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胚盤胞培養:Can we perform better than nature? (7)

【胚盤胞移植その2:初期胚 v.s. 胚盤胞の『累積妊娠率』】
一本論文を読んでみましょう。
(少し古い論文なのですが、後で記載しますが、この論文を選んだのには理由があります。)
えっと、こちら。この論文は、論文全文を誰でも見ることが出来ます。
リンク先の右上の「FREE FINAL TEXT」というアイコンをクリックすると、論文全文が表示されます。
論旨はこちら。
  • 対象患者は、39歳以下、過去に体外受精を行ったのは3回以下、day1で4個以上の正常受精卵がある患者。
  • 条件を満たす患者をランダムにday2でETする群とday5でETする群に割り振った。
  • day2 ET群では
    • 89組
    • 1人がET可能胚が得られずETキャンセルになって、3人が1個ET、79人が2個ET、11人が3個ET
  • day5 ET群では
    • 99組
    • 10人がET可能胚が得られずETキャンセルになって、10人が1個ET、79人が2個ET
  • 出産率は、胚移植当たりで、day2 ET群で44.1%、day5 ET群で37.1%で有意差なし。
  • 新鮮胚移植後、凍結可能胚が存在したのは、day2 ET群で68人(73.1%)で平均4.3個、day5 ET群で48人(53.9%)で平均3.3個
  • これら凍結胚の融解胚移植を加えた場合の累積出産率(新鮮周期+凍結融解胚移植周期全ての結果を足した場合のカップル当たりの出産率)は、day2 ET群はエントリー94組中47組(50%)、day5 ET群はエントリー99組中36組(36.4%)で有意差を持ってday2 ET群の方が高かった。

ということです。
ET胚数etc etc色々条件があるのですが、まあそれはおいておきましょう。
重要なことは何か?というと、昨日の話に繋がります。

昨日書いたモデルケースでは、生き残る胚は決まっている筈ですから、新鮮と凍結合わせて、とにかく10個全ての胚を全部ETしたとしたら、初期胚ETでも、胚盤胞ETでも3個の胚が着床するはずですよね。
つまり、妊娠する胚の数は同じになるはずでした。

所が、この論文のデーターでは、day2 ET(新鮮でも凍結でも全てをday2でETした群)は50%で赤ちゃんを抱くことが出来て、day5 ET(新鮮でも凍結でも全てをday5でETした群)は36.4%しか赤ちゃんを抱くことが出来ずに、有意差を持ってday5 ET群の方が低いわけです。
何で?おかしいじゃないですか?

そうなんですね。昨日書いた条件が、実際には成り立っていないわけです。
どれがですか?
そうです。
「体外受精の培養液環境でも、女性の生殖管内でも、どちらも同等に胚は発育すると仮定します。」
これが実際には成り立っていないのです。

今日ご紹介した論文の最後の最後の段落、「In conclusion~」の所の最後から2文目にこう書いてあります。
リンク先飛んで確認してください。

Although it has been argued that embryos that arrest to develop in vitro could contain chromosomal anomalies or other metabolic defects, some of these arrested embryos could have survived in in‐vivo conditions if transferred earlier.

訳します。

体外培養環境下で発育が止まってしまう胚は、染色体異常胚や代謝異常胚が含まれていると言われているが、このうちの一部は、早期に胚移植されれば、生体環境内ならば生き残ることが出来る
(おう。「仮定法過去」だ(笑)。懐かしい・・・。」)

そういうことなんです。
皆さんのお腹の中なら生き残って赤ちゃんになることができる条件を整えた胚が、長期に培養されたが故に胚盤胞にすらなることができずに成長を止めてしまっている可能性がある!
ということです。

胚盤胞培養の技術は、進歩しているのは間違いない所ですが、残念ながら、皆さんのお腹の中には勝ててはいないと思います。
なので、「赤ちゃんになりうる運命の胚の全てが胚盤胞培養液内で胚盤胞まで成長できるか?」と言われると、答えは多分「NO」
つまり僕自身も、母の体内でこそ育ちましたが、培養液内では胚盤胞にすらなれなかったかもしれません

逆にいうと、
「胚盤胞培養環境で胚盤胞まで到達することができた胚」というのは、「非常に健康的な胚」ということができるかもしれません。
これが胚盤胞培養の利点です。

「獅子の子落とし」というのがありますね。
あのイメージです。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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