Entries

子宮頸がん検診リコメンデーション(5)

で、子宮頸がんへの進展様式は

正常→軽度異形成(CIN1)→中等度異形成(CIN2)→高度異形成(CIN3)→上皮内癌(これもCIN3)→微小浸潤癌→浸潤癌

といった感じなわけです。
こうすると、各々が連続病態に見えて、一般の方々が理解するには非常にわかりやすいわけです。

でも、僕が実際に患者さんを拝見していく上では、あるところに「目に見えない壁」を設けています。
これは非常に高い壁です。
さて、どこでしょう?

正解は、「軽度異形成(CIN1)→中等度異形成(CIN2)」の間です。
(下の方に図を作っておきました。)
なぜここに「壁」を作っているのか?を解説してみたいと思います。

前回お話したごとく、
「ハイリスクHPV」は「感染しているかどうか」で勝負するわけではなくて、「感染が一過性感染なのか?持続性感染なのか?」がポイント!
なのですね。
最終的に癌化まで行ってしまう方は「持続感染」に陥ってしまった方なわけです。
「ハイリスクHPV」に感染した方の中で、その感染が「持続感染」になってしまう方は約8%でしたね。
このうち、1割の方が癌化するわけです。
なので、「いかに一過性感染を拾わずに、持続感染を確実に捕まえるか?」が大事なわけです。
逆にいうと、一過性感染の方に過度な不安を与える必要もないわけです。

つまり、目の前にいる「ハイリスクHPV陽性」の方が「一過性感染」なのか「持続感染」なのかを考えながら診療に当たらなければいけないわけです。

で、確実ではないのですが、「一過性感染」or「持続感染」の大体の判定ラインが「軽度異形成(CIN1)→中等度異形成(CIN2)」の間に引けるわけです。
つまり、

「軽度異形成」の多くは(もちろん全部ではない)一過性感染であり、その多くは消失する可能性が高い。
(ちょっと難しい話になってしまいますが、HPV存在様式がepisomalである。)
「中等度異形成(以上)」は、HPVの持続感染であり、腫瘍性病変としての性格を持つものが含まれる。
(HPVはヒト遺伝子にintegrateされていることが多い。)

と考えられるわけで、「軽度異形成(CIN1)→中等度異形成(CIN2)」の間の目に見えない壁は、「一過性感染」と「持続感染」の壁とも考えられなくもなく、非常に重要だと思っています。

うまく解説できてますかね?わかりにくいですよね。

で、この状態、さっきっから「軽度異形成(CIN1)」といった感じで書いて来ました。
で、実は、全く同じ状態でありながら、呼び方が3通りあります。

(1)WHO分類(1994)
「軽度異形成 - 中等度異形成 - 高度異形成 - 上皮内癌」
ですね。一つ前までの子宮頸がん取扱い規約はこれで記されていました。

(2)CIN分類
「CIN1 - CIN2 - CIN3」
で分けるものです。
CIN1が軽度異形成、CIN2が中等度異形成に相当します。
CIN3は高度異形成+上皮内癌です。

(3)ベセスダ・システム
この方式では、「子宮頸部扁平上皮の非浸潤性病変(squamous cell intraepithelial lesion;SIL)」を大きく2つに分類しています。
Low grade SIL(LSIL):HPV感染+軽度異形成(CIN1)
High grade SIL(HSIL):中等度異形成+高度異形成+上皮内癌(CIN2+CIN3)
です。
で、LSILは経過観察、HSILは(浸潤癌への移行の可能性を考慮し)治療の対象とする、という考えもあります(ただし、日本ではCIN2を治療対象とするかどうかについては異論があります)

ややこしいですね。
まとめると、こんな感じになります。
これが僕が診療に当たっている際に頭の中に描いている図でもあります。

正常
↓↑
軽度異形成(CIN1)  ↑LSIL (一過性感染濃厚?領域)
↓↑------------------------------------------------
中等度異形成(CIN2) ↓HSIL (持続感染濃厚?領域)要注意!!
↓↑
高度異形成(CIN3)

上皮内癌(これもCIN3)
↓------------------------------------------------
・・・・


で、この「一過性感染?」と「持続感染?」の壁が、ちょうどベセスダ・システムのLSILとHSILの壁でもあるわけです。

同じ病態に3つもの呼び方(分類方法)が並行していてややこしいのですが、こんな感じになっています。
ちなみに現行の「子宮頸がん取扱い規約(第3版)」は、基本的にCIN分類ですが、「異形成」分類+「ベセスダ」分類が併記されています。
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://dokumotti.blog.fc2.com/tb.php/182-17bb7fec

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

カウンター