Entries

子宮内膜症勉強会(3)

今日の話題は「微症~軽症内膜症の腹腔鏡手術」についてです。
これがまた結構ややこしいので、説明が大変なのですが、頑張ってみます。

まず、「微症~軽症」と表現しましたが、これは、rASRM分類というのに基づいています。
腹腔鏡所見で点数を付けていくのですが、合計点が1-5点が「minimal(微症)」でstageⅠ、6-15点が「mild(軽症)」でstageⅡとなります。

で、こういった程度の内膜症に関して、「腹腔鏡下手術をしたほうがいいか?」というわけです。

「エビデンス」としては、このコクランがよく引用されています(これも超有名です)。
で、内容は?というと、stageⅠ~Ⅱの子宮内膜症患者に対して、「診断的腹腔鏡(覗いて洗うだけ)」 v.s. 「治療的腹腔鏡(病変を焼灼して癒着剥離する)」のどちらがいいか?という話です。
で、このコクランの結果は、オッズ比1.64 95%CI 1.05 to 2.57で有意差を持って「治療的腹腔鏡(病変を焼灼して癒着剥離する)」の方が妊娠率が高い、という結果です。

お!それじゃあ、微症でもガンガン腹腔鏡下手術やろうやろうってこと?

ちょっとまってくださいね。
内容を読んでいくと、実は、このコクランは「Two studies」、つまり2つの研究結果のみから結論を出しています。
一つはこちら。コクランに「Marcoux 1997 」と紹介されている、New England Journalの論文です。
で、もう一本はこちら。コクランでは「Gruppo Italiano」と書かれている方の論文です。
で、最初の「Marcoux 1997 」の方は、「診断的腹腔鏡」 v.s. 「治療的腹腔鏡」で、手術後36週間後までで、その後の妊娠が20週まで持続した確率は、17.7%(29/169) v.s. 30.7%(50/172)で 「治療的腹腔鏡」の勝ち、としているものの、もう一方の「Gruppo Italiano」の方は、手術後1年までで、生産率で無処置群:22.2%(10/45)、治療群:19.6%(10/51)で有意差なしと、対立しているんです!
この点は、ちゃんと「コクラン」にも書かれていて、

The results still need to be interpreted with caution as Marcoux 1997 reported a large positive effect of surgery whereas Gruppo Italiano reported a small negative effect.

ね?

で、現行の日本の「子宮内膜症取扱い規約(2010年版)」を読むと、こんな風に書いてあります。

「(コクランでは)、腹腔鏡手術の有用性が示唆されている。しかし、その差は大きいものと言えず、後期まで妊娠継続した症例に限れば手術療法による改善率は8%程度でしかなく、新たな妊娠を1人獲得するのに12人の腹腔鏡手術が必要となる。」

でも、「子宮内膜症性不妊患者の治療方針」というページでは

「一般不妊検査で子宮内膜症が疑われた場合は腹腔鏡を施行し、子宮内膜症の確定診断、臨床進行期、卵管周囲・采の癒着などの評価を行う。同時に「卵巣・卵管の癒着剥離」「腹膜病変の焼灼・蒸散」「腹腔内洗浄」を十分に行う。

と推奨されています。

ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)のガイドラインの記載はこんな感じ。

In infertile women with AFS/ASRM stage Ⅰ/Ⅱ endometriosis, clinicians should perform operative laparoscopy, rather than performing diagnostic laparoscopy only, to increase ongoing pregnancy rates.

です。
なので、ガイドライン的には、
内膜症が疑われたときには腹腔鏡で、腹腔鏡やるなら、覗くだけじゃダメで、ちゃんと「治療的」にやる。
でも、その恩恵を受けられるのは、そんなに多いわけじゃないんだけどね。

といった感じですね。
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://dokumotti.blog.fc2.com/tb.php/223-c92354e9

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

カウンター