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無月経、やります!(9)

こんなっしー(←すぐ感化される)

さて、今日は、予告通り「月経中のホルモン採血(基礎値)は、なぜFSH>LHなのか?」に迫ってみたいと思います。
参照する論文はこちら。です。

まず、そもそもの話。
脳下垂体からゴナドトロピン(FSH/LH)を出させるのは、視床下部のGnRHニューロンの仕事でしたね。
GnRHニューロンが、GnRHという物質を使って、下垂体に命令しているのでした。

で、この命令(GnRHの分泌)は、ず~~~っと少しづつじわじわ出し続けているわけではなく、『ぴゅっ!』と出してしばらくお休み、また『ぴゅっ!』と出してしばらくお休みみたいな感じで出るわけです。
これを「パルス状分泌」と呼ぶのでした。

(ちなみに、HP本編上で、「黄体期に一回プロゲステロンを採血して、黄体機能不全という診断を付けることは不可能である」というのを説明しましたが、その理由もこの「パルス状分泌」なのでした。えっと、です。)

で、この「パルス状分泌」の頻度、つまり、GnRHニューロンがGnRHを『ぴゅっ!』と出す頻度がポイントです。

脳下垂体からのFSH/LHを分泌する細胞は、まだ完全に詳細は分かっていないようですが、(多分)同じ細胞のようです。つまり、「FSH分泌専門細胞」「LH分泌専門細胞」と完全分業しているわけでは無いようです(ただし、分業している可能性も完全否定されてはいないようです)。
で、この「FSHもLHも両方作る細胞」はgonadotrope細胞(日本語訳知らない・・・ゴナドトロピン産生細胞・・・かな?)と呼ばれています。

では、このgonadotrope細胞はどうやってFSHとLHを作り分けているか?というと、そういうわけで、これがGnRHパルスの頻度によっているわけです。
  • GnRHパルスの頻度が「早い」(1時間に1回以上)と、gonadotrope細胞はLHを好んで作ります
  • GnRHパルスの頻度が「遅い」(2-3時間に1回以下)と、gonadotrope細胞はFSHを好んで作ります
といった感じで、FSHとLHを作り分けているようです。

で、以下、この論文の解説の和訳。
  • 卵胞期初期と黄体期にはFSH>LHとなり、卵胞期後期にはLH>FSHとなる。
  • 卵胞期後期では、卵胞がエストロゲンを産生し、そのエストロゲンに対し「ポジティブ・フィードバック」反応を示す前腹側室周囲核のキスペプチンニューロンが活性化し、GnRHパルスの頻度と強さを上昇させ、LHサージを起こす。
  • 排卵後は、黄体細胞がプロゲステロンを産生し、このプロゲステロンがGnRHパルスの頻度を低下させて、LHの産生抑制/FSHの産生促進状態となり、次の周期の卵胞発育に対する刺激を開始する。
ね?そういうことです。
つまり、月経周期が順調に運んでいると、月経中にはGnRHパルスはゆっくりになっていて、下垂体のgonadotrope細胞は自動的にFSH↑/LH↓となっているわけです。
で、この状況を作るのに、前の周期の黄体期のプロゲステロンが活躍しているわけです。

さて、今日の内容はここで終わりです。が、ここまでの内容が理解できると
「PCOのLH>FSHの理由はもしかして・・・・」
はい、その通りです。
ちなみに、PCOの診断基準をよくよく読むと、こんなことが書いてあります。

注4)内分泌検査は、排卵誘発薬や女性ホルモン薬を投与していない時期に、1cm以上の卵胞が存在しないことを確認のうえで行う。また、月経または消退出血から10日目までの時期は高LHの検出率が低い事に留意する。

PCOの方でも、ホルモン剤(プロゲステロン)を使って消退出血(皆さんのおっしゃる「リセット」)を起こして採血をするとFSH>LHとなることがあります。
原理を考えれば当然起こりうるわけです。

あと、よくあるのが、
「生理中のホルモン計ったら、FSHが10だった!卵巣機能が~~~~!」
とパニックになっている方。超音波拝見しても、全然予備能低下なさそうなパターン。
「パルス状分泌だから、たまたま『ピュッ』の時に採血すると・・・」
そういうことです。
ちなみにFSHが高かった時に、『ピュッ』なのか?本当に予備能低下なのか?も、ちゃんと数字を「考えて読む」と何となく解るのですが、この辺は『慣れ』の世界です。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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