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潤滑ゼリーの使用は妊孕性に影響するのか?(1)

性交渉が成立する、というのは、冷静に考えてみると結構ハードルが高いものです。
男性側には腟内挿入に十分なレベルの「勃起」の成立が、女性側には腟内挿入に十分なレベルの「潤い」が必要なわけです。
両方の条件がシンクロしないと適正な性交渉が成立しないわけで、「挿入できない」「痛い」といった状態になってしまうわけです。
この状態をアシストすべく、数多くのアイテムが商品化されているのは皆さんご存知の通りです。
その中に「潤滑ゼリー」があります。
僕もお話を伺った上で適応になる、と思った時には使用をお勧めするのですが、有効な方には劇的な効果があるようです。
「人生変わった」とまで言われたことがあります。

しかしながら、この「潤滑ゼリー」そのものを精子と直接混ぜ合わせると、精子運動性を著しく低下させることが知られています。
よって、この「潤滑ゼリー」を使用した性交渉では妊娠が成立しにくくなるのでは?という疑問がわくわけです。

ここでは、現行、「妊娠を目指した性交渉での潤滑ゼリー使用」はどのようにかんがえられているのか?を考察してまいりたいと思います。
まずご紹介する論文はこちら。です。
以下、論旨。
  • アメリカでは、62%の女性に潤滑ゼリーの使用経験がある。
  • 一般的に用いられている潤滑ゼリーは、体外での検討では精子運動性に悪影響を与える。商品によっては15分で精子運動性が無くなるものもある。
  • このため、性交渉中の潤滑ゼリー使用は、妊娠率を低下させる可能性があり、妊娠を希望しているカップルは使用を控えるようにアドバイスされていることが多い。
  • 今回我々は、性交渉中の潤滑ゼリー使用が妊娠成立に与える影響を検討してみた。
  • 対象は妊娠を希望してから3周期以内の30-44歳の女性
  • 潤滑ゼリーの使用の有無/頻度/種類を確認した。
  • 使用頻度を4段階で評価(使用無し/時々(<50%)/しばしば(>50%)/毎回)
  • 参加人数は296人で、妊娠トライが完全に初めての周期という人は148人
  • 妊娠トライが完全に初めての周期という148人のうち、6周期以内で妊娠成立したのは、潤滑ゼリー使用群で72.7%、未使用群で68.0%
  • 潤滑ゼリー使用群では、時々(<50%)使用が44%、しばしば(>50%)使用が31%/、毎回使用が24%
  • 排卵期周辺で潤滑ゼリーを使用した群と使用しなかった群を比較すると、妊娠率は、オッズ比1.05(95%CI 0.59-1.85)で有意差を認めなかった。
  • 排卵期周辺で潤滑ゼリーを使用して性交渉をしても妊娠率は低下しないようだ。
とのことで、この論文では「潤滑ゼリー」の使用は問題なさそうだ、という論調です。
では、潤滑ゼリーと精子を「直接混ぜる」と精子運動性が低下するのに、「性交渉時使用では」問題とならない理由は何か?という点に、この論文では3つの可能性を説明しています。
  • 「潤滑ゼリー」を性交渉で用いても、外陰部+腟内下部に留まり、腟内上部にはほとんど到達しないのではないか?
  • 妊娠に寄与する腟内射精された精子は、速やかに子宮頸管内に侵入するので、ほとんど潤滑ゼリーと触れないのではないか?
  • 「潤滑ゼリー」を使用することで、性的活動度が上昇し、性交回数が増えるのではないか?
そうですね。特に3番目の説明が重要だと思います。
「潤滑ゼリー」の精子への影響を気にするがゆえに、有効な性交渉の妨げになるようだと、本末転倒というわけです。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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