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「精索静脈瘤+非閉塞性無精子症」で、精索静脈瘤を手術したら・・・

無精子症→無条件で即TESE
の流れが出来上がっているかのような感が無きにしも非ずです。
まあ、ART真っ盛りのご時世、それでいいのかもしれませんが、アンドロロジスト(男性不妊屋)の多くは、いろいろ頑張っているわけです。
例えば、非閉塞性無精子症(NOA)の方に対して、TESEはTESEでも、即TESEではなく、「何かやってからTESE」とかね。
その方が、いろんな意味で成績が良い、とする報告が沢山あります。

例えば今回取り上げてみたいのは、「精索静脈瘤+非閉塞性無精子症」です。
この状態をいきなりMD-TESEするのではなく、まず、精索静脈瘤の治療を先行させたらどうか?という話。
2010年のJournal of urologyに掲載されたこちら。です。

  • 精索静脈瘤を有する非閉塞性無精子症(以下NOA)に対して、精索静脈瘤を治療するとどうか?を検討。
  • 現在までに報告されている11論文で検討
  • 遺伝子(染色体)異常が原因となっている例は含まれていない。
  • 検討対象は233人
  • 精索静脈瘤に対する治療は結紮術または塞栓術。
  • 両側の制作静脈瘤治療を施行したのが64.8%。
  • 術後、精液検査で運動精子が認められたのは91人(39.1%)。
  • 14人(6%)が自然妊娠し、体外受精により10妊娠が成立した。
  • 術後の平均精子濃度は160万、運動率は20.1%。
  • 精巣生検の結果が記載されているのは8論文
  • 生検でSCOだった44人中5人(11%)に術後精子が出現。(管理人注:SCO=Sertoli Cell Onlyの意味で、精巣生検において、セルトリ細胞しか認められない、つまり、精系細胞が認められない状態。但し、仮に生検でSCOでも、精巣全体がSCOであるということを証明できるわけでは無く、生検してない部分に造精機能がある可能性はあるわけです。なので、生検でSCOで、その後精子が出て来た、というのは矛盾しているわけでは無いのです。)
  • 生検でHSだった55人中30人(55%)で術後精子が出現した。(管理人注:HS=Hypo-Spermatogenesisの意味で、造精機能不全ですね。つまり、生検組織で造精が認められた、という意味です。)
  • MAでは57人中24人(42%)で術後運動精子が出現。(管理人注:MA=Maturation Aresstで、日本語だと「成熟停止」と訳されるそうです。ただし、この日本語、使ったこともなければ聞いたこともないです。精系細胞が認められますが、精子になる途中までしか認められない状態です。)
  • 精索静脈瘤治療後、精子が出現するのは、精巣生検でHypo-SpermatogenesisやMaturation Aresstの方が、Sertoli Cell Onlyに比べ有意に高率であった。
  • Maturation Aresstでは、どのステージで停止しているのかによって精子出現率が違った。
  • late Maturation Aresst(精子細胞で停止しているもの)では24人中11人で出現しているのに対して、early Maturation Aresst(精祖細胞/精母細胞の段階で停止しているのも)では11人中、精子が出現した人はいなかった。
  • 今回の検討の結果、精索静脈瘤を有するNOA患者では、精索静脈瘤を治療することにより射出精液中に精子が出現することがあることが判明した。
  • 精索静脈瘤の治療後、精子が出現する可能性が高いのは、精巣生検による病理学的所見でHypo-Spermatogenesisかlate Maturation Aresstである場合で、術前のFSHやテストステロン値、精巣容積では予測不明。精索静脈瘤のグレードが高いほど精子出現率が高い傾向にあったが、有意差は認められなかった。


ということです。
で、この論文を書いた先生たちは、こんな提案をしています。
  • 「精索静脈瘤+NOA」なら、まず、簡単に試行可能な精巣生検をしてみたらどうだろうか?
  • この生検の結果、Hypospermatogenesisや、late maturation arrestだったら、精索静脈瘤の治療をしてみたらどうだろうか?
  • で、この「生検」の時、同時にwet preparationも作っておいて、精子がいたら凍結してしまえば、場合によっては、それをICSIに使えばいいわけだし。
なるほど。いきなりMD-TESEではなく、という意味でしょうかね。
こんな文章も見られます。
  • There are medical and surgical treatment options with the potential to improve spermatogenesis in men with NOA.(非閉塞性無精子症患者の造精機能を改善する可能性が秘められた薬剤/手術の選択肢がある)

そんなわけで、「NOA、即TESE」ではなく、「NOA、まず、原因っぽい病態を治療してみる。それから判断する」という、男性不妊屋の心意気、ご紹介してみました。
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Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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