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甲状腺の答えを求めて旅に出る(3)

さて、続き。5. Treatment of SCHA. Diagnosed Before Conception行きます。

There has been no randomized controlled trial examining whether LT4 therapy improves outcomes for infertile women with SCH not undergoing assistive reproductive techniques. A retrospective study examining LT4 therapy on 69 infertile women reported that 84% became pregnant with treatment although 29% had a miscarriage afterward [66]. There is insufficient evidence for or against routine LT4 therapy to aid conception in thyroid autoantibody-negative infertile women with SCH who are not undergoing artificial reproductive techniques [1]. However, the ATA has issued a weak recommendation that administration of LT4 may be considered in this setting given its ability to prevent progression to overt hypothyroidism once pregnancy is achieved [1].

はい。英語並ぶとアレルギーが出るのは僕も一緒ですが、「逃げちゃだめだ」でございます。

えっと、なになに?

There has been no randomized controlled trial examining whether LT4 therapy improves outcomes for infertile women with SCH not undergoing assistive reproductive techniques.
(生殖補助医療(体外とか顕微)を受けていない、潜在性甲状腺機能低下症の不妊女性で、甲状腺ホルモン療法を行うと妊娠率が改善するかどうかを試したRCT(ランダム化比較試験)は無い。)

えええ!そうなの??
なんだよ。いいも悪いも判ってないらしいぞ。

A retrospective study examining LT4 therapy on 69 infertile women reported that 84% became pregnant with treatment although 29% had a miscarriage afterward [66].
(69人の不妊女性に甲状腺ホルモン療法を行った後方視的検討があり、84%が妊娠したが、その後29%が流産した。)

おお、なんだなんだ?
偉い流産率が高いじゃないか。
[66]はだ。
論文名が「may be useful」と、何やら自信なさげではないですか。
どれどれ。
  • アメリカ内分泌学会ともう一つの学会は、潜在性甲状腺機能低下症の不妊女性に甲状腺ホルモン剤による治療を推奨している。
  • 我々は69人の潜在性甲状腺機能低下症の不妊女性に甲状腺ホルモン剤による治療を試みた。
  • 結果、58人(84.1%)が妊娠したが、17人(29.3%)は流産した。
  • 11人は妊娠しなかった。
  • 妊娠した58人は、治療前TSHの平均は5.46だったものが、治療後に1.25になっていた。
  • 妊娠した58人は、それまで平均2.8年の不妊期間があったが、治療後妊娠するまでは平均0.9年であった。
  • 高妊娠率と治療期間が短かったのは、甲状腺ホルモン療法が有効だったことが強く示唆される。
だそうな。
ま、RCTではないので、これでは何とも言えませんわな。
まあ、いいや。続き。

There is insufficient evidence for or against routine LT4 therapy to aid conception in thyroid autoantibody-negative infertile women with SCH who are not undergoing artificial reproductive techniques [1].
(生殖補助医療を行っていない不妊女性のうち、抗甲状腺抗体を持たない潜在性甲状腺機能低下症の患者に対する甲状腺ホルモン療法が妊娠率を上昇させる、あるいはさせない、というエビデンスは不十分である。)

However, the ATA has issued a weak recommendation that administration of LT4 may be considered in this setting given its ability to prevent progression to overt hypothyroidism once pregnancy is achieved [1].
(しかしながら、ATA(アメリカ甲状腺学会)は、妊娠成立後に顕性甲状腺機能低下症になっちゃうのはまずいので、不妊治療の段階から飲ませておいてもいいんでない?という弱い勧告を出した。)


おお、ということで、少なくとも、一般不妊治療を行うにあたっては、潜在性甲状腺機能低下症(TSH↑、fT4正常)にチラージンを内服してもらっても、妊娠率が上昇する、というデーターは今のところ出てない、ってわけだ。
(飲んでも妊娠率は変わらない、というデーターもない、ということ)


【本日の収穫】
ということで、
潜在性甲状腺機能低下症、すなわち、甲状腺ホルモンは「正常」なのに、甲状腺ホルモンを補う必要があるのか????
という疑問に対して旅をしているわけですが、少なくとも、一般不妊治療の状況においては、飲んだほうがいいかどうか?は何もわかっていない、そもそもデーターがない、ということだ。
アメリカの推奨は
「ま、飲んでおいても損は無いんじゃね???」
位のレベルの様子。

なるほど、少し賢くなった。

ドクター『I』は皮の鎧を手に入れた。
「チラージンは飲まなきゃいけないんですか?」
の質問に対する防御力が3上がった。

旅は続く。

甲状腺の答えを求めて旅に出る(2)

