Entries

抗精子抗体(精子不動化抗体)のページに向けての習作(1)

ということで、ふと気が付けば、HP「妊活外来へようこそ」に抗精子抗体(精子不動化抗体)のページが無いことに気が付きました。
そんなわけで、抗精子抗体のページを作ろうと思いますが、当然その根拠となる論文を読む必要がありますので、「習作」と名付けて、論文を何本か読んで行こうかと思います。

で、今回は、「生殖医療の必修知識」に記載されていた、抗体価(SI50)により高抗体価/中抗体価/低抗体価と分類をし、その治療方針を変えるのだ、という記載の根拠として提示されていた論文を読んでみたいと思います。
1990年と古い論文なのですが、こちら。です。
以下論旨箇条書き。

【研究背景】
・精子不動化試験(SIT)陽性であった96人を後方視的に検討
・不妊治療に当たり、AIHは『通常AIH』か『反復AIH』で施行した。
・『通常AIH』は射出精子を液化後、0.5mlを子宮内に注入し、0.5mlを腟円蓋に注入した。
・『反復AIH』は『通常AIH』に加え、その3時間後に再度0.5mlの精液を子宮内に注入した。

(管理人注:今では精液を直接子宮内に注入するAIHというのは行われないと思いますが、一昔前は行われていました。管理人も研修医の頃、先輩が液化精液をそのまま子宮内に注入しているのを見たことがあります。)
・『反復AIH』のみで治療したのが30人、周期によって『反復AIH』だったり『通常AIH』だったりと両方を行ったのが19人、『通常AIH』のみで行ったのが47人
・AIHで妊娠に至らなければIVFを行った
・各々定量的SITでSI50で抗体価を評価した。
・GroupA:高抗体価群(常にSI50>10)
・GroupB:中抗体価群(SI50が10周辺を行ったり来たり)
・GroupC:低抗体価群(常にSI50<10)
【結果】
・23人が妊娠した。
・GroupA(高抗体価群)では、IVFを行った18人中4人が妊娠したが、AIHで妊娠した人はいなかった(『通常AIH』で29人、『反復AIH』で20人がtry)
・GroupB(中抗体価群)では、IVFを行った9人中6人が妊娠。『反復AIH』で17人中3人が妊娠。『通常AIH』で17人中2人が妊娠。
・GroupC(低抗体価群)では、IVFを行った9人中4人が妊娠。『反復AIH』で12人中3人が妊娠。『通常AIH』で20人中1人が妊娠。
・ちなみに、妊娠中、ほとんどの女性で抗体価が低下した。
【考察】
・今回の結果から、高抗体価群(SI50が常に10以上)では、AIHでは妊娠成立しなかった。
・逆に、SI50が10を下回る群(中抗体価群なり低抗体価群)では、AIHで妊娠成立する可能性がある。
・よって、精子不動化抗体を有する女性では、その抗体価を定量し、治療方針を決定する必要がある。


という論文でした。
で、この『反復AIH』というのは、おそらく、最初に注入した精子で、女性生殖管内に存在する精子不動化抗体を中和させて、2回目で注入する精子に精子不動化抗体の悪影響が及ばないようにしよう、という発想なのでしょうね。
「生殖医療の必修知識」の中では

治療成績は通常のAIHよりも、反復AIHの方が良好と考えられている。

という表現がなされています。
そんなわけで、抗精子抗体(精子不動化抗体)陽性なら即体外か?というと、そんなことは無く、必ず抗体価を評価しましょう、と。
で、高抗体価群なら即IVFでいいのですが、そうでないなら、AIHをtryしてみる価値はある、というわけですね。
スポンサーサイト
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://dokumotti.blog.fc2.com/tb.php/366-3269de8b

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

カウンター