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【夏期講習】不育症(番外編):生食+お砂糖が着床障害に?

不育症の話の途中で少し出てきましたが、今ではほぼ否定されていると思われますが、以前、「抗凝固療法が体外受精反復不成功例の治療になるのではないか?」という発想があったわけです。
で、おそらく、その効果の程が検証されていた時期に当たるのであろう2003年に、なかなか面白い論文が発表されていますので、ご紹介しておきたいと思います。
その論文は、2003年のfertility and sterilityに載っているこちら、です。
以下論旨。
  • 10個以上の胚を移植するも妊娠に至らなかった患者のうち、抗リン脂質抗体(+)または抗核抗体(+)の143人に対し前方視試験を行った。
  • 治療群はヘパリンの自己注射+アスピリンの内服を、プラセボ群は生理食塩水の自己注射+ショ糖(お砂糖)の内服をそれぞれ行った。
  • この試験はダブルブラインドで施行。
  • 143人の300周期で、トータル555個の胚が移植された。
  • 治療群(ヘパリン+アスピリン)は、158周期、296個の胚が移植された。
  • プラセボ群(生理食塩水+お砂糖)群は142周期、259個の胚が移植された。
  • 妊娠反応陽性率は、治療群で14.6%、プラセボ群で17.6%で、有意差なし。
  • 胚当たりの胎児心拍確認率は、治療群で6.8%、プラセボ群で8.5%で、有意差なし。
  • 胚当たりの出生率は、治療群で6.1%、プラセボ群で6.6%で、有意差なし。
  • 今後、今回の我々の研究結果が否定されない限り、抗リン脂質抗体陽性または抗核抗体陽性の着床障害患者でのヘパリン+アスピリン療法は推奨できない。
ということでこの論文自体は、体外受精反復不成功例に抗リン脂質抗体やら抗核抗体をスクリーニングして、陽性だった場合に「ヘパリン+アスピリン」をやっても「生理食塩水+お砂糖」をやっても妊娠率は変わらない、つまり、「ヘパリン+アスピリン」は無効だ、ということを言いたい論文なわけです。

で、それはそれでいいのですが、おまけで非常に面白い考察がなされています。
  • 今回の検討対象にはならなかった着床障害患者は、抗体陰性患者は1447人、1788周期に、トータル3237個の胚が移植され、胚当たりの胎児心拍確認率は4.5%であり、(ヘパリン+アスピリンなり、生理食塩水+お砂糖なりどちらであれ)試験に参加した群の胚当たりの胎児心拍確認率は7.6%であった。これは、「どちらであれ試験に参加した群」の方が有意に高かった
  • また、抗体陽性でも、試験に参加するのを拒否し、何の治療もしなかった患者は16人、25周期に、トータル47個の胚が移植され、胚当たりの胎児心拍確認率は4.2%であった。
  • 今回の研究の主題からは外れるが、プラセボ群ですら妊娠率が高かったのは、試験に参加してくれた対象患者に対して"the extra care and attention"があったからなのかも知れない。
つまり、「生理食塩水の注射+お砂糖の内服」をやった群でも、「何もしなかった群」に比べると有意差を持って妊娠率が上昇した、というわけです。
もちろんこれは「生理食塩水+お砂糖」の薬理効果であるわけではないわけです。
そうなんですね。これがtender loving careであり、そして、患者さんの「今回は今までと違って治療を受けている!」というpositive thinkingの結果なのでしょうね。

「『楽しく』『笑顔で』『前向きに』治療を受けていただく」ということがいかに重要か。
「患者さんをpositive thinkingにさせる」「その気にさせる」ということがいかに重要か。

そういうことなんだろうな、と思います。
高圧的であったり、威圧的であったり、否定的であったり・・・・。それじゃあ、妊娠してもらえるケースでさえ福の神が逃げていくと僕は本気で思っています。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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