はい、ではまず用語(というか状態、というか)確認から。

overt hypothyroidism (顕性甲状腺機能低下症)
甲状腺ホルモン(fT4)そのものが低下している状態のこと。
(この際、普通は)TSHは上昇している。

subclinical hypothyroidism (潜在性甲状腺機能低下症)
甲状腺ホルモン(fT4)そのものは正常
だけどTSHは上昇している状態のこと。

です。
で、fT4が低下していれば、「甲状腺機能低下」であり、甲状腺ホルモン剤(チラージンですね)の治療(補充)が必要なのは分かりやすいわけです。
これはいい。

ところが、ややこしいのが、この「潜在性」という奴です。
TSHが上昇しているとはいえ、なんてったって甲状腺ホルモンは正常
甲状腺ホルモンは「正常」なのに、甲状腺ホルモンを補う必要があるのか????というわけですよ。
「正常」なのに「足す」
この考えがわかりにくいわけです。

で、この答えを得たいわけですが、そんなわけで、ググって、おねいさんの解説読んでもわからないわけで、やっぱり、真面目に勉強しないといけないわけです。
楽をしようとすると、かえって遠回りになってしまう、というわけです。


で、ちゃんと論文読もう、というわけです。です。

今日はこのイントロダクション。

  • 潜在性甲状腺機能低下症とは、fT4は正常なものの、TSHが上昇している病態を言う。
  • 生殖年齢の女性の4-8%に認められる。
  • 診断は、採血検査によって行われる。
  • 明らかな甲状腺機能低下症(つまりTSH上昇のみではなく、fT4も低下している場合)は、流産率の上昇/早産/出生時の知能指数などにネガティブに働くことが知られているが、(fT4が正常な)潜在性甲状腺機能低下症が及ぼす影響は未知数である。
  • 潜在性甲状腺機能低下症は、不妊に関連する/妊娠・出生児に悪影響を及ぼす、とする報告もあるが、関連は認められない、とする報告もある。
  • 明らかな甲状腺機能低下症の治療は甲状腺ホルモン剤の内服だ。
  • しかしながら、(fT4が正常な)潜在性甲状腺機能低下症は本当に治療を必要とするのだろうか?それとも、臨床症状は起こさない、単なる「検査してしまったから分かってしまった状態」なのだろうか?
  • 潜在性甲状腺機能低下症に対して、甲状腺ホルモン剤と投与したほうが良い、とする報告も数点見られるが、大規模無作為試験の結果は両論がみられる。
  • 本論文では、潜在性甲状腺機能低下症に対し、甲状腺ホルモン剤を投与したほうがいいのか?その利点と欠点のエビデンスを見ていきたい。


とのこと。
おお。教えたもれ!


【本日の収穫】
ドクター『I』は、「答えてくれそうな論文」を手に入れた。
かしこさが1上がった!

旅は続く。

甲状腺の答えを求めて旅に出る(1)

不妊治療を開始すると、甲状腺のチェックも普通、同時に行われる。
多くは潜在性甲状腺機能低下症をスクリーニングする必要があるのでTSHを調べることになるわけです。
このTSHの値がこれまたややこしい。
「2.5より下げるべきだ」
「いやいや、4を上回らなければいいんでない?」

などなど。いろんな意見がある。
最近では、3.0という数字も出てきている模様で、まあ、よくわからない。

この2.5だの4だの3.0だの、こうした数字の根拠はどこからどう出てきているのか??を調べてみよう!というのが今回の検討の趣旨です。

えっと、まずは「ググる」(www)
で、目についたページがこちらSRLという大手検査会社のページらしい。

「国際ガイドラインでは、TSHが2.5μIU/mL以上にならないよう妊娠前から調整しておくことが推奨されています。」
「現在日本人では、TSHが3.0μIU/mL以上にならないようにという基準でもいいのではないかということで検討されています。」

とのこと。
その下のほうに「不妊女性における甲状腺検査と治療」というフローチャートがある。
サクッと「3.0μU/mL以上」とある。

OK、OK、お嬢さん、分かった。
で、その根拠となる出典(reference)を書いてくれよ。
「国際ガイドラインでは」の「国際ガイドライン」はどれよ?どこが出したガイドラインよ??
「3.0μIU/mL以上にならないようにという基準でもいいのではないか」、という根拠を教えてくれよ。
誰が言ってるのよ?
今時、wikipediaでも「要出典」って書かれとるわ!
5chでも「ソースは?」ってなもんでしょ。

・・・と、ひとしきり大きな独り言を言って、本日1日目終了。

【本日の収穫】
TSHが2.5とか3.0とか言われてはいるのはわかった。
でも、誰が何を根拠に2.5とか3.0とか言っているのか、が?
旅は続く。

ちょっとメモ。無視してください。

One of the reasons for the relatively fast reduction in this parameter can be related to the increased production of ROS. Oxidative stress is a condition associated with an increased rate of cellular damage induced by oxygen and oxygen-derived oxidants, known as reactive oxygen species (Sikka et al., 1995). Damaged spermatozoa (Iwasaki et al., 1992) or infiltrating leukocytes (Kessopoulu et al., 1994) are source of ROS, which is correlated with decreased sperm motility. In fact, higher levels of ROS have been found in semen of infertile men, when compared with the semen from fertile patients (Levitas et al., 2005; Iwasaki et al., 1992, Aitken et al., 1991).

