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無精子症と言われたら・・・(1)

そんなわけで僕は一般産婦人科医として普通に臨床経験をし、その後、不妊治療の世界に足を踏み入れました。
一般産婦人科医として研修していたころは何らかの形で「無精子症」のご夫婦の診療に当たるのは年に1回あるかどうか、といった頻度でした。

で、その後、不妊治療(生殖補助医療)のトレーニングに行ったわけですが、まあ、そのトレーニング先が生殖補助医療に加え、男性不妊のメッカでもあったので、ほぼ毎日、どころか、1日に何組もの「無精子症」のご夫婦の診療に当たらせていただきました。
最初は抵抗感があったのも事実ですが、毎日毎日の日課になってくると、これまた奥が深く、ドラマもあり、非常に興味深い診療分野でもあるわけです。
慣れると、1秒触らせていただくだけで「閉塞性」か「非閉塞性」の予想は大体付くようになります(あくまでも「大体」です。これまたどんでん返しがあり得るところも奥が深いところです。)し、クラインフェルターも大体予想が付けられるわけです。

そんな感じで連日のように「無精子症」診療のトレーニングを受けていた時代、当時のボスから初めて「ムンテラ」を許された時のことを今でも思い返すことがあります。
(ムンテラとは「ムント・テラピー(mundtherapie)」の略で、「患者さんに説明すること」みたいな感じでよく使われている隠語、といった感じです)

一通り説明を終えて、バックヤードでボスに「どうだった?」と感想を聞かれたときに僕はこう答えました。
「カルチ(癌)の告知より難しかったです」

今でもやっぱりそれ位気を使います。
ムンテラは「閉塞性が疑われるとき」と「非閉塞性が疑われるとき」で、当然といえば当然ですが、全く異なるわけです。
生殖の可能性が完全に閉ざされる可能性のある「非閉塞性」が疑われるときの説明は、未だに緊張します。


自分で診た患者さんが、明らかに「癌」だとわかることがあります。
高次医療機関に送るわけですが、
「あなた癌です。日赤行ってね。」
これは絶対まずいわけです。
その患者さんが高次医療機関に受診するまでの時間をどんな気持ちで過ごすのか?
絶望と不安と恐怖の中でその時間を過ごさなければならなくなります

ところが、これがこと不妊の世界になると
「あなた無精子です。うちでは診れません。」
・・・これが多いのよ。困ったことに。
パニックになり絶望と不安と恐怖の中で、患者様ご夫婦は苦悩するわけです。
当然検索魔になり、MD-TESEのこと、果てはAIDのことまで思いを馳せるわけです。

で、拝見してみると、「閉塞性」だったりするわけです。
ホントにちょっとした情報提供だけでも大分違うと思うわけです。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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