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ICSI反復不成功例に・・・(5)

では、この論文の考察行ってみたいと思います。
  • 報告した4症例から考えると、たとえ射出精液中に精子が存在していたとしても、精巣内精子を使用したほうがいいケースが存在すると考えられる。
  • 今回の4症例に共通していたのは、射出精子によるICSIの結果、胚の質がpoorである周期が複数回続いている点である。
  • 男性不妊の一部には、射出精子によるICSIで治療するのが困難な病態が存在するのかもしれない。
  • 精子へのダメージは、精子が精巣を離れた後、精細管から精巣上体を経由する過程で起こっている可能性がある。
  • よって、精巣内精子を使用すれば、このダメージを回避できるのかもしれない。
  • 事実、精子のDNA断片化率は、射出精液内の精子より精巣内精子の方が低いという報告があるし、DNA断片化率の高いカップルでは、精巣内精子を用いることで、着床率が上昇するようだ。
  • 精子細胞ないしは精子がセルトリ細胞から離れると、通常の細胞死経路とは異なった(管理注:「本来死ぬ運命にない細胞が殺される」という意味だと思います)DNA断片化に直面することになり、それは、どうやら、活性酸素種のようだ。
  • 閉塞性無精子症の患者では、精巣内精子に比べ、精巣上体精子の方がDNA断片化率が高いことが知られている。
  • よって、精巣内精子を使用する、ということは、精子が輸送中に受けてしまうダメージを受ける前の、より「健康的な」(←原文では"healthier"という単語が使われています)精子を選択できるようになる、ということなのかもしれない。

という論文でした。
僕も常々思うのですが、「卵子の質」というのを動かすのは現状なかなか難しいわけですが、「精子の質」を改善できる猶予はある可能性があるわけで、そのいい例だと思い、ご紹介してみようと思った論文でした。

エビデンスがあるのかは知りませんが、例えば初期流産を繰り返す場合とか、生化学的妊娠を繰り返す場合とか、本当に嫁さん(女性)の方ばっかり検査してればいいんかいな?
睾丸診んでいいんかいな?
・・・・独り言です。聞き流してください。

ただし、
「じゃあ、全員が全員、最初から精巣内精子でICSIすればいいじゃん」
というのは、overtreatmentなわけで、
「じゃあ、全員が全員、最初から帝王切開でお産すればいいじゃん」
「じゃあ、全員が全員、挙児希望がなくなったら卵巣切除してHRTすればいいじゃん」
という理屈と同じレベルの議論ですわな。

不妊治療の経過が思わしくない。その場合、女性の方ばかり目が行きがちですが、男性の方に解決の糸口があるのかもしれません。
そういう意味でもいい論文だと思いました。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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