In conclusion, increase in the sexual abstinence period influences sperm quality. This study reinforces the importance of the duration of ejaculatory abstinence on semen parameter variation. It highlights the deleterious effect of increased abstinence on DNA damage, which is most likely associated with ROS (mitochondrial damage/number of leukocytes). The increase in chromatin packaging can represent a protective feature for DNA. However, pitfalls of the chromomycin A3 method cannot be excluded.

卵管造影が胎児・新生児に及ぼす影響は?(2)

1・羊水過多、切迫早産を伴った胎児甲状腺腫に対する出生前診断と周産期治療
(山崎ら、日本周産期・新生児医学会雑誌54巻2号p713)


卵管造影→妊娠成立→切迫早産→エコーにて甲状腺腫+羊水過多→臍帯穿刺(胎児採血)+羊水抜水→TSH 75.24 f-T4 0.9→甲状腺ホルモン剤の羊水内注入3回施行→甲状腺腫↓羊水↓切迫早産↓→退院→正期産、成長問題なし

2・油性ヨード造影剤による子宮卵管造影検査(HSG)後の妊娠で羊水過多を伴う胎児甲状腺腫を認めた3妊娠例 (岡崎ら、日本周産期・新生児医学会雑誌54巻2号p533)

卵管造影→妊娠成立→エコーにて甲状腺腫+羊水過多の3例→1例は甲状腺ホルモン剤の羊水内注入、2例は経過観察→3例とも正期産

3・胎内治療が有効であった子宮卵管造影に起因する胎児甲状腺腫の1例
(西村ら、日本内分泌学会雑誌93巻3号p957)


卵管造影→AIH妊娠成立→エコーにて甲状腺腫+羊水過多+母も潜在性甲状腺機能低下症→32W臍帯穿刺(胎児採血)→TSH 100 f-T4 0.7→甲状腺ホルモン剤の羊水内注入施行→甲状腺腫↓→37週分娩(帝王切開(適応は書かれていない))→新生児TSH 68.56にて甲状腺ホルモン剤の内服開始

4・子宮卵管造影検査によるヨウ素過剰曝露が原因と考えられた胎児甲状腺腫に対し、胎児治療を行った一例
(荒田ら、日本周産期・新生児医学会雑誌53巻2号p557)


卵管造影→AIH妊娠成立→切迫早産→エコーにて甲状腺腫+羊水過多→甲状腺ホルモン剤の羊水内注入5回施行→甲状腺腫↓→37週分娩(帝王切開(適応は書かれていない))

5・子宮卵管造影後の胎児甲状腺腫に対し胎内治療を行った1例
(安尾ら、日本周産期・新生児医学会雑誌51巻2号p825)


卵管造影→流産→その後自然妊娠→甲状腺腫→34W臍帯穿刺(胎児採血)→TSH 63.465 f-T4 1.13→35W0D甲状腺ホルモン剤の羊水内注入→36W2D、子宮内感染による発熱、子宮収縮にて帝王切開

6・子宮卵管造影が原因と考えられた胎児甲状腺腫の1例
(横田ら、日本周産期・新生児医学会雑誌47巻2号p561)


卵管造影→妊娠成立→エコーにて甲状腺腫→32週に臍帯穿刺(胎児採血)→TSH 342.2 fT4 0.51→同日帝王切開、1876g、Ap 8/8→甲状腺ホルモン剤投与により改善

7・妊娠前の子宮卵管造影が原因と考えられた胎児巨大甲状腺腫の一例
(栗本ら、関東連合産科婦人科学会誌, 48(3) 304-304, 2011)


卵管造影→AIH妊娠成立→エコーにて甲状腺腫→37W1D、反屈位のため帝王切開→日齢3 TSH190.556 uIU/ml,freeT4 2.78 pg/ml,freeT3 0.66ng/dl
(考察:使用量も常用量であった本例において,なぜ甲状腺腫が生じたのかは不明である)


ということで、報告例はほぼワンパターン。
卵管造影→妊娠成立→エコーにて甲状腺腫+羊水過多
ですかね。

で、そこから侵襲のある検査・治療が行われている。
5は羊水・臍帯穿刺による感染疑いの帝王切開での人工早産
6は甲状腺治療目的の人工早産
7の反屈位は甲状腺腫によるものですかね?

学会発表されているのはおそらく氷山の一角でしょうね。
うん。わかった。

Appendix

プロフィール

ドクターI

Author:ドクターI
武蔵境生息、(自称)不妊屋「ドクターI」、自己流生殖医療を語ります。

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