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ICSI反復不成功例に・・・(6)

そんなわけで、射出精液中に精子がいたとしても、ARTが反復不成功となる例のうち一部は(全員ではない!!)、精巣内精子を使用すれば解決しうるのかもしれない、その理由はDNA frangentationが射出精子>精巣内精子だからなのかもしれない、という話でした。

「じゃあ、全員が最初から精巣内精子でICSIすればいいじゃん!」

一見そうなりそうですが、こんな面白い論文もあります。以下、この論文の論旨の箇条書きをしてみます。
  • DNAの損傷度が高いケースでは、その状態に対して、いくつかの解決策が提唱されている。
  • そのうちの一つが抗酸化剤である。
  • 複数の抗酸化剤が、中等度のDNA損傷の状態に対し改善効果があることが示されている。
  • 射出精子に比べ、精巣内精子もDNA損傷率が低いことが知られている。
  • 逆に、精巣内精子は染色体異常である確率が高い可能性も示唆されている。
  • 今回、DAN損傷率が高い患者群において、精巣内精子と射出精子の染色体異常の頻度を検討してみた。
  • 今回の患者群(n=8)では、DNA損傷精子の比率は、射出精子の方が精巣内精子に比べ3倍多かった。(精巣内精子 14.9±5.0%、射出精子 40.6±14.8%)
  • このように、DNA損傷率は低いものの、染色体異常を有する精子比率は精巣内精子で優位に多かった。(精巣内精子 12.42±3.7%、射出精子 5.77±1.22%)
  • この研究の結果から、精巣内精子が染色体異常を有する確率は射出精子に比べ高いといえる。
  • これはつまり、染色体異常を有する精子を不活化するための生理的なメカニズムとして精子DNA損傷の機序が利用されているのかもしれない。
  • よって、ICSIに精巣内精子を用いるというのは、DNA損傷率を低下させる、という意味では好結果につながる可能性があるが、一方で、その利点は、精巣内精子は染色体異常である率が増す、という点で打ち消されてしまうのかもしれない。

ということで、
DNA損傷率を下げる、という意味は好結果になるかもしれないが、染色体異常を増やしてしまうのかもしれない。
染色体異常の精子を淘汰する、という意味では、精巣外での「精子にダメージを与えるメカニズム」は生理的に必要な過程なのかもしれない。

というわけです。
そんなわけで、精巣内精子を用いるのは「両刃の剣」「肉を切らせて・・・」的な意味があるようで、何でもかんでも精巣内精子とはならない、というわけです。
射出精子でケリがつくなら、やっぱりそのほうが好ましい、ということなのでしょう。

そんなわけで、このシリーズ、いったんお仕舞にします。
卵子の質は問題ないはずなのに、通常のICSIでどうにもARTの過程が好転しない、という場合には、精巣内精子の利用、というのも一つの選択肢になりうるのかもしれない、という話でした。

こんな感じで、「精子の質」見直してみてください。
いい解決策に巡り合えるかもしれません。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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