Entries

なぜ4CC胚盤胞が赤ちゃんになるのか?をドクター『I』流に考察してみる(5)

【今までのまとめ】


図をお借りしてきました。からです。

受精卵から4細胞~8細胞期にかけては黒の三角、「Maternal transcript accumulation」つまり、「お母さんが残してくれたmRNAや蛋白質」で、なんとかなんとか「食いつないでいく」わけです。
で、8細胞位から、ようやっと緑の三角、「Embryo gene transcription」つまり、胚自身が独り立ちして、自前の遺伝子を活性化させてくるわけです。



つまり、day2とかday3の、いわゆる「初期胚移植」は「transfer proir to EGA」。



「お母さんが残してくれたmRNAや蛋白質」で、一部、染色体異常の割球も作りながらも、なんとかなんとか分割している最中に胚移植しているわけです。
で、(おそらくこの時点では)全部の割球が「染色体正常」である必要は無い(まあ、全部が全部「正常」であればもちろん理想なわけですが)。
そのうちの一部さえ「染色体正常」であってくれさえすれば、他の「染色体異常の割球」はこの後、生まれてきて困らないように何とか処理をするわけです。

一部さえ正常であってくれれば、異常な割球は「壊す」なり「分割を止める」なりするわけですから。
フラグメントが多少あろうが、割球に大小があろうが、この時点では全割球が正常である必要はないわけですから。
ね。
必ずしも8細胞グレード1である必要もなさそうですね。

一方で「8細胞グレード1」であっても、
辺りでやった通り、所詮その割球全てが「染色体正常」であることは稀で、多くは「染色体異常」の割球との「モザイク」なわけですから。

なるほど、「初期胚」のグレード(形態評価)と妊娠予後がリンクしないはずです。

【続く】

なぜ4CC胚盤胞が赤ちゃんになるのか?をドクター『I』流に考察してみる(4)

【今までのまとめ】

さて、そんなわけで、初期胚、例えば8分割の割球は8個ぜ~んぶの細胞の染色体が全て同じなのか?というと、ま、同じなのもあるようですが、7割ぐらいがそうではなく、いろんな染色体の状態の割球が入り乱れている、と考えられているようです。
正常な染色体を有する割球もあれば、一本足りない割球があったり、逆に一本多い割球があったり。
そんなのが入り乱れている。
これをモザイクというのでした。
そうなってしまう理由が以下のように考えられているようです。

精子と卵子が受精して受精卵ができる。
すると、新しくできた「赤ちゃんの染色体」が即働き始めるのか?というと、そうではないらしいのです。
ヒトの場合は4細胞~8細胞になるまでは「赤ちゃんの染色体の遺伝子」はまだ活性化しないのだそうです。
4細胞~8細胞になるまでは、卵子に残っていたお母さんのmRNAや蛋白質で何とか分割をするらしい
(そのお母さんから卵子に残してくれたmRNAや蛋白質は「Subcortical Maternal Complex(SCMC)」と呼ばれているらしい。)

この「お母さんから卵子に残してくれたmRNAや蛋白質(SCMC)」で分割しなきゃいけない期間は、どうにも分割が不安定になるんだそうな。
だから、正常受精して、かつ、受精した瞬間はちゃんと「46,XX」ないし「46,XY」で染色体が正常であっても、2分割→4分割→8分割の頃は分割が非常に不安定で、染色体異常の割球が沢山出来てしまうんだそうな。

そんな感じで、「お母さんから卵子に残してくれたmRNAや蛋白質(SCMC)」で何とか4分割~8分割まで行くと、そこでようやく、赤ちゃんの(胚の)新たな染色体上の遺伝子が活性化されてくるそうな。
(これを「embryonic genome activation(EGA)」と言うらしい。)

こうして赤ちゃんの(胚の)新たな染色体上の遺伝子が活性化されてくる(EGAが起こる)と、染色体が1本多かったり少なかったりすると、その染色体から転写されてくる遺伝情報の量に多すぎ/少なすぎといった不都合が起こってくる。

4細胞~8細胞になって、ようやくEGAが活性化すると
「・・・何じゃこりゃ?」
と、松田優作バリに、「自らがまずい状態にある」ことにようやく気が付くわけです。
(松田優作・・・知らないか・・・orz)

「こりゃまずい」
と、その割球は「何とかならないといけない」わけです。

(難しかったですかね・・・・わかりやすく解説したつもりですが。)

【続く】

なぜ4CC胚盤胞が赤ちゃんになるのか?をドクター『I』流に考察してみる(番外編)~祝!3CCで卒業!

