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自然周期に育ってきた卵は本当に「最良」なのか?(2)

卵子(受精卵)の「質」とは何か?
必要十分条件かどうかは別として、「染色体が正常である」ということが必要条件であることはおそらく異論ないところだと思います。

で、今回ご紹介してみたいのは、こんな論文です。

この論文は、卵子提供プログラムで、提供者に
①まず初回、自然周期で採卵
②次いで2周期目、Long法で排卵誘発して採卵
して各々できた受精卵の染色体を調べてみた、
という論文です。

多少「荒っぽい」のですが、同一人物の「自然周期」と「排卵誘発周期」を比べているという、非常に興味深い論文です。
  • エントリーされたのは、「自然周期で採卵した卵子で受精卵のPGSができて」かつ「引き続きLong法での排卵誘発周期で採卵した卵子で受精卵のPGSが、最低でも1個できた」人=46人
  • PGSはday3にFISH法で13、15、16、17、18、21、22、性染色体を調べた。
ということです。
で結果は、

自然周期では46個中16個(34.8%)が染色体異常、排卵誘発周期では303個中123個(40.6%)が染色体異常で、これらには有意差がない。

ということで、

Moderate ovarian stimulation in young normo-ovulatory women does not significantly increase the embryo aneuploidies rate in in vitro fertilization-derived human embryos as compared with an unstimulated cycle.
(若く、正常に排卵している女性では、体外受精に供された受精卵の染色体異常の割合は、中等度刺激周期で、自然周期と比べ、有意に上昇するということはない。)


と記載されています。

因みに、刺激周期では、周期当たり平均3.9個の染色体正常胚が得られた、とのことです。
自然周期では、周期当たり30/46=0.65個ということになりますね。)


全ての染色体がチェックされていない、など、ツッコミどころがたくさんあるのも事実なのですが、ま、その辺も加味しつつどう評価しますかね?
  • 自然排卵法で毎回1個の卵胞で10回採卵した。
  • 低刺激法で毎回2個の卵胞で5回採卵した。
  • 高刺激法で10個の卵胞に1回採卵した。
どれも10個の卵胞にアプローチしているわけです。
この10個の卵子からできる胚の染色体正常率がどれも同じだとしたら、どうですかね?

低刺激法は「薬をなるべく使わない」という意味で、「安全で体に優しい」という意見は一理あると思います。
ただし、その「薬をなるべく使わないという意味で安全で体に優しい」低刺激法を選択したがゆえに、体外受精のステップで最も強侵襲な「採卵」を繰り返すことになっていたら、逆に危険極まりないことなのかもしれません。
「採卵」はあくまで「手術」ですから。

コストの面ではどうですかね?
時間の面でもどうですかね?
同じ価値の10個の卵胞へのアプローチだったとすると・・・・。
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コメント

[C265] Re: こわいです

医者たるもの、最低限「科学的なjudgement」に従う心を捨ててはいけませんね。
偉い先生のお言葉を過去に紹介したページがあります。
ご参照下さい。

http://dokumotti.blog.fc2.com/blog-entry-283.html
  • 2016-09-02 08:37
  • ドクターI
  • URL
  • 編集

[C264] こわいです

とっても分かりやすい記事でした!

排卵誘発は身体に毒だと刷り込むクリニックは一体なんなのでしょうか?
妊娠に至るまでの一人当たりの採卵回数を増やす為ににそう言ってるのでしょうか?(言葉が悪いですが、金儲けの為なのでしょうか?)
それとも本気で、身体に毒だと思ってるのでしょうか?

もちろん誘発剤が身体に合わない方も中にはいらっしゃるだろうけど、本当に「毒」でしたら、刺激で採卵された卵子で産まれた赤ちゃんはその毒によって、障害などが明らかに増えたりしますよね。。。

刺激をすれば複数個採卵できそうな患者さんにも自然周期採卵を徹底的にこだわる病院の本音を考えると怖くて仕方ないです。

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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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