口による刺激でオーガズムに至る。
4.女性上位でオーガズムに至るまでペニスを腟内にとどめる 。
5.男性上位でオーガズムに至るまでペニスを腟内にとどめる。

といった順で次第にステップアップしていく方法です。


2011年のアメリカ産婦人科学会誌に載っている論文の一段落に、Q&Aが載っているのでコピーペーストでご紹介しておきたいと思います。
Obstet Gynecol 117(4): 996-1007; 2011.

What is the evidence for safety and efficacy of devices to treat arousal disorders?

One battery-powered device intended for clitoral therapyhas received approval from the U.S. Food and Drug Administration (FDA). This device is applied directly over the clitoris to create a vacuum to increase blood flow and engorgement (74). Several small pilot studies have evaluated its efficacy in improving orgasm, vaginal lubrication, genital sensation, and sexual satisfaction (75). This device may be best suited for women with arousal and orgasm difficulties, and no adverse outcomes from use of the device have been noted.

要するに、「性的興奮障害に対して安全面/効果面でエビデンスのある治療法は何か?」という問いに対して、前出の「Eros」が恐らく「best suited」だと公に書かれていますね。
「arousal and orgasm difficulties」なので、オーガズム障害も、これが最適だろう、とのことです。

なんか大人の事情(「性」の方じゃなくって「お金」の方ね。)を感じなくもない書き方ですが、今日の医学論文的にはそんな判断になるようです。
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Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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