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プロラクチン道、始めます!(4)

さて、論文抄読の続き

【マクロプロラクチン血症の頻度と原因】
  • 前述のごとく、単量体のプロラクチンは23kDaで、全プロラクチンの多くを占めるが、血中プロラクチンには50kDaのビッグ・プロラクチン、100kDaのビッグ・ビッグ・プロラクチンも含まれる。
  • 高プロラクチン血症だが、そのプロラクチンの多くが、生理活性の低いビッグ・ビッグ・プロラクチンである場合をマクロプロラクチン血症と呼んでいる。
  • 高プロラクチン血症だが、症状が無く、下垂体腫瘍も無い場合にマクロプロラクチン血症が疑われる。
  • マクロプロラクチン血症は、遺伝的な要素があるようだ。
  • マクロプロラクチン血症は、無症候性高プロラクチン血症の女性の31%に見られる。
  • 抗プロラクチン抗体(自己抗体)を有する女性に、プロラクチン-抗プロラクチン抗体が形成され、プロラクチンの代謝が遅くなり、高プロラクチン血症が見られるようになる。
    • といった感じで書かれております。

      一般の方にはきっとすっごく難しいですね。訳わからないのが普通だと思います。
      この内容を噛み砕いて書くと、つまりは、採血で計られた血中プロラクチン濃度は、実際のプロラクチンのホルモン活性を計っているわけではない!ということです。
      皆さんがホルモン採血してもらって出てきた「プロラクチン濃度」というのは、プロラクチンという蛋白質が、いろんな形態をとっているのですが、それは無視している、という訳です。

      ちなみに何の味付けもされていないプロラクチン(仮にfreeプロラクチンと名付けます)の生理学的活性を100とすると、糖化プロラクチン(プロラクチンに糖がくっついたもの)の活性は25~35だそうです。で、ここで言葉の出てきた「マクロプロラクチン」という形態になると、活性はほぼ0とされています。

      で、要するに、皆さんが採血された「プロラクチン」というのは

      「血中プロラクチン濃度」=freeプロラクチン+糖化プロラクチン+マクロプロラクチン+・・・

      という風になっているわけです。
      誤解を恐れずに言うと、生理学的活性は無視、ただ単に「蛋白質」としての濃度を計っているわけですね。
      これが、僕がホームページ上のあっちこっちで「血中プロラクチン濃度」が高いというだけで、即治療を始めてしまうのはどうなのよ?と言っている理由です。

      難しかったですかね?一般の方は、ここまで理解してもらえれば十分だと思います。



      ★★★以下、オタクな人専用!★★★
      最初にお断りしました通り、この論文は2005年のもので、少し古いです。
      今の僕が承知している内容は以下なのですが、間違い等ございましたら御指摘下さい。

      (1)「マクロプロラクチン」という言葉はは、ある特定の化学的状態にあるプロラクチンを指示しているものでは無くて、本当に言葉のまま、「分子量の大きなプロラクチン」の総称ですね。
      多分、現在の定義では、「分子量150 kDa以上」ということになろうかと思います。
      ある報告によると、「マクロプロラクチン」の87%がPRL-IgG複合体、67%がPRL-自己免疫性抗PRL抗体複合体とのことですので、逆に言うと、13%は「macroprolactin other than PRL-IgG complex」ということになりますね。
      (2)「抗PRL自己抗体」と聞くと、何となく、「他の膠原病との合併は?」と考えたくなりますが、どうやら、そういうものではないようです。
      では、なぜPRLに対する自己抗体ができてしまうのかというと、これがよくわかっていないらしい。可能性として挙げられているのが「Posttranslational modifications such as phosphorylation of PRL」とのこと。つまりは、PRL蛋白に対するリン酸化等の化学的修飾の個人差によって、PRLの立体構造に個人差があって、これが抗原性の差を生むのだろうということ。これを今回御紹介している論文では「遺伝的要因」と表現しているわけです。
      (3)で、抗体結合部位にPRL受容体結合部位が含まれているのだろう、だから生理学的活性が出ないのだろうと言う訳です。
      ちなみに、IgG結合マクロプロラクチンでも、IgGから解離させるとfree PRLと同等の生物活性を示すそうです。
      (4)で、大分子量によるクリアランス低下のため血中に蓄積される。なので、採血上はこれも検知してしまうため、「高プロラクチン血症」となってしまう。

      ということですね。
      つまり、本来は「free PRL」(というか、「PRL活性」)で物を論じなければいけないのに、現状は「total PRL」で物を論じているシーンが多いというわけです。
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Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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