Entries

子宮内膜を傷つけて、着床障害を克服する?(1)

「着床障害」という言葉があります。
イメージするに「着床しうる条件を整えた胚が来たにも関わらず、子宮内膜がその胚を受け入れない」状態を指しているものと思われます。
ただし、この状態、定義があいまいで、何を持って「着床障害」とするのか?が良くわかりません。
「形態良好胚を○回移植しても着床しない場合」等の表現がなされることがあります。が、例え「形態良好胚」であっても、染色体異常胚が占める割合が思ったより高いことは知られていて、この「○回移植した胚」の「胚」に問題がある可能性だって当然否定されていない訳で、何でもかんでもすぐ「子宮内膜のせい」にするのは多少問題があるのかと。

ただし、確かに「子宮内膜側の受け入れ態勢」に問題がある可能性が強く示唆されているのも確かで、そのような場合、何らかの形で「子宮内膜を『刺激する』」とその後の着床率が上昇する、という現象があるらしいことは、数多く報告されているのは、御存知の方も多いのではないでしょうか。

「子宮内膜を『刺激する』」方法も多彩で、「オレ流」的なもの~「数本の論文があるもの」~「ほぼエビデンスと呼べるもの」までいろんな方法が試みられているのですが、その中で「エビデンスと呼べるもの」にかなり近い方法として、「子宮内膜を傷つける」という方法があります。
で、ここでは、この「子宮内膜を傷つけて、着床障害を克服する」という方法の現状を確認しておきたいと思います。
読む論文は、2010年のfertility sterilityにのった総説論文で、です。
で、この論文内に、今日「子宮内膜を傷つけると、着床率が上昇するらしい」と考えられるようになるまでの歴史が記載されていますので、それを順に見ていきたいと思います。

【プロローグ】
(1)1971年、Karowら。
この報告によると、黄体期に子宮内膜生検を行って、その周期まさに妊娠成立した28人を経過観察すると、その内の2人しか流産に至らなかったとのことです。
すなわち、流産率は7%で、一般的な(すなわち、生検していない)流産率にくらべ低い流産率だった、とのことです。
この論文の著者らは、(もちろん黄体期に生検することのリスクもありますが、)もしかしたら、「子宮内膜を傷つけること」が何かしら良い影響を及ぼしているのかも?と言及しています。

(2)1993年、Friedlerら。
この報告は着床障害例14人に、「子宮鏡+子宮内膜掻爬+3種類の抗生剤+エストロゲン」という治療を行ったところ、14人中6人が妊娠した、と報告しています。この論文の著者は、(この時点では)細菌性の子宮内膜炎が原因で着床障害が引き起こされていたのでは?と考えていたようですが、このプロトコールには「子宮内膜掻爬」が含まれており、今考えると、この行為が「子宮内膜を傷つけること」になっていたのではないか?という訳です。

続く
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://dokumotti.blog.fc2.com/tb.php/284-d48e25dc

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

カウンター