話が遅々として進みませんが(・・・www、忙しいのよ!それなりにw)、タイムリーにも 3CC の胚盤胞を移植された方が、無事本日ご卒業でした。
(あ、当院の『卒業』は10週です。6週とか7週とかではありませんのでwww。あしからず。)

おめでとうございました。
(分娩先、早めに決めてね!)



ね。CC胚、破棄してたら、この子の運命は・・・・・ ((((;゚Д゚))))

育っておるねぇ  (´ー`*)

本日は、午前中、当院ARTご卒業→無事ご出産の方々が3組、お子様を連れていらっしゃってくださいました。
ありがとうございました。

僕(ら)が関与させていただいた結果、患者さんたちの間に新たな生命が誕生することが、僕(ら)の唯一の存在意義であり、仮に僕(ら)が死んだ後も、その子たちが次世代を残していってくれれば、間接的で、所詮自己満足なのかも知れませんが、僕(ら)がこの地球に生きた証だと思って(自分に言い聞かせて??)生きております。

「君の存在は、『おじちゃん』が生きた証だ」

というホッコりとした気持ちで「だっこ」をさせてもらおうとするのですが・・・・・

「ギャー!!!」

大概、この世の終わりとばかりに悶絶拒絶をされます。 orz
何が「危険」を思わせるのでしょうか?
風貌でないことを祈ります。

さ、乗り掛かった舟、もっともっと「生きた証」を残せるよう、気合い入れてがんばろう!

精子の『質』がどうにも悪い場合・・・勇気がいるけど・・・

胚質が悪く、どうにもARTが反復不成功になる方がいらっしゃいます。
その際、どう考えてもご主人様側の精子が厳しい場合があります。
精子はある程度出ている。
射出精子でICSI可能な位の数はいる。
でもその後の胚の質がどうにもこうにも。

「これ、絶対精子側だよなぁ。」

その際、究極の選択肢として精巣内精子の使用が頭をよぎるわけです。
でもこのパターン、本当にTESEをするには結構勇気がいる。
  • 射出精液に精子が出てきているのに、本当にTESEしちゃっていいの?
  • TESE精子で本当に成績向上するっていう根拠があるの?
何せ、無精子症とは異なり、射出精液に精子が出ているわけですから。
そんな方にメスを入れるには正当な科学的根拠が必要なわけです。
今までも、「TESE精子なかなかいいみたいよ」みたいな報告はちらほら。
(このテーマは過去にも取り上げたことがあるので、ご興味あればご参照下さい。)
で、今回、いよいよ、今までのデーターのメタアナリシスが出たようです。DNA断片化率が高く、ICSI反復不成功の「Normo- and oligozoospermic men」、つまり、「正常精液所見または乏精子症患者」に対して精巣内精子はどうか?というわけです。

これがどうやらかなりいいらしい。
精巣内精子の方が、DNA断片化率は低く、ICSIの受精率は変わらないものの、妊娠率・出産率は倍以上、流産率は約1/4だそうな・・・。

精子出てるのに、睾丸にメス入れて精巣内精子・・・・。

いや、まあ、手技自体はごくごく簡単なのですが、やる方もそれなりに勇気がいるのよ!
無精子症は正当化されますが、何せ「精液中に精子いる」わけですから!

そんなわけで、どう考えても「精子の質」の場合、どうにも苦戦しているなら「TESE精子の利用」正当化されるのかも知れません。

Appendix

プロフィール

ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

カウンター