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TESE(精巣内精子回収法)の歴史を復習しておく(3)

そんなわけで、ICSIが報告された翌年(1993年)にはTESE-ICSIが報告され、2年後の1995年には非閉塞性無精子症(NOA)でのTESE-ICSIが報告されているわけです。

そんなわけで、非閉塞性無精子症(NOA)であっても、精巣内精子を得ることにより妊娠を目指すことが出来るようになってきたわけですが、この後、「いかに非閉塞性無精子症(NOA)例からの精巣内精子回収率を上昇させるか?」という方向に話が進みます。
非閉塞性無精子症(NOA)では全例で精子を回収できるわけでは無いわけですが、なるべく高率に精子を回収できる方法を探そう、というわけです。

当初は「multiple-TESE」という報告が見られます。
即ち、NOAでは、simple-TESEで一か所から採取するよりは、数か所から(multiple)採ってきたほうが精子が存在する確率が高くなるよ、というわけです。
ま、そりゃそうですね。
NOAでは、造精能が局在していることが多いです。
睾丸内全体で均一に造られているわけでは無く、精子を造っている場所がまだらに点在しているわけです。

一般の方でもイメージし易いように、比喩で表現してみましょう。
日本地図における「都市と地方」をイメージしてみてください。
そして、「都市」だけで精子が造られていると考えてください。

この状態で、適当に一か所だけ選んだ場合(simple-TESE)、たまたまそこが「都市」であれば精子が回収できるわけですが、「地方」の場合もある。
外れることも多いわけです。

だったら、「複数個所」選べば(multiple-TESE)、どれかには「都市」が混ざってくるんじゃないか?という発想なわけです。
これならば確かに、精子が造られている「都市」が採取できる確率は高まりますね。
でもまだ問題があります。
採ってきた全部が「地方」になってしまう可能性も残されますね。
かつ、本来なら採取されなくてもいい「地方」が無駄に採取されてしまうわけです。
術後の精巣機能低下(特に男性ホルモン分泌能低下)が問題となります。

では、この「都市と地方が入り混じった日本地図」から効率よく「大都市」だけをピックアップできる方法はないか?
どうすればいいですか?
東京か大阪とか名古屋とか・・・(これ以上書くと「何でうちの街は?」と怒られそうなのでこの辺でやめときます)だけを拾い上げたいわけです。
例えば「夜の電気がともっている場所が示されている地図」とか見たことがありますよね。
東京か大阪とか名古屋とか・・・・が明るく輝いている地図です。
あんなイメージ。
あの地図で明るく輝いている場所だけを選べば、効率よく大都市が選べますね。

これを実際にNOAの睾丸でやってのけたのが、男性不妊の世界的権威、シュレーゲル先生です。
シュレーゲル先生は、NOA患者さんのTESEをするときに、手術用顕微鏡を導入しました。
手術顕微鏡でNOAの方の精巣内を見ると、精細管(という精子が入っている管)の太さに差が認められます。
この精細管の特に太くて白い部分だけを選択的に選べばいいんじゃないか、という発想なわけです。
まさに、「夜、電気が煌々と灯っている都市」だけをピンポイントで選ぼう、というわけです。
シュレーゲル先生はこの方法をmicrodissection-TESEと名付けました。
(MD-TESEとかmicro-TESEと省略されています。)
その論文は、僕も何度も読み返したこちら。1999年に発表された、この分野での超有名なランドマーク論文です。
MD-TESEの登場により、実際に精子回収率は上がり、逆に精子のいなそうな部分を採取しなくて済むようになった、というわけです。
凄いですねぇ。
これが今日のTESEの現状につながっています。

そんなわけで、TESEの歴史をざっと見てきました。
なにやら「モグタン」みたいになっちゃいました。(←知ってますか?知っている方は多分同世代です(笑)。知らない方は・・・ググってください!)

ちなみに、ICSIのパレルモ先生とMD-TESEのシュレーゲル先生は、ともにニューヨークのコーネル大学にいらっしゃいます。
そこでNOAの患者さんご夫婦がMD-TESE-ICSIをすると、日本円で・・・。
止めておきましょう。


では、今年の更新はこれでお終い。
皆様、良いお年をお迎えください。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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