Entries

皆様が戻したその卵、染色体が正常である確率は何%か?(10)

今日より始まるシリーズは、PGS(着床前受精卵遺伝子スクリーニング)の内容について触れています。
僕の目的(管理人の意図する所)は、あくまで、
「不妊で悩まれている方々の毎日の不安・苦しみに対し、微力であっても、ほんの少しでも何かの足しになれたなら嬉しい」
という、僕の勝手な思い込みです。
つまり本ページの意図は、純粋に、不妊で悩まれている方々のみを対象に海外で行われたPGSの結果のデーターを紹介させていただきたいだけです。
PGSの是非論を論じているわけではありませんし、論じるつもりも毛頭ありません。
またその議論に参加する意図も全くありません。
以上、くれぐれもよろしくお願いいたします。


復習しておきます。
日本では(倫理的問題があり)行われていませんが、世界的には体外受精により出来た胚を、先に染色体を調べて、正常であることを確認してから胚移植をする(逆にいうと染色体異常胚を移植しない)、という方法が広く用いられています。
これをPGS(着床前受精卵遺伝子スクリーニング:Preimplantation Genetic Screening)と言います。

で、それは即ち、普通の体外受精のスケジュールでの、各々の胚の染色体がわかるようになってきているというわけです。

前回取り上げた内容は、こちらにまとめてあります。(1)では、「同じ1個の胚盤胞が出来た」と言っても、その胚の染色体が正常である確率は、女性の年齢により全く異なるのだ。30歳の方の胚盤胞と40歳の方の胚盤胞を同等に評価することはできないのだ。
(2)では、皆さんが一喜一憂している胚の形態評価(Gardner分類)というのは、まあ、確かに多少傾向はあるのは確かなようだが、染色体異常の有無を判断するには力不足で、どちらかというと、胚の性別の影響の方が強いのではないか?
といった内容が科学的に見えてきているのだ、というお話をしました。

この内容は、ご覧いただいた皆様にも大分インパクトが大きかったようです。
僕個人的にも、このPGS系の論文を読んでしまうと、なんだか日頃、「皆さんのご期待に何とか応えたい!」と思ってやっている行動が、なんだか見透かされている感じ、というか、無力感?非力感?というか、
「知らず知らずにこんなにも無効なETをしちゃっているんだ」
という感じになってしまい、あまり好きではないのですが、ご覧いただいている皆さんにはご好評(?)をいただいているようですので、もう少し踏み込んでみたいと思います。

で、今日からご紹介する論文は、2014年(つまり今年)にHuman Reproductionに載ったこちら。です。
この論文は、無料で皆さんご覧いただけると思います。
リンク先のPubMedのページの右上の「FULL FINAL TEXT」というアイコンをクリックしてください。
で、中央の列にある「Full Text (HTML)Free」なり「Full Text (PDF)Free」をクリックすると、HTMLなりPDFで論文を見ることが出来ます。(あ、もちろん英語です。あしからず。)

この論文も読んでしまうと orz になってしまいます。
僕がこの論文読んだ感想は
「え?染色体が正常な胚盤胞をETしても、赤ちゃんまでたどり着いてくれる確率って、こんなに低いの?orz」
でした。

では、行きます。
まずバックグラウンド。
  • 213人ののべ223のICSI周期で得られた956個の胚盤胞の染色体を検査した。
  • 培養は、拡張期胚盤胞になるまで、~day7まで施行した。
  • 女性の平均年齢は37.8才。
  • で、この956個の胚盤胞のうち、染色体が正常であったものは425個(44.5%)。
とのことです。

【形態分類(Gardner分類)と染色体の関係】

で、胚盤胞を例のごとく5AAだの4BCだの形態分類するわけです。
で、その形態分類がどの程度染色体とリンクしているのか?というデーターです。
(これは、「PGS(2):胚の「見た目の評価」、その実力はいかほどか?」と同じ主旨の検討ですね。)

この論文では、
  • Excellent:3~6AA
  • Good:3~6ABまたはBA
  • Average:3~6BBまたはACまたはCA
  • Poor:それ以外
と定義しております。
で、そのPGSの結果が下の図(論文内ではFigure3)のAです。

色の一番薄い「Euploid」というのが染色体が正常であった、というわけです。
  • Excellentで56.4%
  • Goodで39.1%
  • Averageで42.8%
  • Poorで25.5%
ですね。
ということで、やっぱり確かに形態のいい方が染色体正常である確率が高い傾向にはあるようですが、その傾向は弱いわけです。
で、逆にいうと、染色体異常がある胚でも、普通に○AAとか○ABとか、ここでいうExcellentとかGoodになれるわけですね。
さらには、「Poor」な胚盤胞でも、結構な割合で染色体が正常なわけです。
「グレード悪いから今回はダメだと思う」
とかいう話を聞きますが、そうした「気の持ちよう」こそが悪い結果に結びついてしまうのだ、というデーターを多数お示ししてきましたね。
そういう意味では、もう、胚のグレードは聞かないようにした方がいいのかも知れませんね。
(僕もペラペラ喋っているのですが・・・・・。もうやめようかな・・・・・・。)

さらに、「拡張期胚盤胞」に到達したのは、Day5で66.8%、Day6で30.8%、Day7で2.4%だったそうです。
で、各々何%が染色体が正常だったか?が同じ図のBです。
同様に色が一番薄いのが「Euploid」、つまり染色体が正常であった、ということですね。
  • Day5で到達したものは46.6%が正常
  • Day6で到達したものは39.8%が正常
  • Day7で到達したものは43.5%が正常
とのことです。

要するに、拡張期胚盤胞になるスピードと染色体正常率にはあまり関連がなさそうだ、というわけですね。
これもたしかどこかでやりましたね。
性染色体がXXなのかXYなのかでスピードが違うようなので、どちらかというと、そちらの因子の方が大きく、染色体異常の割合ではあまり影響されているわけではなさそうだ、というものでした。



では、今日の内容はここまで。
次回、「染色体正常胚の着床率」行きます。
請うご期待!

【続く】
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://dokumotti.blog.fc2.com/tb.php/342-d62ed2f4

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

カウンター