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なぜ4CC胚盤胞が赤ちゃんになるのか?をドクター『I』流に考察してみる(9)

【今までの経緯】
【あらすじ】
さて、そういうことで、8細胞期頃までは、染色体が正常な割球と染色体異常の割球が入り乱れている場合は多々あり、そうした胚を「モザイク」というのでした。
でも、そうした「モザイク胚」でも赤ちゃんになる可能性があることがあることが知られていて、そのために、染色体異常になってしまった割球(細胞)が、「赤ちゃんになることに極力参加しない」という積極的なメカニズムが存在するのだろう、と考えられているのだ、というわけです。
で、そのメカニズムとは、
  • 染色体異常になってしまった割球(細胞)が自ら察し、「分割を停止する」なり「死ぬ」なりして、赤ちゃんになることに参加しない。
  • 染色体異常になってしまった割球(細胞)を全部TE(将来胎盤になる部分)に集め、ICM(将来赤ちゃんになる部分)は染色体正常な細胞だけを集める。
というメカニズムがあるらしい。
なるほど。
では、実臨床上に何か役立つことはないか?という視点で話を進めています。
直近「PGS(と呼ばれているもの)」に噛みついていますwww。


【以下、本日のお話し】

で、前回説明した通りですが、現行行われているPGSは、
「生検したTEの染色体が、ICMの染色体を反映している」
という前提で行われているわけです。
つまり、
  • 生検したTEの染色体が正常なら、ICMの染色体も正常。だから戻す。
  • 生検したTEの染色体が異常なら、ICMの染色体も異常。だから捨てる。
ね。

でもここで、この前提がもし万一成り立たなかったら、大惨事なわけです。
つまり、
生検したTEが異常だったら、本当に絶対の絶対に赤ちゃんにならないのか?
という疑問が残るわけです。
もし、TEで染色体異常でも元気な赤ちゃんが生まれてくることがあったら、PGSをやってしまったがために、その胚を破棄したとすると、PGSをやらなければ生まれてきていた赤ちゃんを「殺している」事に他ならないわけです。

そうですね。
ちょっと気になることが出てきたではありませんか。
染色体異常になってしまった割球(細胞)が、「赤ちゃんになることに極力参加しない」という積極的なメカニズムの一つとして、染色体異常になってしまった割球(細胞)を全部TE(将来胎盤になる部分)に集め、ICM(将来赤ちゃんになる部分)は染色体正常な細胞だけを集める、というメカニズムがあるらしい。
わけです。
ということは・・・・・???大丈夫か???PGS???

はい。そうなんです!

PGSでモザイク胚、戻してみた

で、2015年のNew England Journal of medicineに載っています。
因みに、このNew England Journal of medicineは、超超有名医学雑誌で、この雑誌に載った内容で、今までのガイドラインが全て書き換えられてしまうこともあるぐらい、超影響力のある医学雑誌です。

以下、論旨。
  • 体外受精で得られる胚がモザイクであることはしばしばみられることである。
  • 染色体正常なものと異常なものが混在するモザイク胚は異常胚とみなされ、通常胚移植は行われない。
  • 今回、そうしたモザイク胚を戻してみた。
  • PGSの結果、染色体正常胚が一つもなく、モザイク胚が存在した18人が対象
  • このうち、妊娠反応が陽性になったのが8人で、そのうち2人は生化学妊娠(=皆さんがおっしゃる「化学流産」のこと)となり、6人の赤ちゃんが生まれた。
  • これらの赤ちゃんは絨毛で染色体検査を行い、正常染色体核型であることを確認した。




ということで、TEの生検で「モザイク」であっても、赤ちゃんが生まれてくる場合がある、というわけです。
PSGやって
「はい、だめぇ」
捨てられた胚、実は赤ちゃんになってたかも知れない、という意味で、当時(と言っても2年前ですが)、非常に衝撃を受けた論文でした。

((((;゚Д゚))))


【続く】
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ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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