子宮内膜を傷つけて、着床障害を克服する?(7)
久々にこの話題。
えっと、過去のまとめはこちら。
- 子宮内膜を傷つけて、着床障害を克服する?(1)
- 子宮内膜を傷つけて、着床障害を克服する?(2)
- 子宮内膜を傷つけて、着床障害を克服する?(3)
- 子宮内膜を傷つけて、着床障害を克服する?(4)
- 子宮内膜を傷つけて、着床障害を克服する?(5)
- 子宮内膜を傷つけて、着床障害を克服する?(6)
さて、開院3か月の当院でもARTが始動し始めておりまして、スケジュールにこのステップを組み込ませていただいております。
・・・お許しください m(_ _)m
で、上記(5)に2012年のコクランの記載について触れてありますが、今年、この項が改訂され、2015年版となっているので確認しておきたいと思います。です。
では、以下、論旨。
【Background】
- ARTにおいて、子宮内膜に胚が着床するというステップは重要であり、故意に子宮内膜にダメージを与えるとART周期において妊娠率が上昇することが示唆されている。
- 14の研究報告を総括した。これは、子宮内膜を傷つける群1063人とコントロール群1065人からなる。
- このうち13の報告は「子宮内膜を傷つける」治療を、胚移植の前の周期のday7~胚移植周期のday7に行っていて、残りの報告は採卵当日に行っている
- 前の周期のday7~胚移植周期のday7に行っている報告では「傷つけた」群で出生率で1.42倍と有意差をもって上昇していた。
- これは言い換えれば、何もせずに26%の出生率だったとすると、内膜を傷つけた後のETでは、出生率が28%~48%になるということだ。
- 流産率は「傷つける群」v.s.「何もしない群」で変化はなかった。
- 同様に、臨床的妊娠率だと1.34倍に有意差をもって上昇する。
- これは、何もせずに30%の臨床的妊娠率だったとすると、内膜を傷つけた後のETでは、臨床的妊娠率が33%~48%になるということだ。
- 子宮内膜を傷つける行為は痛みを伴う、但し、このエビデンスは非常に質が低い。
- 過去に2回以上ET経験のある女性では、子宮内膜を傷つける治療を胚移植をする前の周期のday7~胚移植をする周期のday7に行うと、臨床的妊娠率、出生率は上昇する。
- この過程は、mildlyな痛みを伴う
というわけで、前の周期のday7~ET周期のday7のどこかで行うのがいいわけです。
関係があるのかないのか、確かに子宮鏡などなど子宮内操作をやった周期そのままに妊娠なさる方がいらっしゃるわけですが、これが関係しているのかなぁ?などと思うこともあり、はたまた偶然なのか?
一方で、例えばAIHは「固い」カテーテルでやろうと「柔らかい」カテーテルでやろうとあまり変わらない、とあります。でも、今回のコクランの書き方からすると、なるべく内膜に愛護的に行った方がよさそうな雰囲気ですよね。
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