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酸化ストレスと抗酸化物質(6)

【男性不妊に対する抗酸化療法】
ROSは、生理的範囲内において、生殖機能上重要な役割を担っています、が、「ROSが過剰発生する」か「抗酸化物質(antioxidants)が低下」し、ROSとantioxidantsのバランスが崩れる(この病的状態のことを「酸化ストレス(oxidative stress)」と言います)と、DNA損傷・精子膜の変化・蛋白変性などが起こり男性不妊に関与しているのではないか?と考えられているわけです(しつこいですが、ROSは生理的範囲内では必要不可欠なんです)。

では、酸化ストレス状態(ROSの病的過剰状態)において(←この条件が大事ということです!!)、抗酸化剤を投与したらどうなんだ?という発想は当然起こるわけで、古くから色々な抗酸化物質を対象にいくつもの検討が行われてきました。
ある論文の表現をお借りするとこんな感じです。(Hum Reprod 26(7), 1628-の1633ページ)

A dozen antioxidants have been evaluated clinically either individually or in combination. However, most trials are small in size and differ in the target population selected as well as the type, dose and duration of antioxidant therapy.
(いくつもの抗酸化物質が単独で、あるいは多剤併用で臨床的に試験されてきた。しかしながら、多くの検討は検討人数が少なく、母集団の選定方法、抗酸化物質の種類、量、期間などがバラバラである。)


同論文(Hum Reprod 26(7), 1628-)は、過去に行われた20の臨床試験をサマリーしています。それによると、特に精子無力症を対象とした場合、運動率の改善が目立つようです。
妊娠率に関しては、10の報告で論じられていて、そのうち6つの報告で有意に上昇したとされている、とのことです。
一方で、精子濃度を改善したとするのは3つ、精子正常形態率を改善したとするものは無かった、とのことです。
まあ、結果の方は概ね好感触と考えて良さそうな感じがします。

コクランは、2011年が最新です。です。
「ART施行中の男性パートナー」を対象に検討しております。これによると、
出産率:抗酸化物質を飲んでいる男性群で、オッズ比4.85(95% CI 1.92 to 12.24)で有意に上昇
妊娠率:抗酸化物質を飲んでいる男性群で、オッズ比4.18(95% CI 2.65 to 6.59)で有意に上昇
としていて、結論は

The evidence suggests that antioxidant supplementation in subfertile males may improve the outcomes of live birth and pregnancy rate for subfertile couples undergoing ART cycles.

ということで「may」ですね。
但し、このコクランには、こんなことも書かれています。
出産率を出したデーターにおいて
This result was based on 20 live births from a total of 214 couples in only three studies.
(この結果は、3つの臨床研究の全214組での20の出産のデーターに基づいている)

「少なっ!!」

誰もがそう思うと思います。
ちなみに、このコクランに、かの男性不妊の神様、シュレーゲル先生がコメントしております。
(コクランにコメントしちゃうなんて、もう凄すぎでございます。)です。
こんなコメントです。

The results of these studies suggest some benefit of antioxidant supplements for infertile men before in vitro fertilization/intracytoplasmic sperm injection. Unfortunately, the recommendations are based on only 20 pregnancies and the appropriate agent to use for an infertile male patient or its dose cannot be determined by this Cochrane review, leaving us with no further information about how to help male fertility patients.

そうですね。不妊男性に対する抗酸化療法は「some benefit」がsuggestされるようだ、と。ただし、「only 20 pregnancies」に基づいている点、何をどの位使えばいいのかがわからない点が残念、とのことです。

大体こんな感じです。



「おっしゃ!サプリサプリ!」
とはまだならないでください!
次回最終回!(可能なら明日up予定)
「汝、そのサプリ、無条件に飲むべからず」
を予定いたしております。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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