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子宮内膜症と着床障害(1)

子宮内膜症の方の不妊治療は結構苦戦をするわけです。
メインの病態は骨盤内癒着(卵管周囲癒着)による卵管機能不全(いわゆる「ピックアップ障害」)なのでしょうが、本当にこれだけが原因なら、体外受精をすれば解決をするはずですが、これがまたなぜか内膜症の方の体外受精の成績が振るわないわけです。にも出てきました通り、同じ卵巣予備能の方と比べても、内膜症の方の体外受精の成績は非常に悪いわけですね。
その原因として、
  • ①得られた胚の質が悪い可能性がある。
  • ②内膜の着床能が低下している可能性がある。
と考察されているわけです。
「得られた胚の質が悪い」というのは、例えばチョコレートに接していたり、手術で血液の流れが悪くなったり、手術で止血目的に焼かれたりで、いかにも「卵子に悪そう」なわけですが、その一方で「内膜の着床能が低下している可能性」というのがピンとこないわけです。
「子宮内膜の着床能」が何で「内膜症」によって影響されるのでしょうか?
不思議でしょ?
これ、ちょっと難しいのですが、なかなか面白い説が提唱されているので、なるべく噛み砕いて解説してみたいと思います。

【内膜症の発生仮説】
子宮内膜は、本当は子宮内腔のみに存在する組織なわけですが、子宮内膜「症」は、なぜか、その子宮内膜組織(正確には子宮内膜「様」組織)が子宮内腔以外に存在する状態なわけです。
典型的には(本来、子宮内膜組織は存在しないはずの)卵巣に子宮内膜「様」組織ができてしまうわけです。
で、この、卵巣に何でかできてしまった子宮内膜「様」組織から、月経時に出血してきて、貯留してしまったものが「チョコレート嚢腫」なわけです。

では、なぜ、本来、子宮内膜組織が存在すべきでない卵巣などに、子宮内膜「様」組織ができてしまうのでしょうか?
これには、有名な2つの説があります(医学生が大学で勉強するレベルです)。

①子宮内膜移植説(サンプソン仮説)
月経中に月経血が卵管を通りお腹の中に入って行ってしまうのですが、その月経血内に混ざっている子宮内膜細胞がお腹の中に飛び散って生着するのではないか?という説です。

②体腔上皮化生説
①の月経血の逆流のみだと、どうやっても月経血が辿り着かない場所に内膜症ができてしまう場合の説明がつかなくなるのですね。例えば肺など。
で、この「化生説」は、「内膜症が発生しうる組織には、そもそも子宮内膜組織を作り出せるポテンシャルがある」と考えます。で、何らかの刺激(例えばエストロゲンへの暴露など)によって子宮内膜「様」組織ができてしまうのではないか?という説です。

これらの説は各々非常に有力なのですが、基本的には全員が内膜症になりうるはずです。
例えば、姉妹発生例や、僕も拝見したことがあるのですが、3姉妹が全員内膜症の方など、「たまたま運が悪かった」と説明するには苦しいケースがあり、やっぱり何か他に「内膜症になりやすい因子」があるのだろう、と考えられるわけです。

【続く】
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コメント

[C170] Re: タイトルなし

日常診療では問診、内診、超音波、採血、MRIなどで診断していきます。
(ただし「定義通り」の診断には腹腔鏡などの手術操作が必要になってしまいますが)
内膜症に限らず、生理痛は上手にコントロールするとQOLが改善する可能性がありますので、一度診察を受け、ご相談なさるのがよろしいかと思います。
  • 2015-04-25 09:03
  • どくさま改め「いわもと」
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  • 編集

[C169]

こんにちは。
内膜症かどうかの判断はどのような方法がありますか?生理痛が酷い等感覚的なことも含まれますか?
基本的なことを質問してしまい、申し訳ありません。

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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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