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子宮腺筋症合併不妊(2)

まずご紹介しておきたいのは、本年(2014年)の「日本エンドメトリオーシス学会誌」に載っております、こちら。です。
日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会が「子宮腺筋症合併不妊の不妊治療」について、日本全国の医療機関にアンケート調査をした結果が記載されています。
「結果」の「1.子宮腺筋症合併不妊症の管理方針」というところを見てみましょう。
  • 子宮腺筋症の治療は行わず、不妊治療を行う:16.8%
  • 薬物療法を先行後に不妊治療を行う:5.8%
  • 手術を先行後に不妊治療を行う:2.6%
  • 管理方針が決まっていない:67.1%
とのことです。
そんなわけで、全国の医療機関的にも混沌としているわけです。
これはつまり、今の所、「ガイドライン」とか「エビデンス」と呼べるような質の高いデーターが出そろっていない、ということを示しているわけです。


ではもう一度、「子宮腺筋症とはなんぞや?」というところから入って行きたいと思います。

【定義】
子宮筋層内に子宮内膜様組織(腺および間質)が存在あるいは増殖している病態


とあります。
本来は、子宮の筋肉の部分には内膜組織は無いのが普通なのですが、なんでか理由はよくわからないけど、筋肉の部分に内膜組織ができてしまった病態、というわけです。
このように聞くと、ピンとくる方もいらっしゃるかも知れませんね。そう。子宮内膜症と似ていますね。
  • 子宮内膜症は、卵巣をはじめ、子宮以外に子宮内膜組織ができてしまった病態
  • 子宮腺筋症は、子宮筋層に子宮内膜組織ができてしまった病態

確かに似ています。
なので、僕が学生の頃は子宮腺筋症の事を「内性子宮内膜症」などと教わりました。

でも、腺筋症と内膜症は確かに似ている部分もあるし、事実合併することも多いのですが、異なる部分もあり、現在では異なる病態ではなかろうか?という考えが主流だと思います。
というか、「子宮腺筋症」という病態の中にも、いくつかのサブタイプが存在するのではなかろうか?と考える先生が多いようです。
実際僕も診療に当たらせていただく上で、(頭の中では)4つのパターンに分類して考えています。

【症状】
それこそほぼ無症状で、例えば検診などでたまたま見つかる方もいらっしゃれば、もう、「劇症」と表現しても言いすぎでは無かろう、という方まで、非常に幅が広いです。
典型的には「痛み」と「出血」が問題となります。

で、「不妊」は?というと、これがまた関連があるのかどうかが非常に歯切れが悪いです。
今日現在の認識は、「恐らくあると思う」といった程度だと思います。
なので、「子宮内膜症不妊」というのはよく目にしますが、「子宮腺筋症不妊」という言葉は目にしたことが(今のところ僕は)ありません。
「子宮腺筋症合併不妊」という上手な(?)表現を目にすることが多いです。

なぜ、「子宮腺筋症」が「不妊原因」となっているのか?いないのか?がそんなにグレーなのかというと、いくつか理由が考えられます。

まず、純粋に「子宮腺筋症のみ」という方が多くは無いのですね。
「子宮腺筋症」の方は、内膜症を合併していたり、筋腫を合併していたり、という方が多い。
で、その方が不妊だと、不妊原因は「内膜症が原因ではないのか?」「筋腫が原因ではないのか?」と言われてしまう訳ですね。
純粋に「病気のない方」v.s.「腺筋症のみの方」という比較試験がなかなか組めない。
この辺の苦労が大変のようです。
後々御紹介する論文も「内膜症かつ腺筋症」v.s.「内膜症のみで腺筋症なし」なんて比較試験が行われており、この辺の苦労がにじみ出ております。

で、「それ、本当に腺筋症だと断言できるの?」という問題もあります。
子宮腺筋症の確定診断は、摘出検体の病理検査、すなわち組織の顕微鏡検査であり、厳密には術後診断になるわけです。
で、このハードルが高い訳です。
例えば、「超音波で腺筋症と思われた患者を対象にした」とすると、そもそも、「その診断精度はどんなもんなの?誤診ないの?」となってしまうわけです。
なので、実際の論文を読んでみると、この辺も非常に苦しい説明がなされています。
「超音波診断のベテランのドクターが診断した」とかね。

そんなこんなで、「正常子宮」v.s.「腺筋症」という研究デザインがなかなか難しい訳です。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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