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非閉塞性無精子症(NOA)患者さんが顕微鏡下精巣内精子回収法(MD-TESE)に臨んで、自身の遺伝情報を有する子供の父親になれる確率はどのくらいなのか?(2)

【昨日の続き】

で、
「MD-TESEを受けた結果精子が回収でき、かつ、その精子をICSIに供して、結果挙児に至る可能性は〇%です。」
ということで、精子が回収できる確率までではなく、その結果、挙児に至る確率は実際どのくらいなのでしょうか?
2015年のHum Reprodにそんなデーターが載ってます。
です。

以下、論旨。

  • 人生で初めて精巣内精子回収法(TESE)を受ける、染色体が46,XYでAZF欠失の無い非閉塞性無精子症(NOA)患者714人を対象とした。
  • このうち、TESEで精子が回収できた人が289人(40.5%)
  • その後、ICSIを開始したカップルは276組
  • 一回でも卵子にICSIを打てたカップルが261組(TESEで精子が回収できた人の90.3%)
  • 261組がICSI444周期+凍結融解48周期を受け、hCG陽性が129周期で、96人の出生に結びついた。
  • 以上より、NOAでTESEを受けた人が出産までたどり着いた確率は13.4%(96/714)であった。

ということで、

TESE-ICSI is a breakthrough in the treatment of infertility due to NOA, with almost 4 out of 10 (37%) couples having ICSI obtaining a delivery. However, unselected candidate NOA patients should be counselled, before undergoing TESE, that only one out of seven men (13.4%) eventually father their genetically own child.


即ち、
TESEにまさに臨もうとしている非閉塞性無精子症の方は、TESEを受ける前に、自身の遺伝情報を有する子供の父親になれる確率は7人中1人(13.4%)だ、と情報提供を受けるべきである
とのことです。

7人に1人か・・・。
ま、もちろんお国事情などもろもろあるのでしょうが(この論文書いた先生はベルギーの方だそうです)、僕自身の経験的(感覚的)にはもう少し高いようなイメージがあるのですが。

そんなわけで、「TESEで精子回収できるのが3~4割」と言われても、そこは所詮通過点で、その後も「精巣内精子を使った顕微授精」という大きなハードルが待っているわけですわな。

この論文にも、その辺のことがかかれています。

出産にこぎつけたカップルは平均4.6周期のICSIを受けていた。

とのことで、その後、何周期もかかるわけです。
で、ICSI6周期までの出産率がグラフ化されています。
緑が、この論文内の実際にICSIに進んでいった人たちのデーター。
青が「みんな諦めずに頑張り続けたら」のデーター。





無精子症のご夫婦、本当に様々な葛藤に悩まれます。
答えの無い判断を迫られることも多々あります。
そして、本当に十人十色、いろんないろんな判断をなさいます。

僕ら医療従事者は、その判断を少しでもアシストできるよう、客観的な情報を提供する必要があるのでしょう。
そういう意味では、とても勉強になった論文でした。

では、この話題、おしまい。
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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