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Reproductive Healthの管理も自己責任の時代になりつつあるわけで(13)

続き。最後まで行っちゃいたいと思います。

【Hot water:温浴】
  • 温浴が不妊に関連していると結論するには、未だにエビデンスが不足しているという状況である。
  • 多くの生殖の権威は、高温が精子に与える影響面から、温浴・ジャグジー・サウナも悪影響になるのではないか?という発想に基づいての意見を論じている。
  • Shefiらによる、温浴が精子に与える影響を調べた検討がある。それは、11人の男性にまず、毎週30分以上の高温温浴を3か月以上続けてもらい、その後、3か月間今度は逆に高温温浴を避けてもらう、というものである。
  • すると、ほぼ半分の男性で精液検査所見が改善した。
  • 残り半分の改善を認めなかった被験者について、著者であるShefiらは、タバコなどの他のライフスタイル因子の関与も無視できないのでは、としている。

とのことです。
ということで、昨日のブリーフv.s.トランクスに並んで都市伝説的に言われているサウナや熱いお風呂なども、怪しい、とは言われてはいるけれども、本当に「黒」と断定されているか?と言われると、実はそこまでは行っていない、ということです。
いかにも専門家チックな方々(この論文ではauthorityと表現されています)が
「下着はトランクス」
「熱い風呂・サウナを避ける」
とやっているのは、発想はわからなくはないが、根拠は弱い(エビデンスレベルは低い)と言った感じの書き方ですね。

なので、この辺をいかにもっぽく強制して、逆にストレスになってしまうようでは本末転倒かもしれませんね。
無理の無い範囲で、適度にかつ上手にコントロールするのがいいのではないでしょうか?

では、最後行きます。
内容的には多少露骨ですが、この辺でのお悩みも確かによく聞く内容ですね。

【Lubricants:潤滑剤】
  • 性交時に、腟の乾燥・痛みに対して潤滑剤を使用しているカップルは多い。
  • あるインターネットによる調査では、75%が潤滑剤の使用経験があり、26%はほぼ毎回使用しているという結果であった。
  • 他にも、オリーブオイル、サラダ油、あるいはツバなどの使用もあるが、これらは精子機能に悪影響を及ぼすことがわかっている。
  • 市販されている潤滑剤についての調査では、Agarwalらが、5つの市販潤滑剤の影響を調べた報告がある。
  • このうち3つは30分で精子の運動率を低下させた。
  • さらに、これらのうち3つで精子遺伝子損傷が認められ、2つでは有意差が出た。

とのことです。

不妊症の定義、復習しておきましょう。えっと、
「特に避妊をせず、普通の夫婦生活を2年続けられても妊娠されない場合」
ですね。
よく議論になるのは、この「2年」というのが正しいのかどうか?ですが、あまり触れられていないのですが、「普通の夫婦生活」の「普通」って何?という方が大問題だと僕は思うのです。

つまり、ご夫婦の性交渉がそもそも妊娠に結び付きやすい性交渉なのかどうか?という点ですね。
色々お話を伺っていると、まあ、これまた十人十色、なるほどなるほどいろんなやり方・癖が存在するものです。
そもそも回数も千差万別。

で、この辺を無視してみんなまとめて「不妊症」としてしまうと、「真の不妊症」という方々と「性交渉のやり方を少しかえればいいのでは?」という方々を同様に扱ってしまうことになるわけで、この区別が非常に重要だと思うのです。

これを聞き出すのは、多少コツというか慣れが要ります。
ちなみに、奥様にだけ話を聞いても、奥様もよくわかってない方も多いですね。
何かおかしいとは思うけど、何がおかしいのかはよくわからないとか。
ご主人様にも話を聞く、しかも個別にとかね。
この辺は非常に奥深い所です。でも、上手に聞き出せると、無駄な治療をしなくて済むようになるので重要な所です。


そんなわけで、生活習慣がReproductive Healthにどのような影響を与えるのかを読んできました。
多少なりとも参考になれたらうれしく思います。
明日以降、また別の企画考えておきます。
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コメント

[C43] ありがとうございます!

お忙しい中、丁寧なお返事をありがとうございました。

お風呂が大好きで、1時間くらい毎日入っていたら、
周りから色々言われて不安になっていました。
これからは安心してお風呂に入ろうと思います(*^-^*

ありがとうございました。
  • 2013-11-19 21:52
  • ジャッロ
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[C42] Re: No title

はい。なかなか面白い発想です。
よく「冷え」とか「温める」とか聞きますよね。
で、この辺ですが、多分真に医学的なエビデンスというのはないと思います(多分)。
この辺は皮膚など(正確な言葉でいうと外殻温度)でいろいろものを論じているわけですが、深部体温(核心温度)は普通、多少の環境変化ではそう簡単には変化しないといわれていますよね。
つまり、深部体温が上昇するほどサウナに入れるか?と言われると、多分無理でしょうね。
もし、外気温に深部体温が影響をうけるとすると、同じ地球上でも、赤道直下のヒトも、白夜の世界に住むヒトも同様にreproductionできている現状に矛盾が生じてしまいます。
陰嚢は深部体温ではないのでは?という考えの元、温度と造精機能の議論が盛んにおこなわれるわけです。
では、これも、造精に最適な緯度(気候)が存在するのでは?あるいは季節が存在するのでは?という考えはどうか?となるわけですが、これは大まじめに検討されています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23395928
など。面白いですね。ちなみに真面目に「冬~春」がいいらしいです。

では、本当に深部体温が影響を及ぼすか、すなわち「病的発熱」の影響は検討があります。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23072616
など。

そんなわけで、子宮周辺の「深部体温」はホメオスターシスによって厳密にコントロールされており、日常生活習慣程度ではそう簡単には変化しないと思います。
  • 2013-11-19 13:18
  • どくさま
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[C41] No title

先生、先日はカフェインの件では、丁寧なお返事をありがとうございました。それほど過敏にならなくていいと伺って、主人も私も安心しました。

さて、今回の記事の温浴についてもまた質問があるのですが、女性の温浴についてはどうなんでしょうか。受精卵が高温に弱いので、5分以上湯船に浸かる・または半身浴をすると、すぐに体内温度が40度を軽く超え、子宮の受精卵が死んでしまうので、それが不妊の原因になっていると説いている方がいらっしゃいます。しかし一方(漢方や整体)では冷えが不妊を招いていると、半身浴や岩盤浴・ヨモギ蒸しなどを勧めていらっしゃいます。

本当はどちらが正しいのでしょうか。それとも、男性と同じくあまり過敏にならなくてもいいのでしょうか。お忙しい中すいませんが、お返事をよろしくお願いします。
  • 2013-11-19 11:51
  • ジャッロ
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Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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