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子宮内膜症性卵巣嚢腫核出術後の卵巣予備能

子宮内膜症性卵巣嚢腫核出術が術後卵巣予備能を酷く低下させる可能性があることは、現在産婦人科臨床上は周知の事実となっております。
そして、少なくとも「不妊症(=妊孕能)」という意味では、子宮内膜症に対する手術は以前考えられていたほどのpriorityはどうやらなさそうだ、という方向性になってきている感があります(必要な人には必要ですが)。
一方で、過去に子宮内膜症で核出術を受け、卵巣予備能が低下した状態で不妊治療に臨まれる方がいらっしゃるわけですが、こうした方の治療成績が、これまた非常に厳しいわけです。

そんな状況下、今年のHuman Reproductionになかなか面白い論文が載っています。です。
つまり、同じ卵巣予備能低下状態でも、「内膜症核出術後」と「突発性」ではIVFの成績が違うのではないか?という視点で検討した、という論文です。
以下、論旨を箇条書きしてみたいと思います。
  • 子宮内膜症性卵巣嚢腫核出術後の妊孕性低下の原因としては、以下の3つが考えられている。
    • 手術時、正常卵巣部分まで切除されてしまう。
    • 手術操作(特に止血操作)による残存正常卵巣への血流障害。
    • 術後、自己免疫性反応による卵巣局所炎症。
  • 子宮内膜症性卵巣嚢腫核出術後のIVFの着床率・妊娠率はさほど改善しない。
  • 今回我々は、「子宮内膜症手術後の卵巣予備能低下」v.s.「突発性卵巣予備能低下」でIVFでの出生率を比較してみた。
  • 【グループA】:内膜症核出術後の卵巣予備能低下群 51人(125治療周期)
  • 【グループB】:特発性の卵巣予備能低下群 116人(243治療周期)
  • 各々「ロング」「ショート」「アンタゴニスト」の何れかで排卵誘発
  • 治療キャンセル率:【グループA】 12.0% 【グループB】 6.2% (有意差あり)
  • 卵巣刺激期間:【グループA】 10.6±2.8 【グループB】 9.9±2.4 (有意差あり)
  • ゴナドトロピン使用量:【グループA】 2881±1111 【グループB】 2526±795 (有意差あり)
  • 16mm以上の卵胞数:【グループA】 3.0±2.3 【グループB】 4.9±2.4 (有意差あり)
  • 受精率:【グループA】 65.7% 【グループB】 47.2% (有意差あり)
  • day2またはday3で質の良い胚の数:【グループA】 9.7% 【グループB】 12.9% (有意差なし)
  • 移植胚数:【グループA】 1.7±0.5 【グループB】 1.7±0.5 (有意差なし)
  • 着床率:【グループA】 7.2% 【グループB】 13.5% (有意差あり)
  • 臨床的妊娠率:【グループA】 11.2% 【グループB】 20.6% (有意差あり)
  • 出生率(治療周期当たり):【グループA】 7.2% 【グループB】 16.9% (有意差あり)
  • 出生率(ET当たり):【グループA】 8.7% 【グループB】 18.8% (有意差あり)
  • 同じ「卵巣予備能低下」でも、内膜症核出術後のIVFの成績は有意に悪い。
  • この原因は①得られた胚の質が悪い②内膜の着床能が低下している、可能性がある。
  • 今後妊娠を考えている、無症状の子宮内膜症性卵巣嚢腫を有する女性に手術をすべきかどうか?については合意形成に至っていない。
  • 手術は、自然妊娠成立には有効なのかもしれないが、卵巣予備能への影響も考慮しておく必要がある。

といった内容となっております。
つまり、子宮内膜症性卵巣嚢腫核出術後の卵巣予備能低下は、特発性の卵巣予備能低下の人と比べて、(少なくともARTの成績、という点では)分が悪い、ということになります。

確かに僕も内膜症術後の卵巣予備能低下している方のARTを担当させていただくことがありますが、苦戦するわけです。
内膜症性卵巣嚢腫、どう扱うか?手術すべきか否か?の判断。手術するなら、その手術の「fineさ・sharpさ」の重要性。
特に今後reproductionが控えている女性に相対するときには、慎重にも慎重な判断が求められているようです。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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