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【夏期講習】不育症(13)

【tender loving care】

不育症関連の総説論文を読んでいるとよく見かける言葉に「tender loving care」というものがあります。
エルビス・プレスリーの歌を思い起こさせるような言葉ですね。
日本語に訳しにくいですが、直訳すると「優しく愛するケア」。
つまり、心地良く包み込むような、「守られている」と感じられるようなケア、ということでしょうね。
2006年のHuman Reproduction誌に、習慣性流産の総説論文が載っています。
このアブストラクトにこんな一文が載っています。
(最後から2番目の文章)

Tender loving care and health advice are the only interventions that do not require more RCTs.
(tender loving careと健康管理上のアドバイスが、唯一これ以上のRCTが必要の無い治療である。)

この論文では、1984年に発表された以下の論文が引用されています。ここには、原因不明習慣性流産患者に対して出産前のカウンセリング+精神的なサポートを行うと86%が妊娠に成功したが、行わない場合は33%にとどまった、と報告されています。

つまり、そのメカニズムは未だに良くわかっていないのですが、生殖のシーンにおいてメンタル・コンディションが確実に何らかの作用をしているわけです。
脳から分泌されるホルモンにより生殖が支配されている点を考えると、精神状態(=中枢神経の状態)が生殖のシーンに影響を及ぼすのは当然なのかもしれません。
「新たな生命」は精神的に安定している母体を好むわけです。
「新たな生命」にとっては、当然その方が自らの成長に適しているわけでしょうから。


おなかに宿った胎児を妊婦さんが温かく包み込むようにケアするわけですが、さらにその妊婦さんを夫が、家族が、さらには医療関係者が、社会が温かく包み込むようにケアして、安定した/安心な胎内環境を提供するようにすることが大切、というわけです。

読み進めてきたテキストには、具体的にこのように書かれています。
  • 流産・死産を体験した後の悲嘆過程が正常範囲内であるかを見極め、「病的な悲嘆」など必要と思われた場合には、十分な精神的ケアが受けられるような環境を構築する。
  • 誤った認識を有する場合には、そのような認識を持った背景要素に配慮し、正しい認識を持つためのサポートを行う。
  • 正確な医療情報の提供や、検査の実施及び結果の説明、治療方針の決定、妊娠継続率の予測などを行う。
  • 妊娠初期の超音波検査は大きな意味を持つ。出血があった場合などは、胎児の心拍が確認できれば、精神的ストレスが緩和されます。
  • 医療スタッフ、家族や支援者が「(一緒に)がんばろう」という態度で接することが重要。
  • 夫は流産・死産をした妻への支援者としての役割を強いられることになるが、夫も妻と同様に精神的苦痛を感じている場合が多いので、注意を要する。
ということで、夫婦(妻のみではない!)と主治医・医療スタッフとの信頼関係が重要というわけです。

これは何も流産に限った話ではないことも本HPでとりあげてきました。えっと、例えば、など。

そんなわけで、間違いなく赤ちゃんは何らかの方法で、「良好な精神状態の母体」を好んでいます
「笑う門には福来る」という言葉があります。
多分そういうことです。
不妊患者さんにも、不育患者さんにも、そして妊婦さんにも、いや、そもそも病院に来る状況の方々全てに「tender loving care」を心がけねば。
僕は実行できているかな?
もっともっと努力せねば。


そんなわけで、ざっとですが、不育症の最近の考え方を見てきました。
ひとまずこの内容おしまいにします。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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