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「全員に全胚凍結」は正当化されるのか?(1)

体外受精・顕微授精の歴史に若干遅れて「胚凍結」の技術が物凄い勢いで進歩してきました。
僕が研修医だったころは「プログラムフリーザー」と呼ばれる物凄くお高い機械で凍結が行われておりました。
僕がARTのトレーニングに行ったころもまだ行われていましたから、まだそんなに昔では(笑)ありません!
これがまあ、イケてなかった。
なので
「凍結する位なら戻しちゃえ!」
ってなもんで凄い数の胚を戻してました。

で、その後、超急速ガラス化法という方法が一般的となり、凍結-融解の成績が非常に安定的なものとなりました。
その結果、ARTに劇的な変化が起こりました。
大きくは
  • OHSS回避のための全胚凍結
  • 余剰胚凍結が可能になったことにより胚移植数の制限→多胎予防
です。
そして、最近では
  • いわゆる「貯卵」
などでも使われていますかね。
癌患者さんの妊孕能温存だけでなく、良性腫瘍(筋腫や卵巣嚢腫、または内膜ポリープなど)の手術前後(「Surgery-ART hybrid療法」)、果ては年齢因子目的の貯卵、キャリア優先の「社会的適応」なんてのもありますかね。
将来的には
  • PGS
  • 例えばジカ・ウイルスなどのパンデミック時
なんかも適応になるのかもしれません。

こんな感じで、医療行為には「適応」というものがあります。
理由があり、きちんとしたエビデンスに基づいて用いられる「正当化された」使用法というわけです。
「こんな時ならこの治療法やっても正当化されるよ!」
というわけです。
(「社会的適応」が「正当化」されるのか?はよくわかりませんが。ま、今回はその話題ではないので。)

そんな中、こうした「適応」をやや拡大解釈し、
「新鮮胚移植は行いません」
「誰彼全員一旦胚凍結をします」

という考え方が出てきているようです。

つまり、従来「胚凍結の適応」と考えられてきた「適応の範囲」を逸脱し、「従来の適応」があろうが無かろうが誰彼「全員凍結」というわけです。

その理論としては
「新鮮周期は排卵誘発をしている。なのでホルモン値がおかしくなっている。すると子宮内膜の状態が普段とは違うため着床しにくくなる。なので新鮮周期の胚移植は避け、一旦凍結したほうがいい。」
というわけです。

なるほど、何となく一理あるようにも感じます。

しかしながら、科学的根拠に基づいていなければ、極論ですが
  • 閉経したら、癌になるリスクが残るだけなので、子宮と卵巣は全員全摘!
  • 胎児仮死(←注:今はこの用語使わないです)になる可能性があるから、分娩は全員帝王切開!
  • もういっそ、不妊かもしれないから、結婚したらみんな即体外受精!
と一緒になってしまうわけです。

さてこの「Frozen-Fever」とも言える「なんでも全員誰彼凍結」という考え方、どんなもんなんでしょうか?
少し考察してみたいと思います。

【続く】
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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