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酸化ストレスと抗酸化物質(4)

そんな感じですっかり「悪者」のイメージが出来上がったROSですが、実は、生体内では必要不可欠であることも事実です。
ここでは、精子に関してのROSの活躍っぷりをみて行きましょう。

【ROSと精子】
去年、京都大学から「精子幹細胞の増殖に、ある一定量のROSが必要である」という報告がなされました。
リンクはこちら色々なマスコミにも取り上げられたので、目にされた方もいらっしゃるかと思います。
要するに
ROSは必ずしも悪者ではない
というわけです。

ROSは、生理的には、細胞内の情報を伝達するメッセンジャーとしての役割を持っていることが知られています。
例えば、精細管内のセルトリ細胞は、下垂体からのFSHの刺激を受けて造精するわけですが、このFSHの命令の伝達にROSが使われていることが知られています。

女性生殖管内に射精された精子自身も、どうやら自分のステータスの変化をROSを使って行っているようです。
精子はバリバリ動き回るわけです。動き回るということは、エネルギー、すなわちATPが必要なわけですが、どうやら精子のATP供給には、ミトコンドリアはあまり活躍していない様なのですね(細かくは、「解糖系」がATP供給のメインの経路らしいです)。
では、精子のミトコンドリアは何をやっているのか?というと、ROSを使って「受精能獲得」「ハイパーアクティベーション」「アクロゾームリアクション」等といった、受精能にかかわる状況制御を行っているようです。
また、「自分は次世代を創るのにふさわしい能力を備えていない」と精子自身が判断すると「自爆」する(アポトーシス)のですが、そのスイッチとしてROSが用いられているようです。

ということで、精系細胞だけを見ても、その機能を発揮するためには、生理的範囲内でROSを上手に使っているわけです。
というか、上手に使わないと、そもそも生殖が成り立たないわけです。

確かにROSは悪者にもなります。
過剰に(病的に)発生したROSは今まで述べて来たような機序により、DNA・脂質・蛋白質を酸化させ、機能障害を起こすだろうと考えられており、その結果、死滅精子の上昇、運動率の低下、奇形精子の上昇、DNA断片化率の上昇等を引き起こすわけです。

さて、ここでも出てきました。本HP得意の生理的範囲内」なのか「病的上昇」なのか
そう。多分そういうことです。
ROSは、生理的範囲内には悪者ではありません。どころか、必要不可欠なものです。
「病的上昇」するから「悪者」になり、問題になるのではないでしょうか?


最初の、京都大学の発表のHPの最後の「波及効果」というところに、このような記載があります。

・・・・今回の研究成果は活性酸素の低下が精子を作るもととなる幹細胞の増殖を低下させる作用があるということを明らかにしました。このため、不妊男性の活性酸素を低下させると幹細胞の能力が低下し、必ずしも精子形成全体には良い影響があるとは言えないことを示唆します・・・・

抗酸化剤の過剰摂取がどうなのか?という議論が必要ですが(ただし、当然経済的被害は絶対に出るわけです)、僕もこの考えに大賛成です。
また後々お話ししますが、

「夫婦が不妊だ!→夫は全員、抗酸化サプリ」という構図には、注意が必要だ、と僕は思うのです。
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Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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