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「全員に全胚凍結」は正当化されるのか?(3)

【目次】

で、去年の12月に、この点について論じた論文が出ていたので読んでみました。です。
以下論旨要約。

  • 全胚凍結の適応は、①貯卵 ②PGS目的 ③OHSS回避目的 ④妊孕能温存目的 だが、最近「排卵誘発すると着床しにくくなるのではないか?」という考えの元に全胚凍結を行う「Frozen Fever in ART」というべき状態が起きている。
  • 確かに近年発表されたメタアナリシスでは、新鮮周期より凍結周期の方が臨床的妊娠率、妊娠継続率が良好である、と発表された。(管理人注:「Fresh embryo transfer versus frozen embryo transfer in in vitro fertilization cycles: a systematic review and meta-analysis.」です)
  • しかしながら、このメタアナリシスには、3つの小さなstudyの結果に過ぎない点、患者背景や治療手技が統一されていない点、どのstudyも出生率には触れていない点で問題があるように思える。
  • 我々の考えでは、OHSSのリスクがある患者は全胚凍結の良い適応であることは否定しない。
  • しかしながら、OHSSのリスクの低い「normo-responder」にまで適応を広げるには問題がある。
  • 我々の最近の検討では、「normo-responder」での新鮮ET v.s. 凍結ETでは、妊娠継続率、出生率に有意差を認めなかった。(管理人注:「Elective frozen embryo transfer does not improve reproductive outcome in normo-responder patients」です)
  • 「normo-responder」で、PGSを予定しているなど他の全胚凍結の適応が無ければ、全胚凍結の適応に入れられるべきではない。
  • 今日の所、全胚凍結は基本的には主に「high-responder」に利点があり、全例に適応はできない。
  • 現在「biological clock」と戦っている患者に対し、(やたらと全胚凍結してETを)延期することは選択肢足り得ない。

とのことです。
での論文によると、

「高エストロゲンなどのホルモンバランスで子宮内膜の着床率が低下する」という報告は「high-responder」(=つまりは卵巣予備能がめちゃくちゃいい人)を対象にしたものである。
これを「normo-responder」(=つまりは卵巣予備能が平均的な人)まで拡大解釈するのは間違っているのではないか。
こうした「normo-responder」の人たちが「high-responder」のデーターを当てはめられてしまって、新鮮周期で胚移植するチャンスを奪われてしまっているとしたら問題だ。
特に「normo-responder」の「時間がない人」に対して、時間を奪ってしまう「なんでも全胚凍結」はおかしい。


というわけです。
実際の文にはこんな単語が使われています。

  • However, postponing is not a choice for some of our patients since they are already fighting against their biological clock.
  • Therefore, it is time to cool off, wait for more evidence, and shift only if necessary.


biological clock」と戦っている患者の時間を奪うな!
ちゃんと(適応を守って)「必要な時だけ」やるようにしようぜ!


というわけです。

そんなわけで、毎度同じ事を言いますが、
「全員無条件に低刺激」
しかり
「全員無条件に全胚凍結」
しかり
機械的に、画一的にできるわけがないのです。
工業製品を作っているんじゃないんだから。
生身の人間を相手にする。だからこそさじ加減が必要である。
それが「医療」なんだろうし、こうした状況に柔軟に判断し対応するのが医療従事者の仕事なわけですよ。
そして医療の醍醐味なんじゃないでしょうかね。

【続く】
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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