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子宮頸がん検診リコメンデーション(10)

で、やっとこのページの本題にたどり着きました。
「円錐切除術によるその後の妊孕性の問題について」
です。

【円錐切除術後の妊孕性の問題】
円錐切除術は、CINを切除するわけですが、当然子宮頸部健常部分も少なからず切除されるわけです。
で、「術後の妊孕性」という意味では、頸管因子が懸念されるわけです。

(1)まずは手術そのものに併発する可能性として「子宮頸管狭窄→子宮瘤血腫」があります。
円錐切除後の子宮口が狭くなったり、場合によってはふさがったりして、月経血が外に出られなくなって子宮内に溜まります。
腫瘍の状態によっては、「大き目(深目)に円錐切除をする必要がある」事があるのですが、切除した円錐の「高さ」に比例して併発する確率が高くなるそうです。
また、分娩後、無月経期の手術でも起きやすいそうです。

(2)そういった「症状」を引き起こさない場合には、「円錐切除後」という状態は不妊と関連するのでしょうか?
要するに、無症状の円錐切除術後、という方の場合です。
子宮頸部は、「生殖」という面では、ご存じの通り、重要な「頸管粘液」を分泌する組織ですから、単純に想像するに、
  • 頸管粘液が少なくなったり、性状が変わったり(例えばpH)するんじゃないか?よって「精子侵入障害」を引き起こすのではないか?
  • 子宮頸管を手術することにより、子宮頸管炎を起こすのではないか?また、、頸管粘液の性状変化により、細菌の侵入が容易になってしまうのではないか?よって、卵管障害を引き起こす可能性があるのではないか?
という発想は誰もが思いつくわけです。

では、これらの仮説は、医学的にはどうなっているのでしょうか?
実は答えを先に言ってしまうと、実は今の所、「円錐切除が妊孕性を阻害する」という科学的根拠は無いと思います

流れ的にはこんな感じです。
まず、2006年のlancetで、です。
この論文は、基本的に、妊娠した後の状態(早産、前期破水、低出生体重など)を論じた論文ですが、その中に少しだけ妊娠率と妊娠成立までに要した時間に関する記述があります。
そこでは「有意差無し」と書かれています。

そんなわけで、
「円錐切除術がその後の妊孕性に与える影響」というのは、理論的にはいかにもありそうだが、科学的にエビデンスは出てはいない
という状況です。

そんな状況ですが、「やっぱり妊孕性低下しているんでは?」という研究報告が出てくるのも事実です。
例えばこちら。この論文は、最終的に妊娠に至った人を対象に、妊娠に至るまでに要した時間を、CINに対して治療(円錐切除~レーザー焼灼を含む)を行った群 v.s. 経過観察だった群 v.s. CINが無い群で比べています。
で、妊娠に至るまで1年以上の時間を要した割合で比較。
CINに対して治療を行った群:16%
経過観察だった群:8.6%
CINが無い群:8.4%
で、CINに対して治療を行った群では、妊娠成立までに1年以上を要した方の割合が2倍に膨れ上がる、という結果だった、ということです。

そんなわけで、円錐切除術、つまり「頸管を一部切除した」という状況が妊孕性にどの程度影響を与えているのか?については混沌としています。
理屈的には疑わしい。
でも、データーを取ると、「有意差出ない」だったり「いや、やっぱり怪しい」だったり、という感じです。

以上、「子宮頸がん検診~CINという状況について~円錐切除術について~円錐切除後の妊孕性について」をざっと見てきました。
(実は、円錐切除がその後の妊娠経過に与える影響という話もあるのですが、このページの内容としては少しずれるので、今回は触れません。)

そんなわけで、女性として生まれて来たからには、HPVに感染するのが普通です。
僕が皆さんにお勧めしたいのは、適切な時期で、適切な内容の子宮がん検診を、是非とも受けて欲しいのです。
確かにこっぱずかしいのかもしれませんが、どうでしょう?やってみたら「え?こんなもんなの?」で済みませんか?
(僕も自分ではやられたことは無いので、あまり大きなことは言えないのですが・・・・。)

残念ながら進行期子宮頸がんで子宮全摘になり、妊孕性が無くなってしまった女性の苦悩を僕も何度も経験しております。
みんなそこらへんにいる普通の女性です。

で、運悪くCINになってしまったとしても、円錐切除で済む状況なら妊孕性は奪われません
但し、「円錐切除後」という状況が、術前と全く同じ妊孕性か?と言うと、そんなわけで疑わしいのも事実です
その点も心の片隅に置いておいてください。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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