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胚盤胞培養:Can we perform better than nature? (2)

【培養液その1:sequential media or single medium?】
体外受精の「培養液」というのは、基本的に「培養液製造会社」が作って売っています。
狭い世界ですが、結構熾烈な競争が繰り広げられている世界です。

で、基本的には「胚盤胞まで培養可能なように」作られているのですが、これが(不思議なことに)、コンセプトによって大きく2種類あります。

(1)シーケンシャルメディア(sequential media:mediaはmediumの複数形です)
卵管やら子宮やらの内容液の成分(かつ、これが月経周期によって変化しているらしい)の分析結果や、胚の時期に合わせて、培養液内に含まれている成分の濃度を変更しよう、という概念で作られています。
一般的には、day3(8細胞)位までとそれ以降で使用する培養液を変えます(施設によっては、さらにいろいろ工夫をしているところもあるようです)。
よって、複数の種類の培養液を次々に変えて使うので、medium(単数形)ではなく、media(複数形)で呼びます。

細かくは難しくなっちゃうので、ごくごく簡単に解説したのがこちら。です。

(2)シングルメディウム(single medium←こっちは単数形です)
初期胚~胚盤胞まで、全て同じ培養液で培養する方法です。
「胚は、自分自身で必要な成分を選択して利用するため、胚の生理的機能変化に合わせた培養液組成の変更は必要ない!」
という概念で作られています。

で、過去の論文を見てみると、これが凄い大論争になっており、火花が散りまくっております。
ちなみにシーケンシャルメディアのGardner先生のお言葉を拝借すると、

In-vivo data obtained humans show different concentrations of pyruvate, lactate and glucose in the oviduct and the uterus, changing also during the menstrual cycle.

「月経周期によって、卵管内/子宮内のピルビン酸/乳酸/ブドウ糖の濃度は変化している。(だから、それにあわせるべきだ)」というわけです。

これに対し、シングルメディウムのBiggers先生のお言葉をお借りすると、

There are no direct data obtained from pregnant women.
The metabolism of the embryo is not strictly determined by the environment.
In vitro, embryos may adapt to constant environment with their changing metabolism.

だそうです。
要するに、
「そのデータは正に妊娠した周期の女性のデーターじゃないじゃん。胚の栄養要求性が変化するのはいいにして、だからと言って、培養液の環境を変える必要性がある、という結論にはならなくない?同じ培養液の環境で、胚の栄養要求性が変わるだけなんだから。」
といった感じです。
この辺の論争の論文を読んでいると、結構過激で面白いです。

「体外で、ヒトの胚を培養したい!」という同一目標にも関わらず、そんなわけで、体外受精の培養液のコンセプトは(少なくとも今日現在)一本槍ではないのです。
「俺はこう思う」「いやいや、俺はこう思う」
といった状態。

で、まあ、感覚的には、最近まで(今でも)シーケンシャルメディアが主流だと思いますが、直近、シングルメディウムが盛り返しつつあるような感があります。
その辺のお話を次回したいと思います。
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コメント

[C272] Re: 面白いし、勉強になります

コメントありがとうございます。
僕は英語が苦手なので、この文章はもちろんどこかのコピペです。
どこからとったかは、忘れちゃいました。

この文章を書いてからもう2年半経っています。
当時よりもずっとCSCが流行っておりますかね。
いろいろ目まぐるしく変わる世界ですので、やはり日々知識のupdateが必要ですね。
  • 2016-10-05 20:25
  • ドクターI
  • URL
  • 編集

[C270] 面白いし、勉強になります

先生の記事、自己流といいながら、ちゃんと出典を紹介していることも多く、勉強になります。実は、私、胚培養士でして、培養液の話は結構おもしろくよんでいます。GardnerとBiggersのそれぞれの主張する言葉、それぞれに説得力ありますよね。ついでに言えば、これらの主張をしている論文なりの出典も紹介してくれていれば・・・。論文検索したけど見つからなかったです。先生がこのブログに書くぐらいだから、ちゃんとした出典があると思うのですが。

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Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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