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なぜ4CC胚盤胞が赤ちゃんになるのか?をドクター『I』流に考察してみる(8)

【今までの経緯】
【あらすじ】
さて、そういうことで、8細胞期頃までは、染色体が正常な割球と染色体異常の割球が入り乱れている場合は多々あり、そうした胚を「モザイク」というのでした。
でも、そうした「モザイク胚」でも赤ちゃんになる可能性があることがあることが知られていて、そのために、染色体異常になってしまった割球(細胞)が、「赤ちゃんになることに極力参加しない」という積極的なメカニズムが存在するのだろう、と考えられているのだ、というわけです。
で、そのメカニズムとは、
  • 染色体異常になってしまった割球(細胞)が自ら察し、「分割を停止する」なり「死ぬ」なりして、赤ちゃんになることに参加しない。
  • 染色体異常になってしまった割球(細胞)を全部TE(将来胎盤になる部分)に集め、ICM(将来赤ちゃんになる部分)は染色体正常な細胞だけを集める。
というメカニズムがあるのだろう、という所まで来ました。

【以下、本日のお話し】

PGSどうよ?

さて、巷を騒がせているPGSについて少し考察してみましょう。
PGS(現在はPGT-Aと言うほうがいいらしいのですが、ま、本項ではPGSをこのまま使います)とは、
「発育途中の胚の染色体見ちゃいたい!」
という発想の元、育っている最中の胚の一部を取って(「生検」と言います)その染色体を調べて、染色体正常なら胚移植しよう、染色体異常なら戻すのやめよう、という方法です。
これができれば確かに「当り」が最初からわかるわけです。
ホームランバーの棒を透視するがごとく。
チョコバットの包装フィルムを透視するがごとく。
(・・・古いか?www、最近だと何だろ?ファミマのアメリカンドックの棒も「当り」があるらしいね。それかな?www)

ドクター「I」が不妊治療トレーニング中、先輩にアメリカ帰りの先生がいたのですが、その先生がアメリカの最先端の生殖医療の話をよく聞かせてくれました。

「初期胚あるだろ?8細胞とか。あれの割球を1個取ってきて、その染色体をFISH法で調べるわけ」

と話してくれたことがあります。
当時のけがれの無い純粋な(←www意味深) 青年ドクター「I」は

「おおおおおお!!!!すげえ。アメリカすげえ!!!反則じゃん!」

と、感激した記憶があります。
丁度こんな感じ。


(写真はPreimplantation genetic screening: a practical guide.からお借りしています。)

ところがこの方法が妊娠成績を良くする、というエビデンスがなかなか出てこない。
いや、むしろ悪くする、という報告すら出てくる。

そうですね。
いままでチェックしてきた通り、初期胚は結構な割合で「モザイク」なので、「取り出した1個の染色体」と「残り7個の染色体」は必ずしも一致しないわけです。
そんなわけで、初期胚でのPGSはどうやら分が悪い。

そんなわけで、現在、世界的に広く行われている「PGS」と呼ばれている(←www意味深)方法はどんなことをやっているのか?というと、胚盤胞で行われているようです。

今まで「ICM」とか「TE」という用語を使っていましたが、ここで解説しておきます。
図はA single trophectoderm biopsy at blastocyst stage is mathematically unable to determine embryo ploidy accurately enough for clinical use.からお借りします。



左側に胚盤胞の模式図があります。
周辺を覆っている白い細胞が「Trophectoderm」略して「TE」です。日本語は何て言うんだっけな?えっと・・・栄養外胚葉か。
で、ここは「becomes placenta」=つまり「胎盤になる」わけです。

で、中側で固まっているグレーの細胞が「Inner cell mass」略して「ICM」。日本語は内部細胞塊。内細胞塊という人もいるかも知れない。
こっちは「becomes fetus」=つまり「赤ちゃんになる部分」なわけです。

で、現在の「PGS」と呼ばれているもの(←意味深www)は、このTEの部分、つまり、将来胎盤になる部分の一部を拝借して、その染色体を調べよう!というわけです。
こんな感じ。
(図はThe Impact of Biopsy on Human Embryo Developmental Potential during Preimplantation Genetic Diagnosis.Preimplantation genetic screening: a practical guide.から借用しています。





そんなわけで、
「目の前にある胚盤胞の染色体を見てしまおう!」
「当り外れを見てしまおう!」

という発想なわけです。
確かに一見パワフルな方法に見えちゃいますし、飛びつきたくなるわけですが(←wwwこれまた意味深www)、実際のところどうなんでしょうか?

【続く】
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プロフィール

ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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