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黄体補充を頭を使って考察しよう!(3)

続き。
今までの流れを復習しておくと、
  • 今年のfertility and sterility誌に載る論文によると、メタ・アナリシスの結果「hMG-AIH」では黄体補充をしたほうが良くって、「CC-AIH」では黄体補充を行っても妊娠率は上昇しない
  • GnRHニューロンがきちんとパルス状にGnRHを分泌できていないと黄体機能不全になる。(これは黄体期にワンポイントでE2/Pを採血しても正確に診断することは不可能である。)
ということでした。

ということで、
「GnRHニューロンがきちんと(パルス状に)GnRHを分泌していない(できない)状態」
が、黄体補充の利点が出そうだ、ということです。

では、逆に「GnRHニューロンがきちんと(パルス状に)GnRHを分泌している(できている)状態」とはどんな感じなのでしょう?
要するに、逆に「あなたは黄体機能不全はありません」と直接証明する方法はあるのでしょうか?
これは、昨日の話、「『黄体機能不全である』と証明する方法はない」の裏返しになるわけで、多分不可能でしょうね。
但し、間接的に何となく推定は出来なくはないです。
それは、「卵胞発育具合」です。
脳下垂体前葉からのゴナドトロピン(FSH/LH)分泌は
  • 卵胞期には卵胞発育を促す。
  • 黄体期には黄体ホルモン分泌を促す。
わけです。
つまり、時期こそ違えど、
「卵胞が順調に発育している」
→「それはつまり、(卵胞期に)ゴナドトロピンがまっとうに分泌されている証拠、つまりはGnRHニューロンはきちんとパルス状にGnRHが分泌できている証拠」
(もっと言うと、GnRHニューロンが健全にGnRHを分泌できる健全な体内環境が整っている証拠)
→「ということは、時期こそ違えど、黄体期にもGnRHニューロンはきちんとパルス状にGnRHを分泌できると考えるほうが自然」
→「よって黄体ホルモン分泌は正常になるはずでは?」

と考えるわけです。
確かに間接的にはなってしまうのですが、思うに、これ以上に黄体機能を推測できる方法はないと思うのです。
(少なくとも黄体期にE2/Pをワンポイント採血する方法よりは現実的だと思います。)

つまり、自然周期で
卵胞期に健全に卵胞が発育してきている=黄体期にも健全に黄体ホルモンが分泌されている
と考えるわけです。
だから、健全な自然周期で黄体補充をやっても妊娠率が上昇するというエビデンスが出ないわけです。
だって、足りているんですもん。

では、とりあえずのゴールである
  • 「hMG-AIH」では黄体補充により妊娠率が上昇
  • 「CC-AIH」では黄体補充により妊娠率は上昇しない
に行きましょう。
これは、「ネガティブ・フィードバック」を考えれば、当然ですね。
まずhMGの方

hMGで排卵誘発をする
→下垂体が正規に出すFSH/LH量以上にFSH/LHが供給される。
→当然予想以上に卵胞が育つ
→卵胞が出すエストロゲンが異常上昇する
→下垂体はこれ以上FSH/LHを分泌する必要がなくなる
→GnRHニューロンはGnRHを分泌しなくなる(ネガティブフィードバック)
→GnRHニューロンのGnRH分泌パルスが異常に減弱する
→黄体機能不全になる
→よって、黄体補充をしたほうが妊娠率が上昇する

で、クロミフェン(CC)の方。CCは抗エストロゲン剤ですから(解説いらないっすよね?)

CCで排卵誘発をする
→GnRHニューロンのエストロゲン感受性が鈍くなる
(注:本当はGnRHニューロンではないのですが、理解の都合上このように記載しておきます。)
→GnRHニューロンとしては、「もっと頑張って卵胞を育てなくては!」と反応し(これも一種のネガティブ・フィードバック)、GnRH分泌を促進する(GnRH分泌パルスが異常に増強される)
→下垂体からのFSH/LH分泌が増強される
→このまま黄体期に突入すると、むしろ黄体機能亢進状態になる
→よって黄体補充をしても、そもそも足りているので妊娠率は上昇しない

というわけです。
最初に紹介したfertility and sterilityの論文の考察もまさにその通りになっています。
もちろん英語ですが、コピペしておきます。
えっと、まずhMGの方から。

The effect of exogenous gonadotropines directly on the ovaries leads to increased serum E2 and negative feedback on the hypothalamic-pituitary-ovarian axis.
This ultimately may lead to aberrant LH pulsitility and P secretion from the CL.

Pはプロゲステロン、CLは黄体のことです。
CCの方は

Compared with the decrease in luteal LH concentrations in gonadotropin cycles, CC increases LH levels.
(中略)
The potential for CC treatment to increase CL function has led to its proposal as a treatment modality for patients with inadequate luteal phase endogeneous P secretion.
There is significant evidence to suggest that endogeneous CL function may be decreased in gonagotropin cycles and enhanced in CC cycles.
This may explain the findings of this meta-analysis that donadotropin IUI cycles may benefit from P support, whereas CC cycles do not.

おわかりいただけましたでしょうか?
難しかったですかね?
もし、よく理解できなかった、というようであれば、僕の説明力不足です。申し訳ありません。

ということで、まとめると、
「黄体機能不全」は「GnRHニューロンが健全にGnRHをパルス状に分泌できる健全な環境が整っているか?」という風に「大脳皮質」を使って悩むと、(不謹慎な表現で申し訳ないですが)これほど面白いことはなかなかないのです。
「目の前の患者さんのGnRHニューロンの環境は健全か?否か?」
と五感も六感も使って悩むわけです。
名探偵コ○ンばりに(←内容良く知らないんですが。)
この醍醐味と言ったらもう・・・。ヤメラレマセン!
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コメント

[C131]

お忙しいところ、お返事ありがとうございます!

