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胚盤胞培養:Can we perform better than nature? (5)

【培養液その4:まとめ】
そんなわけで、現在、体外受精で用いられている培養液の現状について、ごくごく簡単にですが書いてみました。
現在主流となっている「シーケンシャルメディア」、そもそものコンセプトは、ヒト生体内での卵管内/子宮内の内容液に真似て作られているわけです。
非常に説得力のある理論です、し、事実、これにより無事妊娠成立なさったカップルは沢山いらっしゃるわけです。

一方、培養液の「コンセプト」は全く一本槍ではないことも記載してまいりました。
「シーケンシャルメディア」とは全く違うコンセプトの「シングルメディウム」というものが存在し、これは、「体外での培養をヒト生体内での条件に似せてどうする!最初から別物として扱おう。」という意図があるのでした。

こちらの意見も非常に説得力があるので、少しご紹介させていただき、とりあえず培養液の話の締めにしたいと思います。
Grobalという「シングルメディウム」を作っている会社の冊子です。
この冊子の3ページの下の方から4ページの図のところまでに「なぜシーケンシャルメディアではなくシングルメディウムなのか?」が説明してあります。
(もちろんこれはコマーシャルの意味合いが強いわけですが、結構説得力があるので、ご紹介してみたいと思います。)
  • 実際の卵管内容液/子宮内容液を計測比較し、それが胚発育に対し最適であろう、という概念から「シーケンシャルメディア」が作られた。
  • 確かにこの理論は論理的だが、この「自然回帰("back to nature")」というアプローチの仕方には欠点がある。

という出だしで、この「シーケンシャルメディア」の考え方に疑問を呈しています。
ここには、3つの疑問が書かれていますが、その3番目の疑問に、このような図(figure 1)が付けられていて「自然回帰することの無意味さ」を訴えています。
(このPDFはオープンにされているくせに、内容が保護されているので、コピペが出来ず、デジカメ写真ですいません。本体をダウンロードしてみてみてください。)



  • 図1に記したように、胚を取り囲む環境は、生体内と体外受精では全く異なっているわけである。
  • 病的な場合を除き、(生体内では)生殖管内に「液体の貯留」というものは存在しない。
  • 胚は液体の薄い「膜」に覆われていて、母体組織と接して存在している
  • よって母体組織から速やかに栄養成分の供給を受けたり、老廃物の回収を受けたり、ガス交換を受けたりすることが可能で、「母体-胚間の相互作用」が存在する。
  • 逆に、体外受精では、胚は培養液という大きな液体のプールの中に浸かっているわけで、培養期間中確実に栄養成分は減り続け、老廃物は増え続ける。
  • よって明らかに体外受精が胚に与えるストレスは生体内とは異なっており、培養液というものは、(生体環境を真似てもだめで)「培養環境」でこそ最適にデザインされるべきなのである。

確かに鋭い指摘です。
「体外受精」という異なる環境に置く以上、「生体内」に「液体成分」だけ似せてもだめだ。「生体に似せよう」という発想をするのではなく、「体外培養独自で最適なものを作ろう」という発想をすべきだ。
というわけです。

よ~~~く話を聞いてみると、確かにこちらの言い分も説得力あるでしょ?
「肝心の『母体』がいないのに、液体だけ生体内に似せるのって意味あるの?」
という感じなわけです。


で、ここからは、僕個人の感想です。
胎児期には胎盤-臍帯を通してcross talkをしている。
生まれたら母乳を通してcross talkをしている。
胚もきっと母体とcross talkをしている(と思う)。
やっぱり、『お母さん』なんですよね。

最初に書きました。
Can I perform better than nature?
どうでしょうか?

なので結局、ある程度「数」でカバーするのでしょうね。
多かれ少なかれ排卵誘発を行うのも、そういうことなんだろうな、と思わなくもないわけです。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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