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抗リン脂質抗体の有無は体外受精の結果に影響を及ぼさない

抗リン脂質抗体症候群の臨床症状には、習慣性流産が含まれるのは確かです。
妊娠は成立する、でも抗リン脂質抗体の存在により流産が繰り返されてしまうわけです。

で、流産よりも、もっともっと早期に抗リン脂質抗体が悪さをすると着床期血流障害、胎盤(絨毛)形成障害が起こり、これが着床障害になるんではないか?という発想がありました。
つまり、
「"着床障害"の一部は、着床期という超・超早期に、抗リン脂質抗体により"流産"が繰り返し引き起こされているのではないか?」
という発想なわけです。
(↑用語の使い方が全然正しくありません。イメージが伝わりやすいように噛み砕いて説明してあるだけです)

なので、形態良好胚を何度かETしても妊娠成立しない場合、「着床障害」を疑って、「抗リン脂質抗体」をしらべて、陽性に出ると、
「抗リン脂質抗体が着床障害の原因の可能性があります」
といった感じで、"着床障害の治療"としてアスピリン療法やヘパリン療法が行われることがありました。

この考え方は何となく説得力があるのですが、実は現在でも、「抗リン脂質抗体」と「不妊症」の因果関係はまだ明確になってはおらず。アメリカ生殖医学会は、「着床障害」という状況下での抗リン脂質抗体症候群の検査も治療も「not indicated」「not justified」と完全否定しております。
今日はこれをチェックしておきたいと思います。
リンクはこちらです。ちなみに、PDFで論文そのものも見ることが出来ます。えっと、です。
以下、内容箇条書き。

  • 抗リン脂質抗体は、習慣性流産に関連している。
  • これが、体外受精の結果に影響を及ぼすのか?については両論ある。
  • 考えられる機序としては、着床障害、胎盤形成障害、血流障害などで、免疫グロブリンの点滴や抗凝固療法が試みられることがある。
  • この論文では抗リン脂質抗体の有無とIVFの成功とに何らかの関係があるのかを検討する。
  • 検討対象は現在までで報告されている7論文、ただしこの内2つは臨床的妊娠率のみで、出産率のデーターが無い。
  • 全部で2053人のうち、703人(34%)が抗リン脂質抗体が陽性であった。
  • 抗リン脂質抗体陽性群では、臨床的妊娠率57.0%、出産率46.0%。
  • >抗リン脂質抗体陰性群では、臨床的妊娠率49.2%、出産率42.9%。
  • 検討対象となった7論文全てで抗リン脂質抗体陽性群 v.s. 陰性群で有意差が出たものは無く、7論文全体で見ると、臨床的妊娠率で、オッズ比0.99(95%CI 0.64-1.53)、5論文の出産率でオッズ比1.07(95%CI 0.66-1.75)であった。
ということで、最後の結論。

The assessment of APA is not indicated among couples undergoing IVF. Therapy is not justified on the basis of existing data.(体外受精の治療を受けているカップルに対して、抗リン脂質抗体の検査の適応は無い。治療を行うことの正当性も無い。)

これがアメリカ生殖医学会が出している勧告です。
「may」も「should」すらも付いてない、かなり強い口調での「完全否定」なわけです。

そんなわけで、「習慣性流産」ではなく、「着床障害」という理由での抗リン脂質抗体症候群のスクリーニング検査、アスピリン療法/ヘパリン療法などの抗凝固療法は、今の所アメリカ生殖医学会では完全否定されています。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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