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卵管造影と新生児一過性甲状腺機能低下症(1)

ヨウ素は甲状腺ホルモンの原材料なのですが、ヨウ素を急速かつ過剰に摂取すると甲状腺ホルモンの分泌は抑制されてしまうことが知られています。
原材料がいっぱい来るのに、製品は減ってしまうという奇妙な現象が起こるわけですね。
これをWolff-Chaikoff効果と呼んでいます。

で、妊娠中にヨウ素を過剰に摂取すると、赤ちゃんが生まれてきた後に、一過性の甲状腺機能低下症が起こるのではないか?ということが報告されてきております。
こちらに、厚生労働省が「甲状腺機能低下症」についてまとめたマニュアルがあります。このマニュアルの17ページの一番上から書いてあります。

「ヨードを急速かつ過剰に摂取すると甲状腺ホルモン分泌の抑制(Wolff-Chaikoff効果)が起こる。・・・・」

で、この後お読みいただくと、実際の商品名がガンガン書いてありますね。
本HPでは、流石に商品名は書きにくいので(^^;一般名で書いておきますが、商品名を知りたい方はリンク先に飛んで、直に確認してください。
ヨード含有うがい薬、市販薬、ヨード添加卵、海藻類が挙げられています。

で、その下、PDF 17ページの真ん中辺に「新生児・乳児に対する影響」として、

周産期における母体や児の過剰なヨード曝露が新生児期の一過性の甲状腺機能低下症の原因となることが報告されている。先天性甲状腺機能低下症の新生児マススクリーニングにおける疑陽性の主な原因となっていることから、周産期に母体、新生児ともにヨード含有消毒剤を極力使用しないように勧められているが、我が国では臍処置時に半数近くの施設で使用されており、注意が必要である。

とも記載されております。
はい。確かにそうなんですね。
僕が研修医のころ、妊婦さんの消毒、何でも「イソ○ン」でした(全国的にそうだったのかどうかは定かではありません)。
妊娠中の腟内消毒もイソ○ン。
陣痛中、内診するときにも潤滑剤としてイソ○ン・クリーム。
分娩体位取って、「外消(外陰部消毒)」と称してイソ○ンをぬりぬり。
生まれた赤ちゃんのへその緒を切る前にもそこにイソ○ン。
そんな感じ。
でも最近では、「周産期のヨード含有消毒剤の使用制限」が盛んに言われる傾向があるようで、あまり使われなくなってきていると思います。

で、不妊治療の現場は、当然、「将来の妊婦さん」を拝見しているわけですが、そこで時々取り上げられるのが、「卵管造影で用いられる造影剤」です。
子宮卵管造影で用いられる油性造影剤は、ヨード含有造影剤と呼ばれ、その成分中にヨード(ヨウ素)が含まれています(正式名:ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル注射液)。
で、卵管造影を受けて、その直後に妊娠成立した母体では、造影剤からのヨード供給過剰が続き、生まれた赤ちゃんの甲状腺機能低下と関連するのではないか?という意見があるわけです。
赤ちゃんは生まれると「新生児マススクリーニング」という検査を受けるのですが、この検査項目に甲状腺機能検査が入っております。で、卵管造影を受けた母体から出生した赤ちゃんがこれで引っかかり、精密検査を受けたり、時には、治療が必要だったという報告も散見される状況です。

以上の情報から、卵管造影自体を「避ける」という話を聞いたこともあるのですが、卵管造影自体は、ご存じの通り、適応のある方に上手に使うと非常に効果的な治療に成り得るわけです。

では、この情報を理由に卵管造影検査を避けてしまうのは、本当に賢明な判断なのでしょうか?
この疑問点について、「我流の意見」ではなく、「公には/客観的にはどのように考えられているか?」を考察してみたいと思います。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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