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高刺激誘発後のOHSS回避目的のアロマターゼ阻害剤

排卵誘発の合併症に卵巣過剰刺激症候群(OHSS)があります。
僕が研修医の頃は、入院管理やら、真夜中の救急外来で「お腹が張る」やら、しょっちゅう拝見させていただきましたが、最近流石に入院適応になるほどのOHSSはほとんど見なくなりました(時代の経過+地域特性もあるのかもしれませんが)。
かくいう僕も高刺激をやるのですが、OHSSハイリスク時には全胚凍結で回避してしまいます。

高刺激時のOHSS回避には、全胚凍結以外にもいろいろな工夫がなされています。
その中の一つに、
「全胚凍結にするなら、その周期は妊娠可能性が無いわけだから、どうせならガッチリE2下げちゃえばいいんじゃない?」
ということで、採卵後に「アロマターゼ阻害剤」を飲んでみてはどうか?という発想があります。
今日は、そんな論文をご紹介してみたいと思います。です。
  • 卵子提供者30人(18-35才)が対象。
  • リコンビナントFSH+GnRHアゴニストによる排卵誘発(管理人注:おそらくロング法ということだと思います)。
  • 対象者のうち15人は採卵後からレトロゾール2.5mgを5日間、残りの15人はプラセボを5日間内服してもらった。
  • hCG投与日/採卵後4日目/7日目/10日目にLH/E2/Pを採血。
  • 採卵後4日目のE2は、レトロゾール群で279/プラセボ群で1586。
  • 採卵後7日目のE2は、レトロゾール群で240/プラセボ群で855。
  • 採卵後10日目のE2は、レトロゾール群で40/プラセボ群で448。
  • 何れも"dramaticallyに"E2を低下させることができた。

という内容の論文です。
ということで、その新鮮周期にETしないんだったら、アロマターゼ阻害剤飲めばE2を下げられるよ、という内容でした。

但し、この論文のendpointは所詮「ホルモン値」でしかなく、肝心の「OHSSが回避できるのか?」ではないところがミソです。
つまり、
「採卵後、アロマターゼ阻害剤飲んでE2を下げれば、OHSSになりにくくなるのか?」
という疑問が残りますよね。
単にE2下げただけじゃあ、いわゆる「医者のオナニー」止まりなわけです。
どうなんでしょうか?
単純に考えればE2が下がればいいような気がしますが、最近、こんな論文がPubmedで見つかります。論旨的には
「黄体期のレトロゾールは、E2は下げるけど、OHSSのリスクは変わらない」
ということのようです。
この論文は非常に興味のある内容なのですが、中国語なので流石に僕には読めません。
英語で書いてくれればいいのに・・・。

あ、そうそう。いつもの合言葉。
くれぐれもよろしくお願いします。m(_ _)m

今日(2014年6月)現在、アロマターゼ阻害剤は排卵誘発剤としての効能は認可されておりません。
即ち、アロマターゼ阻害剤を排卵誘発目的に使用することは、完全に適応外使用です。
仮に実臨床上、排卵誘発剤として使用する医療機関があったとしたら、それは処方する医療機関(医師)の責任の上で、患者様との十分なインフォームドコンセントが形成され、両者合意の上で処方されている筈です。
よって当然ですが、本HPはアロマターゼ阻害剤の適応外使用による健康被害等に一切の責を負いません。

本HP記載内容はアロマターゼ阻害剤の排卵誘発剤としての利用を認める意図は全く無く、海外の医学雑誌に記載された内容の和訳・解説に過ぎないことを十分ご理解の上、お読みください。
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[C211] Re: OHSSになったらどうすれば?

はい。歯切れの悪いお答えで申し訳ありませんが、お答えは「主治医の先生の指示に従いましょう」ということになります。
どの程度の誘発をして、どの程度のOHSSなのか?が把握できないまま、僕がてきと~にお答えした内容で、まんまん万一ご質問者様に何らかの弊害が起こってしまった場合に責任が取れないからです。
ご質問者様の現在の状況の全責任は主治医の先生が負ってくださっています(医者は皆、そういう気概で臨床に臨んでいます)ので、悩まずに主治医の先生にご相談してみてください。

そんな感じです。
  • 2015-12-24 17:12
  • どくさま改め「いわもと」
  • URL
  • 編集

[C210] OHSSになったらどうすれば?

Merry Christmas!
いつも先生のblogで勉強させていただいてます。

OHSSになった場合、患者自身でできること・・・をぐぐってみますと

1:水分と塩分を多めに摂ろう派
(医師にそう指示された、という体験談多数)
2:悪化するから水分と塩分は控えめに派
http://www.y-lc.net/topix2.html
3:それより甘いものを控えましょう派
http://ameblo.jp/matsubooon/entry-11428148377.html

1と2は真逆だし、なんで医師によって言うことが違うのよー?と思ってしまい。
(そんなのよくあること、ではありますが。)
統一見解みたいなものはないのでしょうか?
また、先生のお考えはどうですか?

アロマターゼ阻害薬とはズレた内容ですみません。
OHSSに関しておもしろい研究等あればいつかとりあげていただきたいです。

しかし、この時期に甘いもの控えるって、つらい・・・・゚・(つД`)・゚・
  • 2015-12-24 16:35
  • 軽度OHSS患者
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  • 編集

[C95] Re: がんばれletrozole

kam先生

hotなpaperのご紹介、誠にありがとうございました。
僕もabstractだけ読んでみました(本文も近々手に入れたいと思います)。
先生のご紹介くださったpaperは、
The incidence of moderate and severe OHSS was lower in the 7.5 mg group than in the control group (p < 0.05).
であり、評価項目がホルモン値にとどまらず、VEGFの評価、さらにはきちんとOHSSの発症率で評価されているようで興味深いですね。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18710719
は、2.5mg/day
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18764999
は5mg/dayのようです。

表題の「がんばれletrozole」も意味深で。
今回の「生殖医療の必修知識」にもアロマターゼ阻害剤は一言も触れられておりませんでした。
まだまだ当分letrozoleは「適応外」のようですね。
  • 2014-11-25 17:34
  • どくさま
  • URL
  • 編集

[C94] がんばれletrozole

アブストラクトしか読めておりませんが、letrozoleがOHSSの程度をやわらげられるかもという論文が出ていました。

「The incidence of moderate and severe OHSS was lower in the 7.5 mg group than in the control group (p < 0.05). In the patients with high-risk OHSS undergoing whole embryo frozen transfer, treatment with 7.5 mg letrozole may be useful to limit OHSS.」
だそうです。

Syst Biol Reprod Med. 2014 Dec;60(6):355-60. doi: 10.3109/19396368.2014.957879. Epub 2014 Sep 5.
Effects of different doses of letrozole on the incidence of early-onset ovarian hyperstimulation syndrome after oocyte retrieval.
He Q1, Liang L, Zhang C, Li H, Ge Z, Wang L, Cui S.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25192259

先生が記事内で紹介されている論文の用量は
「2.5mg, 毎日2次, 共5d」
とのことですので、5.0mg/day?でしょうか。

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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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