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NICEのガイドラインを時々ななめ読みしてみる(4)

今日は「精液検査」。PDFの18ページです。

1.3.1 Semen analysis
1.3.1.1
初期検査として行われる精液検査は、以下のWHOの「基準値」と比較する。
  • 精液量:1.5ml以上
  • pH:7.2以上
  • 精子濃度:1500万/ml以上
  • 総精子数:3900万以上
  • 運総精子:40%以上または高速運動精子:32%以上
  • 生存率:58%以上
  • 正常形態率:4%以上

1.3.1.2
妊孕性を改善するのに効果的な治療法が確立されていないので、抗精子抗体のスクリーニングは行うべきではない。
1.3.1.3
初回の精液検査の結果が異常だった場合、再検査を行うべきである。
1.3.1.4
再検は、理想的には、精子形成周期を考慮し3か月後以降に行われるべきである。しかしながら、無精子症や高度乏精子症の場合には、できるだけ早く再検査を行うべきである。


とのことです。
解説文の方も目を通しておきます。
  • 精液検査のWHOの基準は、妊孕性を有する男性から作られたものであり、「正常」値というよりは「基準値」である。(管理人注:原文では「"normal" value というよりは"reference" value」と書かれています。)
  • このWHOの基準値の正診率は感度(sensitivity)は89.6%だが、特異度(specificity)に乏しい
    (管理人注:要するに、真陰性率が低いということで、「"精液が正常"な人が"WHO基準の精液検査でも正常"と出る確率が低い」ということ。つまり、本当は精子に異常がない人でも、WHOの精液検査では異常値になってしまう人が多いということで、「検査で異常、即、本当に異常にはならない」ということです。)
  • この特異度の低さの問題を解決するために、繰り返しの検査を行う必要があるのだ。
  • 単回検査では、10%の男性が間違って「異常」と判定されてしまうが、繰り返し検査を行えば、間違って「異常」と判定されてしまう頻度は2%まで下がる。
  • よって、信頼性のある診断を下すためには2-3回の精液検査を行う必要がある。
  • 逆に、WHOの感度は高いので、精液検査が正常だった場合は検査を繰り返す必要はない。
  • 偽陽性(本当は正常なのに、検査で引っかかってしまう)を防ぐために、初回精液検査で異常値が出た場合のみ再検査を行うべきである。
  • 生物学的には、再検査を行うのに最適な間隔は最低でも3か月以上であるが、不安をあおる原因ともなりうるので、個別に対応する。
  • 初回検査が無精子や高度乏精子だった場合には2-4週間で再検査を行う。
  • もし、再検査で正常だったならば、もうそれ以上の検査は不要である。ただし、生殖補助医療が考慮されるなら、さらなる評価を行った上の方がよいのかもしれない。
  • WHOの基準には、標準検査として、自己免疫性抗精子抗体の検出が含まれている。
  • しかしながら、これらの検査の信頼性と、ルーチーンに検査を行うべきかどうかについては一定の見解に至っていない。
  • よって、精液検査で、抗精子抗体のスクリーニングを行うべきではない。
  • WHOの基準値の信頼性、特に精子濃度は妊娠率を予想する指標としては疑問視されている。

といった感じです。
広く行われている精液検査ですが、「真の男性妊孕能」を評価する指標としては、そんなわけでそんなにイケている検査ではないのです。ただし、今の所これ以上にいい方法が無いので、この方法でなんとかやりくりしないといけない、というレベルのもんです。

そんな状態ですが、検査結果が男性に与えるダメージは甚大です。
必要以上に不安に陥れる検査であるのは事実です。

とにかく1回の検査だけで全てを決定してしまうのは絶対にまずいです。
「あれ?前回何だったの?」
というのはしょっちゅうです。
だって、「特異度」低いんですから、当然なんです。

検査の特徴をよくよく理解してに使わないと、間違った判断に繋がりますし、他の大事な状態の見落としに繋がる危険性があります
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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