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生薬論(4)

今日は一気に(4)~(6)を移植してしまいます。
まず(4)、2013年6月5日に書いたものです。


2013年6月5日(水)
生薬論(4)

「植物エストロゲン」と聞くと、いかにも「エストロゲン」と同じような働きをしそうですよね。
ところがどっこい、ちょっと違うんです。

えっと、まず、更年期障害の有害症状を緩和するというのは有名ですよね。閉経によりエストロゲン欠落症状を引き起こすので、この状態で植物エストロゲンを摂取すると、これがあたかもエストロゲンと同じように働いて、症状が軽くなる。
このシーンは「植物エストロゲン」が「エストロゲン様作用」をしているので理解しやすいですね。

閉経後にエストロゲンが出なくなると骨粗鬆症を起こしやすくなるので、「植物エストロゲン」の「エストロゲン様作用」を期待して、閉経後骨粗鬆症を予防できないか?という発想。これも「植物エストロゲン」を「エストロゲンと同じ作用」を期待しての考えです。

同様に大豆製品を多く摂取する男性は、前立腺癌の発生頻度が低下することも知られています。これも、「植物エストロゲン」の「エストロゲン活性」を利用した発想です。

では、このシーンはどうでしょう。
エストロゲンは乳癌の発生増殖を促進することが知られています。実際に、大豆イソフラボンはエストロゲン依存性乳がんの増殖を促進する可能性が指摘されているそうです。これも、「植物エストロゲン」の「エストロゲン活性」で理解できますね。
ところが、有経女性(月経がある女性)では、植物エストロゲンは乳がんの予防効果が示唆されています。
どうです?これ、一見矛盾しているように感じませんか?
エストロゲンは乳癌の発生増殖を促進する。さらに植物エストロゲンが加わると、もっと悪くなりそうですよね。ところがそうじゃないというのです。

実は、この現象、「競合的拮抗作用(competitive antagonist)」という説明で解決できるそうです。

「エストロゲン」というホルモンの様々な作用は、「エストロゲン受容体」というものにくっ付くことによって発揮されます。
よく、鍵と鍵穴の関係にたとえられます。
エストロゲンが鍵、受容体が鍵穴ですね。
「植物エストロゲン」も「エストロゲン受容体」にくっ付くのですが、所詮偽物なので、その作用は本物のエストロゲンに比べると弱いのだろうと考えられているわけです。

本物のエストロゲンがない状態(閉経後とか男性とか)では、偽物の「植物エストロゲン」は「エストロゲン受容体」に独占的にくっ付くことができるので、弱いながらも「エストロゲン様作用」を起こすことができるわけです。

ところが、本物のエストロゲンがたんまりある場合はどうでしょう?本来は、正規の「エストロゲン」が「エストロゲン受容体」を独占したいわけですが、そこに偽物の「植物エストロゲン」が来ると、一部の「エストロゲン受容体」を、この偽物が占拠してしまいますね。
ちょうど「椅子取りゲーム」状態です。本当は本物の「エストロゲン」が全員座れるだけの椅子が用意されていたのに、偽物の「植物エストロゲン」が先に座ってしまうわけです。
本物の「エストロゲン」が溢れて座れなくなってしまいます。
かつ、この座った偽物の「植物エストロゲン」は、本物の「エストロゲン」ほどのパワーはありません。
なので、全体として考えると、本物の「エストロゲン」がすべて占拠した場合に比べると、エストロゲン様作用は弱くなるわけです。

よって、本物の「エストロゲン」がいなければ、偽物の「植物エストロゲン」はエストロゲン様作用を発揮するのですが、そもそも本物の「エストロゲン」がいると、逆にその本物の「エストロゲン」の働きの邪魔をしてしまうわけです。

なので、閉経女性や男性では、エストロゲンが少ないので、「植物エストロゲン」は「エストロゲン様作用」を発揮し、逆に有経女性では、自分の卵巣が出している本物の「エストロゲン」の作用を弱めることになるわけです。

これ以外にもいくつかの機序が考えられているようですが、もっとも理解がしやすいでしょう。

よって、使われるシーンによって「エストロゲン様作用」になったり、「抗エストロゲン様作用」になったりするわけです。
欧米人に比べ日本人は乳がんの発生率が低い、などの人種差の話を耳にしたことがありますよね。
もちろん、遺伝子レベルでの要素もあるでしょうが、食習慣の関与も大きいものでしょう。ミソ、醤油、豆腐など習慣的に食べている点などが、病気の発症率をも変化させている可能性があるわけです。
もっとも乳癌は、日本でも増加傾向だそうですが。

皆さんが今、植物エストロゲンを摂取したら「エストロゲン様作用」になりますか?「抗エストロゲン様作用」になりますか?
30年後はどちらになっていますか?

「女性ホルモン作用で、艶やかに!」
閉経後ならそうなるかもしれませんが・・・・。
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Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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