やはり治療は一筋縄にはいかないわけですね。。。

主治医ともう一度話し合ってみることにしたいと思います。


  • 2015-02-07 12:45
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[C130] Re: プロゲステロンについて

コメントありがとうございます。  
黄体補充をしたほうがいいのかどうか?ということですね。
僕は、個人個人によって行う場合と行わない場合があります。
また同じ方でも周期によっても行う周期と行わない周期があります。
そんな感じなので実際に拝見せずに、画一的に使う/使わない(あるいは使ったほうがいい/悪い)とお答えすることができません。
歯切れの悪いお答えで申し訳ないですが、ネット上だとこれが限界です。
申し訳ないです。
是非主治医の先生とよくご相談いただくのがよろしいと思います。
  • 2015-02-06 17:59
  • どくさま改め「いわもと」
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[C129] プロゲステロンについて

初めまして。
現在妊娠を希望しており、信憑性のある先生のブログをいつも参考にさせていただいています。

5ヶ月タイミングしたものの妊娠しなかったので不妊クリニックに通っています。
ホルモン検査をしたところ、黄体期のプロゲステロン値が5.4でした。医師曰く低いとのことです。
(現在34歳ですが、そういえば確かにここ一年くらい生理前に胸のハリがなくなってきたかなと思い出しました。プロゲステロンの低下の症状でしょうか?)

今周期から、クロミッド+人工授精にステップアップしたのですが、排卵後プロゲステロン補充の飲み薬を飲むように指示されました。

これは正に先生のおっしゃる「意味がないこと」になるのでしょうか?

「意味がない」のであればまだいいのですが、もし「悪影響」だったら不安です。

先生は私のような患者さんがいた場合、クロミッド人工授精をしたとしても、プロゲステロンは補充されないのでしょうか?
  • 2015-02-06 07:59
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[C30]

お答え、ありがとうございました。主治医とまた相談してみます‼️
  • 2013-11-11 14:18
  • ローラ
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[C29] Re: No title

なるほど。
文面だけからの判断なので何ともお答えしずらい所ですが、状況はいくつか考えられます。
無責任にネット上でお答えするわけにもいかず、あまりいいお答えが用意できなくて申し訳ございません。
是非ご担当の先生によくご覧いただいてお大事にしてください。
  • 2013-11-11 08:51
  • どくさま
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[C28] No title

お返事ありがとうございました。
>確かに加齢により黄体からのエストラジオール/プロゲステロンの分泌能は低下するようです。
但し、この状態が加齢による妊孕能低下に関与しているのかどうかはわからない

なるほど・・・!いつも先生の説明は分かりやすく、納得です・・・!!
ところで、今日(day7)、左腹の痛みが取れないので受診しました。するとなんと左卵胞が65mmと巨大化していました!!エコーに映し出された黒影が、大きすぎて、縮尺がいつもと違うのかな、と思うくらい・・・
排卵誘発剤など、なにも飲んでない・使っていないのに、こんなになることってあるんですね。
どうやら、先月ノロに罹り(死ぬかと思いました)、1週間くらい食事できかったりしたので卵胞が育っておらず、LHサージは出たけど排卵しなかったみたいです。
ここまで大きいと、捻転など怖いから、安静に!と言われました。性行為も禁止、と・・・
今回のはどうせ排卵してもいい卵じゃないから、受精しても流産するよ、と言われましたが、そんなもんでしょうか??
  • 2013-11-09 02:46
  • ローラ
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[C27] Re: No title

コメントありがとうございます>>ローラさん

> 私はいつも排卵後、きっちり14日で生理が来ています。
> しかし、今回だけは、排卵後9-10日目で出血しました。
> これは、なぜでしょうか?
> 年齢を重ねると生理周期が短くなると聞きますが、それは排卵までの時間が短くなるのかな、と思っていました。

はい。この情報だけで状況判断するのは難しいので、一般論を書いておきます。
えっと、
http://www.asrm.org/uploadedFiles/ASRM_Content/News_and_Publications/Practice_Guidelines/Committee_Opinions/Luteal%20phase%20deficiency2012noprint.pdf
の2ページ目(このファイルだと1113ページ)の左側の真ん中あたりに記載されています。
確かに加齢により黄体からのエストラジオール/プロゲステロンの分泌能は低下するようです。
但し、この状態が加齢による妊孕能低下に関与しているのかどうかはわからない、ともありますね。
「今回だけ」とのことですので、次周期がどうなるかがkeyでしょうかね。
そんな感じでお答えになっているでしょうか?
  • 2013-11-05 11:35
  • どくさま
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[C26] No title

こんばんは!いつも興味深く読ませていただいています!
黄体機能不全の記事、とってもわかりやすくて、納得です。
私はいつも排卵後、きっちり14日で生理が来ています。これは、黄体機能不全ではないということになりますか??(いつも尿中LHを検出し、病院でエコーしてもらうと、LHサージの24時間後くらいに排卵になっています。)
しかし、今回だけは、排卵後9-10日目で出血しました。
これは、なぜでしょうか?
年齢を重ねると生理周期が短くなると聞きますが、それは排卵までの時間が短くなるのかな、と思っていました。
  • 2013-11-03 21:40
  • ローラ
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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