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「精索静脈瘤+非閉塞性無精子症」で、精索静脈瘤を手術したら・・・(2)

そんなわけで、「精索静脈瘤+非閉塞性無精子症」で、精索静脈瘤を手術したら、その後結構射出精液中に精子が出てくるようになって、TESEせずに行けるようになるのでは?というのが昨日の論文でした。

で、今日は「精索静脈瘤+非閉塞性無精子症」ですが、
精索静脈瘤を手術してからTESE v.s. 精索静脈瘤は手を付けずTESE
でどうか?という論文です。リンクはです。
  • この先生たちが2001年-2008年でMD-TESEした患者さんが627人、そのうち96人(15.3%)が精索静脈瘤を合併していた。
  • この96人のうち、66人が1年以上前に精索静脈瘤に対し手術をしていた。
  • よって、精索静脈瘤があるけど手術をしていない群は30人
  • 両群で、MD-TESEで精子回収できたのは、精索静脈瘤手術あり群で53%(35/66)、精索静脈瘤手術なし群で30%(9/30)で有意差あり。
  • MD-TESEで回収できた精子をICSIに供した。
  • 正常受精率(2PN/MⅡ)は、精索静脈瘤手術あり群で63.9%、精索静脈瘤手術なし群で53.6%で有意差は無し。
  • 臨床的妊娠率(GS/ET)は、精索静脈瘤手術あり群で31.4%(11/35)、精索静脈瘤手術なし群で22.4%(2/9)で有意差無し
  • 結論として、「精索静脈瘤+非閉塞性無精子症」では、精索静脈瘤の手術をした後の方が、TESEでの精子回収率が上昇する。

「TESEでの精子回収率」でしか有意差が出ませんでしたが、「精索静脈瘤+非閉塞性無精子症」では精索静脈瘤手術を先行させることが有用であることを示唆する内容となっております。



丁度いい機会なのでこうした医学論文の結果の解釈法についてちょっと解説しておきます。
例えばこの論文、「TESEでの精子回収率で有意差が出た」となっていますが、ではこれを根拠に「精索静脈瘤+非閉塞性無精子症」では精索静脈瘤手術を先行せよ!というエビデンスになるか?というと、これだと弱いんですね。
「いい結果が出た」
という「いい結果」が「患者さんの利益になっているか?」という観点で考えるんです。
例えば、この論文の内容だと、
「TESEでは精子回収率が上がった、でも、臨床的妊娠率は有意差なかった。」
というわけなので、「患者さんが最後に望むこと」は、「精子を回収すること」ではなくて、「赤ちゃんを産むこと」なんですね。
なのでこの「精索静脈瘤を手術してからTESE v.s. 精索静脈瘤は手を付けずTESE」の真のゴールは「出産率」(←「妊娠率」でもない!)なんです。
なので、こういった「TESEで精子回収率が上がった」という状況、一見良さそうに見えますが、所詮途中経過でしかないわけです。
非常に手厳しい言葉ですが以前、こういう表現を聞いたことがあります。
「医者のオナニー」
要するに、「医者は自己満足する。けど、患者さんに本当に利益が出ているかどうかは別問題」というわけです。
非常に手厳しい言葉なのですが、的を得ていると思います。
例えば、この分野なら
「この方法での精子回収率は○○%です!」
という文言、どうでしょうか?
一見、いいように感じますが、よくよく考えると、実はここまでですと「医者のオナニー」で止まっていますね。
「この方法でTESEをすると、最終的に出産率は○○%です!」
ここまで行って初めて「患者さんの利益(真のエンドポイント)」になるわけです。

不妊がらみの論文を見ていると、「clinical pregnancy rate」と「live birth rate」という言葉が出てきます。
僕はいつもHP上で「臨床的妊娠率」と「出生率」という風に訳していますが、そういうわけで、この2つの意義は、一見似ているようですが、大分違うのです。
「clinical pregnancy rate」、大分いい所まで行ってはいるのですが、まだ「医者のオナニー」止まりなわけです。
「live birth rate」まで行って、初めて「患者さんの利益」になるわけです。

正に僕らの日常診療もこれで、
『真のエンドポイントは何か?』『本当のゴールは何か?』
これを少しでもはき違えると、一気に「医者のオナニー」止まりになってしまうわけです。
僕も、妊娠反応陽性の時点ですっかり満足してしまうことがしょっちゅうあるのですが、反省しなければいけません。
ご夫婦が赤ちゃんを抱いているシーンまで行って、ようやく真のゴールなのですから。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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