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プロラクチン道、始めます!(13)

で、現在どのように考えられているのか?というと、こんな感じです。
絵を借りてきました。クリックすると拡大されるかと思います。
(出典はSimonneauxら、Front Neurosci 2013)


青いのが視床下部にあるGnRHニューロンです。僕が「メトロノーム」と比喩している月経周期を作っている細胞ですね。
で、その下の黄色?オレンジ?の細胞が、下垂体のFSH/LHを分泌する細胞です。
で、その下のピンクの「Gonads」と書かれているのが性腺、つまり精巣/卵巣なわけです。
この関係が「視床下部-下垂体-性腺系」と呼ばれている流れです。
ここまでは、多分高校の生物で習う内容ですね。

で、青の「GnRHニューロン」の上に、赤で「キスペプチンニューロン」と書かれた細胞があります。
これも神経細胞です。(2個書かれているのにも重要な理由があるのですが、とりあえずは無視してもらって結構です。僕に余力があったらまた解説します。)

大体イメージ付きましたかね?
そうなんです。
GnRHニューロンの活動を支配しているのが「キスペプチンニューロン」で、その命令を伝えているのが「キスペプチン」という物質です。
(キスペプチン自体は54個のアミノ酸より構成されているペプチドです。)
この「キスペプチンニューロン」が外部環境の変化を察知して、GnRHニューロン(=メトロノーム)の動きをコントロールして月経周期を順調にしたり、遅らせたり、あるいは無月経にしたりといったことをしているらしいのです。

どうですか!すごいでしょ!
僕なんか、このメカニズムを初めて聞いたとき、感動のあまり身震いしちゃいましたよ!

で、昨日ご紹介したマウスの実験のメカニズムも説明がつくわけです。
「高プロラクチン血症になる→キスペプチンニューロンがこれを察知する→キスペプチンを出すのを止める→GnRHニューロンのメトロノームが止まる→無月経になる」
わけです。
で、高プロラクチン血症のままキスペプチンを注射すると、GnRHニューロンがメトロノーム運動を再開するわけです。
これが昨日紹介したマウスのお話の理屈なわけです。
ね!すごいでしょう!

また絵を借りてきました。
(出典はUrsula Bら、J Clin Invest 2012)



プロラクチンがキスペプチンニューロン(ここではkiss1と書いてあります。こっちの方が正式名です)に察知されて、キスペプチンを出さなくなって、・・・という流れがきれいな絵で描かれていて、僕の好きな論文の一つです。
で、この流れで、最終的に「hypogonadism(卵巣機能低下)」になって「infertility(不妊)」になって「amenorrhea(無月経)」になるわけです

そんなわけで「月経不順」は適当に起こっているわけではなくて、こうした「キスペプチンニューロン」みたいな神経細胞が「何か」を察知しているから起こっているわけです。
僕は「月経不順」の診療も大好きなのですが、そういうわけで、「神経細胞が『何を』察知しているのだろう?」という謎解きをするわけです。

プロラクチンもその一つなわけです。

で、「月経周期が順調なのに、採血するとプロラクチン値が高い場合」に話を戻します。
このメカニズムで考えてみてください。
仮に採血でプロラクチンが高くてもキスペプチンニューロンは異常事態と察知していない
ということです。
例えばマクロプロラクチン血症。マクロプロラクチンは生理活性を持たないのでしたね。
キスペプチンニューロンはマクロプロラクチンを無視するわけです。
だから月経不順にならない。
だから治療が要らない(、と思う)。
生理的高プロラクチン血症も同じ。

ね?これが、
「月経周期が順調なのに、採血するとプロラクチン値が高い場合、それだけでプロラクチン値を下げてしまうのはおかしいと思っている。」
という理由です。

24時間365日絶えずモニタリングし続けてくれている「キスペプチンニューロン」様が
「これでいい」
とご判断くださっているのに、適当な時期にたった一回採血しただけで介入しようという考えがおこがましい。
「キスペプチンニューロン」様に言わせれば
「お前、何様だ?」
ってなもんですよね?


僕の考え間違っていますかね??

明日以降、もう少しこの「キスペプチンニューロン」の話を深めて行こうかと思います。
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Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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